首都圏に大異変発生! 都心を中心に、半径三十キロ、高さ千メートルにもなる正体不明の巨大な”雲”が突如発生、通信・電波・交通などあらゆる連絡手段が途絶されてしまったというのだ。中に閉じこめられた人々は無事なのか? そして政府はどうなってしまったのか? 国家中枢を完全に失ってしまった日本の混迷を描く、日本SF大賞受賞のパニック巨篇。(全二冊)(「内容紹介」より)
「日本沈没」同様、危機に直面した日本人の行動が描かれている、日本SF大賞を受賞した長編のSF小説です。
東京を中心として30km半径が「雲」に閉じ込められてしまい、外部との連絡が絶たれてしまいます。そのとき外部に残された者はどう動くのか。
そんなことは後で解説などに書いてあったことで、ただパニック小説としてとても面白かった記憶があります。
本書同様に、一定区域が遮断された状況を描いた作品として、ホラーの王様のスティーブン・キングの小説で「アンダー・ザ・ドーム」(文春文庫 全四冊)という、一定範囲内の空間が未知の物体に閉じ込められるという小説があります。
ただ、かつてのキングの小説とは少し雰囲気が変わり、超自然的な存在を前提になんとも言えない不気味さが醸し出されていた作品とは印象が違っていました。それでもなおキングの物語であり、一気に読み通したものです。
ドーム内外の人間模様がキングらしいタッチで描かれていましたが、同様の設定が(「物体O」という作品と合わせて)数十年前に小松左京によって描かれていたのです。まあ、設定として外界との交通の遮断という一点だけが同じというだけで、さすがに中身はまったく違いますが。