大倉 崇裕

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コロナ騒ぎで、私が書斎にしている市立図書館も二月二十九日から閉まったままで新しい本を借りれずにいます。併せて私用で時間を取られ、書き込みもできずにいたこの頃でした。

さらに言えば、今年の一月に緑内障の手術をしたのですが、今回はまた反対の眼がおかしくなりまた入院となりました。

来週には退院できると思いますが、入院先の病院で図書室が開いていればまた新たな本を読んで来ようと思っています。ただ、現在見えている眼の手術なのでどのくらい読めるものかが心配です。

閑話休題

秋葉原警察署で、念願の刑事課に着任した九重祐子。捜査現場に立てると張り切るも、署を訪れる市民の応対を命じられ、延々とオタクの相手をするはめに。だが、相談者の1人が殺されたのをきっかけに、独自の捜査活動を始める。そんな中、街で噂の“ギークスター”と出会う。悪事を働く者に鉄槌を下す彼は何者で、その目的は何なのか?彼の背中を追ううち、彼女は街を取り巻く陰謀に気づくが…。痛快無比な警察アクション小説!(「BOOK」データベースより)

 

本書は、付されている「秋葉原署捜査一係 九重祐子」というサブタイトルにもかかわらず、警察小説からは程遠い、秋葉原とそこに集うオタクらを描いた長編のアクション小説というしかありません。

図書館で目の前にあったためにそのタイトルに惹かれて借りたのですが、本作以外にこの作家の作品は借りることは無いと思われる出来でした。

 

主人公は秋葉原署捜査一係の九重祐子という女性です。

しかしなにも警察官である必然性はなく、秋葉原に関係のある人間であれば、電気店の店員であっても、メイド喫茶のアルバイトの娘であっても成立する物語です。

 

主人公の九重祐子は捜査一係に配属されたものの、古株の三ケ日刑事から日々細かな事案を訴えるために警察署を訪れるオタクたちの相手をするように命じられます。

しかし、自分がいい加減な対応をしたオタクが殺されるという事件が起きたため、自分のもとに来るオタクたちから秋葉原の裏情報を仕込み、オタク殺しの犯人を捜すために活動を開始するのです。

 

その調査の過程で出会うのが、正義の味方であるギークスターこと稲蔭文鋭であり、敵役となるファイヤー・レイザーエンプティ・ハンドたちです。

こうして犯人探しはすぐに終わり、話は放火犯であるファイヤー・レイザーらとの対決の話へと移行し、よく分からない話が展開されます。

こうした設定そのものを見てもリアルな警察小説とは一線を画した物語であることはすぐにわかり、読書を継続するかを悩む羽目になりました。

 

そもそも本書の惹句が、「この街を救うのは女性刑事か、それともダークヒーローか!?」というものであるところから、誉田哲也の『ジウサーガ』のような作品を勝手にイメージしたのが私の大いなる間違いでした。

ジウサーガ』は複数の女性捜査員を主人公としながらも、脇を東弘樹主任警部補などの猛者がしっかりと固め、アクション小説と言っても間違いではないほどの挌闘場面などをちりばめながらも、設定された事件への地道な捜査も丁寧に描いてある読みごたえのある作品です。

 

 

それに対し、本書『GEEKSTER 秋葉原署捜査一係 九重祐子』は、主人公は女性刑事ではあっても配属先の刑事として登場するのは三ケ日刑事だけであり、それも主人公の九重祐子刑事を役立たずと決めつけオタクたちの相手をするように命じる役目を担っているだけです。

そこに警察官としての仕事を果たす場面は全くありません。九重祐子が個人的に知り合ったギークスターこと稲蔭文鋭の足助を借りて個人的にオタク殺害犯人に迫る、それだけです。

犯人に迫っても警察官としての仕事の場面はなく、単に倒した、というだけで終わります。つまりは警察官としての捜査ではなく、単に犯人探しに奮闘した人間の職業がたまたま警官であった、というだけです。

 

さらに言えば、アクション小説とても私の好みからは外れた作品と言わざるを得ません。

同じように荒唐無稽と思いつつも読み進めた月村了衛の『槐(エンジュ)』のような作品とは異なり、登場人物の背景も薄く、物語世界に引き込まれたということは出来ませんでした。

多分、本作品以外にこの作家の作品を読むことは無いと思います。それほどに残念な作品でした。

 

ちなみに、本書のタイトルの「GEEKSTER」とは、

GEEKSTERとは、GEEKとHIPSTERから生まれた言葉で、「眼鏡、髪型、服装などにより、わざとオタクっぽく装ったイケメン」という意味の言葉である。(カドブン : 参照)

ということだそうです。

[投稿日]2020年04月08日  [最終更新日]2020年4月8日

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大倉崇裕は、本物である。  本物のマニア、もしくはオタクだ。  二〇一五年に発表されたインタビュー(「嗜好と文化」毎日新聞)の見出しが「ゴジラと生きて20年」であるところからして、それっぽい。

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