【星雲賞受賞作】
若き天才科学者クリフォードは、統一場理論の研究を進めるうち、宇宙の無限のエネルギーを直接とり出す機械を発明した。この装置をうまく利用すれば究極兵器がつくれると判断した軍部は、ともすると反体制的なクリフォードを辞職に追いやる一方、独自の研究開発を続けたのだが……。ホーガン面目躍如の大作。(Amazon内容紹介より)
いかにもホーガンらしい現実の科学理論を駆使した長編のハードSF小説です。
天才科学者クリフォードは統一場理論の研究にからみ新たな理論を発見します。それによれば究極の兵器の製造さえ可能となるものでした。
東西冷戦のさ中にあって国家から利用されることを恐れたクリフォードは、民間に下り、国のしがらみのないところでの研究活動を続けようとします。しかし、国はそこにも手を伸ばしてくるのでした。
「統一場理論」というのは万物の根源にある素粒子に関係する理論です。ハードSFは、こうした実際の学問上の枠組みを根底に置いてその上に架空の物語を構築するのです。
しかし、科学的知識を持ち合わせない一般読者は、そうしたことはどうでもよく、いかにも科学的実在らしき描写をそんなものなのだろうと当然の前提にして読み進め、新たな発明、発見、展開をただ十分に楽しめばいいのです。そこにこそSFの醍醐味があると私は思っています。
本書は現実の「統一場理論の研究」を前提にしつつ、架空の理論を組み立てて物語の骨子としています。そして、科学的な成果を武器として利用しようとする国家という存在を前面に押し出し、科学の人類に対する貢献の仕方、人類の幸福に役立つ科学の在り方を提示しています。
勿論、物語として面白いのは当然であり、その点でホーガンの爆発的な人気があるのです。