荻原 浩

イラスト1
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文庫

新潮社

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主人公の名前は南山ワタル。母子家庭で母親は父親のことを何も教えてくれない。だけどワタルは本当の父親を知っていた。ワタルの父親はクロマニヨン人だったのだ。

本書は主人公であるワタルの青春期です。母子家庭で育っている少年の、一人遊びの中での少女との出会い、周りから無視される小学生時代、性への目覚めがあり、中学校に上がってからやり投げと出会い、そして旅立ちと、正確には四歳から十八歳までの成長の記録です。

ただ、全編がクロマニヨン人というキーワードによって彩られています。ありふれた少年の記録が、このキーワードによって独特の、そして上質の青春小説として成立しています。

北上次郎氏が文庫版のあとがきで、荻原浩という作家について、「普通に書けば陳腐すれすれの話や見慣れたはずの風景を一変させることが出来る」作家だと書いておられます。かならず「ひねり」をきかせる作家だそうで、本書で言えばクロマニヨン人であり、やり投げなのだそうです。

幼いころから自分の父親捜しをしていた小年が、自分の父をクロマニヨン人だと思いこむ理由につては本編を読んで頂くとして、裏山を駆け巡る少年の衝動の根底には大自然の中で生き抜いて行くクロマニヨン人の姿があり、長じて陸上競技、それもやり投げを選択するのも幼い頃に裏山でクロマニヨン人を想定して投げた槍の延長線上に位置づけられるのです。

思春期の少年の性に対する畏怖などの細かな心理描写も含め、母親への思いなどのワタルの心の記録は、普通とは少々異なった環境にいる少年の日常を日常として描いた上質な青春小説であるとともに、家族愛を描いた物語とも言えるのではないでしょうか。

[投稿日]2015年04月08日  [最終更新日]2015年4月8日
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