池永 陽

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珈琲屋の人々シリーズ』とは

 

あることから人を殺したことのある宗田行介の営む、東京のとある商店街にある喫茶店「珈琲屋」を舞台にした人情物語集です。

 

珈琲屋の人々シリーズ』の作品

 

珈琲屋の人々シリーズ(2021年12月12日現在)

  1. 珈琲屋の人々
  2. ちっぽけな恋
  1. 宝物を探しに
  2. どん底の女神

 

珈琲屋の人々シリーズ』について

 

珈琲屋の人々シリーズ』は、シリーズの主人公としては東京のとある商店街にある喫茶店の「珈琲屋」を営む宗田行介ということになるのでしょう。

しかし、各巻で語られる七編ほどの短編それぞれの主人公は、この「珈琲屋」に訪れる様々な客ということになります。

各話は、その客の視点でそれぞれの人生で巻き起こる物語を「珈琲屋」に来て行介にある人は相談し、ある人は単に話し相手になってもらいます。

そのことにより、各話の中でそれなりの結論が導かれ、各人の人生がまた展開していきます。

 

この「珈琲屋」の主人である宗田行介の他の常連の登場人物として、同じ商店街にある「蕎麦処・辻井」の娘の辻井冬子、それに洋品店の「アルル」の息子である島木がいます。

冬子は一度は嫁いだものの二年後に離婚をし、この町に戻ってきていました。

行介、冬子、島木の三人は小学生の頃からの幼馴染であり、昔から行介と冬子が互いに好きでいることを知っていた島木は二人の仲を何とか取り持とうとしています。

この行介と冬子の中の進展を縦軸に、この三人を中心として「珈琲屋」を舞台に様々な人生模様が繰り広げられるのです。

 

本『珈琲屋の人々シリーズ』を読みながら、主人公の営む店に訪れる客それぞれの人生を描く手法の作品として思い出していたのは、コミック作品で、映画化もされた『深夜食堂』でした。

ユニークな画ですが、その画が軽いユーモアともの悲しさを醸し出していて、読み終えると心がほっこりとする漫画でした。

 

 

また、2021年本屋大賞の候補作となった青山美智子の『お探し物は図書室まで』もこのパターンの一種と言えるのではないでしょうか。

本『珈琲屋の人々シリーズ』の行介にあたる人物として、司書の小町さゆりがいます。彼女が渡す「羊毛フェルト」がかるい伏線ともなっているのです。

そして、本を借りていった人達が自ら悩みを解決し、自らが進む道を探し出し、未来に向かって歩きはじめるのです。

 

 

本『珈琲屋の人々シリーズ』でもまた行介の言葉や行動をきっかけに客のそれぞれが自らの人生をかえりみ、そして歩み始めます。

ですが、本シリーズでは先に紹介した『深夜食堂』や『お探し物は図書室まで』のような心が温かくなる感じがありません。

本書の読後感も悪くはなく、嫌な印象ももちろんないのですが、何故かそれ以上のものを感じなかったのです。

ただ、私が本シリーズを借りる時に間違え、最初に第三巻から読み始めたためにシリーズものの積み重ねの情報を知らずに読み進めたということがあります。

そうした点を指し引いてもう一度第一巻から読んでみるつもりです。

 

ちなみに、私は見ていませんが本『珈琲屋の人々シリーズ』は高橋克典主演でNHKでドラマ化されています。

少なくともAmazonを見る限りはDVD化はされていないようです。

ただ、「NHKオンデマンド」では見ることができるようです。

[投稿日]2021年12月12日  [最終更新日]2021年12月14日

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