『宝島』とは
本書『宝島』は、2018年6月に講談社から刊行され、2021年7月に講談社文庫から上下巻合わせて736頁の文庫として出版された、長編の冒険小説小説です。
1950年代から70年代までの沖縄史を描いた、ミステリータッチの長編冒険小説で、第5回沖縄書店大賞、第9回山田風太郎賞、160回直木賞の三賞を同時に受賞していますが、微妙に私の好みとは異なる小説でした。
『宝島』の簡単なあらすじ
米軍基地を襲撃した夜、故郷いちばんの英雄が消えた。英雄の帰還を待ち望みながら沖縄を取り戻すため立ち上がる、グスク、ヤマコ、レイ。長じて警官となり、教師となり、テロリストとなった幼馴染たちは、米軍統治下の時代のうねりに抗い、したたかに生き抜こうとする。直木賞始め文学賞三冠達成の傑作!( 上巻 :「BOOK」データベースより)
英雄が消えた夜。彼が手にしていたという「予定にない戦果」とは何か。故郷と基地。沖縄とアメリカ。現在と過去。こちら側とあちら側。境界線を越え、本土復帰に向けた大きな流れに翻弄されつつもひたすらに走り続けた幼馴染たちがようやくたどり着いた、英雄が命を懸けた「秘密」とは。直木賞受賞、必読の書!( 下巻 :「BOOK」データベースより)
戦後沖縄のコザの町で最高の戦果アギヤーとして英雄と呼ばれたオンちゃんが、嘉手納空軍基地への侵入の後行方不明になってしまう。
その後、オンちゃんの恋人のヤマコとオンちゃんの弟のレイ、それにオンちゃんの親友であったグスクの三人は、教師やテロリスト、そして刑事にとなり、それぞれの人生を歩んでいたが、それでもオンちゃんの行方を探し求めるのだった。
『宝島』について
本書『宝島』は、1950年代から70年代までの沖縄史を描いたミステリータッチの長編冒険小説で、第5回沖縄書店大賞、第9回山田風太郎賞、160回直木賞の三賞を同時に受賞した作品です。
沖縄という土地はあらためて言うまでもなく米軍基地が存在し、それ故に様々な問題を抱えています。2019年1月の現在でも普天間基地移設問題などが大きな問題としてなお存在しているのです。
私が大学浪人のために上京したのが1970年で、いまだ大学紛争の熱気冷めやらぬ時代でした。その後、何とか大学にもぐりこんで2年目の1972年に沖縄の返還がなされました。
ですから、本書で描かれている事件のほとんどは記憶に残っています。かなりインパクトの強い事件ばかりでした。
本書『宝島』はそうした事件の多発していた時代を駆け抜けた三人の若者の二十年間のそれぞれの人生を、強烈な輝きをもって描き出してあるエンターテインメント小説です。
本書を読むと、私が東京で見聞きし、感じていた沖縄の状況は、沖縄に暮らす人たちにとってみればその一部でしかなかったことに気づかされます。
沖縄では、私らが感じていた、沖縄の人の生活の隣に米軍の存在があったのではなく、沖縄の政治も経済も日々の生活自体がまず米軍ありきであって、米軍存在の次に沖縄の人々の生活があったのだと思い知らされます。
本書はそんな沖縄の歴史を、東京生まれの作家が、ウチナーグチと言われる沖縄の方言で書き著した小説です。そこにこそ本書の意義があるという指摘も散見されるほどです。
この文章を書いている途中に第160回直木三十五賞の発表があり、本書『宝島』が受賞しました。
直木賞選考委員の林真理子氏が、沖縄で起きた事件をポップに表現している、として評価されていたように、時代性が重視されたのでしょうか。
ポップに描かれているかどうかは別にして、個人的には、本書『宝島』が沖縄の歴史を明確にしたという功績は大きなものがあるとしても、本書の持つエンターテインメント小説としての面白さを忘れてはならない、と思っています。
本書は、どことなく東山彰良の『逃亡作法』を思い出させる作品でもありました。
それは、共に刑務所を舞台としている場面があることも理由の一つだったのでしょうし、文章がスピーディーであることもそうだったのかもしれません。
ただ、本書『宝島』は東山彰良の『逃亡作法』ほどのバイオレンス性はありませんし、また猥雑な感じもありませんでした。
個人的には同じ第160回直木三十五賞の候補作である今村翔吾の『童の神』のほうがより視覚的であり、私の好みではありました。
平安時代を背景に子供のころに聞いたおとぎばなしの登場人物が活躍するのですから感情移入がしやすかったのでしょう。
ともあれ、本書が直木賞を受賞するに値する作品であることは間違いなく、一読すべき作品だとは思います。
追記:
本書『宝島』が実写映画化され、2025年9月19日に公開されます。
妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太といった豪華な役者さんたちが出演するそうで、出来上がりはかなり楽しみなものになりそうです。
詳しくは下記を参照してください。

