花村 萬月

イラスト1
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文庫

光文社

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花村満月という作家本人の言葉として、この頃の新人賞応募作品には個性がない、という趣旨のことが書いてありました。その眼で見るとこの作家の個性は際立っています。

薬やその調合技術、秘具性具に精通するよろづ光屋の情ノ字。名に反して、情など一欠片もない彼は、他人を信じない。唯一心を許すのは白犬の鞆絵だけ。しかし、無垢な夜鷹・おしゅんにだけは惹かれた。市井の者から大奥まで身分を問わず、萬の悩みに耳を傾ける中で見出す人間の愚かさ、美しさ。五代将軍・綱吉の世を舞台に、性の深淵とまことの尊さを描いた江戸人情譚。(「BOOK」データベースより)

花村満月という作家の作品は本書を始めて読んだのですが、当初はまるで官能小説かと思ったものです。本を売らんがためのエロを前面に出した作家だと思ったのです。しかし、そう思って間なしに、当初の感想は大きな間違いだと気付きました。単なるエロ作品には無い文章の艶や色気は、文章の素人である私にもすぐに分かります。

作品の主人公が性に関する秘薬や秘具などを扱う仕事をしているため、というか作者がそのような設定にしたのですが、主人公の日常が「性」にまつわるものであることは当然のことです。事実、少し頭が足らない夜鷹おしゅんや愛犬の鞆絵との心の交流を中心に、人情話を絡めながら連作短編風に物語は進んでいきます。子堕ろしで名の高い女医師や、張形作りの名人など癖のある人物が絡んできたり、話の展開には飽きが来ないのです。

これだけ強烈な個性なので、この作品も好まないという人が少なからずいるのではないかと思われます。しかし、一旦はまれば今度は逆に虜になるのではないでしょうか。

[投稿日]2015年04月16日  [最終更新日]2015年4月16日
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