青春の思い出を語り合うだけのはずだった。同窓会で再会した洋輔ら四人は、旧交を温め合ううちに、かつての体罰教師への仕返しを思いつく。計画通り暴行し置き去りにするも、教師はなぜか別の場所で溺死体で発見された。犯人は俺達の中にいる!?互いへの不信感が募る中、仲間の一人が殺されて…。衝撃のラストに二度騙される長編ミステリー。(「BOOK」データベースより)
昔の教師へのいたずらをきっかけに殺人事件に巻き込まれる四人の男たちの姿を描く、長編のミステリー小説です。
中学時代の体育教師の樫村から受けた体罰を忘れることのできない四人の男たちは、樫村にいたずらを仕掛け、そのまま放置して帰ってしまいます。
しかし、翌日もたらされたのは、いたずらの現場からは離れた池で梶村の死体が見つかったという知らせでした。
自分たち以外に樫村の所在を知る者はないはずであり、つまりは自分たちの中に犯人がいることになり、疑心暗鬼になる四人の男たちでした。
そして自分らの仲間の中から死者を出すに至るのです。
本書については「『火の粉』『犯人に告ぐ』を凌ぐ、雫井脩介の新たな名作誕生」という惹句があったのですが、どうしてもその惹句には賛成することはできませんでした。
というのも、まずは本書の基本設定自体に素直に物語の世界に入り込めるだけの自然な成り行きを感じることができず、感情移入できなかったのです。
そのためなのか、さらには本書のミスリードを誘ういくつかの仕掛けも納得できるものではなかったのです。
私自身はそのミスリードにまんまとはまった口ではあるのですが、それでもやはり違和感は残り、この手の仕掛けにはまった時の痛快感、してやられた感は全くといっていいほどに感じませんでした。
この作家の『犯人に告ぐ』は実に面白いミステリーだったのですが、本作は同じ作者の作品とは思えないほどでした。
『犯人に告ぐ』の作者という読み手、つまり私の期待が大きすぎてハードルが上がったということもあるかとは思いますが、そうとばかりも言えないと思います。
というのも、本書の作者雫井脩介の作品は、近年映画化もされ大ヒットととなった『検察側の罪人』も読んだのですが、その時はかなり引き込まれて読んでおり、単に私がハードルを上げたともいえないと思えるからです。
やはり、本書の基本的な設定に感情移入できなかったことがすべてだと思われます。
ちなみに、本書は2019年6月からフジテレビ系列で、溝端淳平を主演とし、瀧本美織を色員としてテレビドラマ化されました。