J・P・ホーガン

イラスト1
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【星雲賞受賞作】
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。(Amazon内容紹介より)

 

謎解きメインのまるで推理小説のような作品ですが、それでも最もSFらしい長編のSF小説です。

 

月で人間の死体が発見されます。しかし、その死体は五万年も前の人間の死体でした。同じ頃、木星の衛星のガニメデでは異星の宇宙船が発見され、チャーリーと名付けられた月の死体との関連が議論されるのです。

 

五万年前といえば人類は石器時代の只中であり、文化の飛躍的な進歩がみられるという時代です。しかし、チャーリーは遺伝子レベルまで人類なのです。このチャーリーと現生人類との関係や、またガニメデで発見された宇宙船との関わりなどが論議されます。

これらの疑問を解き明かしていくのが、物質を透過撮影する技術を開発したヴィクター・ハントを中心とする科学者たちです。

しかし、一つの推論に対しては必ず明確な反論が存在し、また次々と明かされる事実がその推論を否定してしまいます。この論争の過程は現実の現代科学を基礎としたものであり、読者にも理解できるように描写してあるためその論争の中に引き込まれ、真相の解明がひたすら待たれるのです。

物語の内容が現実の科学に即しているところから「ハードSF」小説と呼ばれています

 

この過程が、昔から言われるセンス・オブ・ワンダーを感じさせてくれます。

派手なエンターテインメント性こそありませんが、この少しずつ明かされ、示されていく事実こそがSFの醍醐味を味あわせてくれるのです。

 

先にも述べたように、本書はミステリーとしても第一級の面白さを持っています。こうしたSF作品としては、A・アシモフの『鋼鉄都市』があります。ロボット三原則を基礎に人間型のロボットと組んで捜査を行うニューヨーク市警の刑事イライジャ・ベイリの姿が描かれているこの作品は推理小説としても一級の面白さを持ったSF小説です。

 

 

ちなみに、本作品はSFコミックの第一人者である星野之宣の画で銭四巻として漫画化されています。この漫画は「『ガニメデの優しい巨人』、『巨人たちの星』までを含み、独自の解釈や原作にないエピソードを加えている」そうです。

 

 

この作品は以下の「巨人たちの星シリーズ」の第一巻目にあたります。出来れば、このシリーズを通して読んでもらうと、その壮大な物語が一段と迫ってくると思います。

巨人たちの星シリーズ

  1. 星を継ぐもの  1981年第12回星雲賞海外長編賞受賞作
  2. ガニメデの優しい巨人
  3. 巨人たちの星
  4. 内なる宇宙
[投稿日]2015年04月29日  [最終更新日]2019年2月5日
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