香君

香君』とは

 

本書『香君』は、2022年3月に上・下二巻として刊行された、上下巻合わせて900頁弱の長編のファンタジー小説です。

『鹿の王』で本屋大賞を受賞した著者上橋菜穂子による新たな冒険への旅立ちの書であり、非常に興味深く読んだ作品です。

 

香君』の簡単なあらすじ

 

遥か昔、神郷からもたらされたという奇跡の稲、オアレ稲。ウマール人はこの稲をもちいて帝国を作り上げた。この奇跡の稲をもたらし、香りで万象を知るという活神“香君”の庇護のもと、帝国は発展を続けてきたが、あるとき、オアレ稲に虫害が発生してしまう。時を同じくして、ひとりの少女が帝都にやってきた。人並外れた嗅覚をもつ少女アイシャは、やがて、オアレ稲に秘められた謎と向き合っていくことになる。( 上巻 : 「BOOK」データベースより)

「飢えの雲、天を覆い、地は枯れ果て、人の口に入るものなし」-かつて皇祖が口にしたというその言葉が現実のものとなり、次々と災いの連鎖が起きていくなかで、アイシャは、仲間たちとともに、必死に飢餓を回避しようとするのだが…。オアレ稲の呼び声、それに応えて飛来するもの。異郷から風が吹くとき、アイシャたちの運命は大きく動きはじめる。( 下巻 : 「BOOK」データベースより)

ウマール帝国から帝国支配下の西カンタル藩王国に視察官として派遣されていたマシュウは、西カンタル藩王国のかつての国王だったケルアーンの孫娘であるアイシャとその弟のミルチャを捉えた。

現西カンタル藩王国ヂュークチの前に連れ出されたアイシャは殺される運命を受け入れていたものの、彼女が有する優れた嗅覚により目の前にいる国王が毒殺されようとしている事実を指摘するのだった。

またアイシャはその嗅覚によって自分たちに出された飲み物に毒が入っていることに気付いたものの、そのまま飲み物を飲み干し埋葬されてしまう。

しかし、アイシャ兄弟は毒薬入りの飲み物を飲んだにもかかわらず、マシュウ=カシュガによって助けられたのだった。

 

香君』の感想

 

著者上橋菜穂子が、2015年度の本屋大賞と日本医療小説大賞をダブル受賞した『鹿の王』の次に出版されたファンタジー小説です。

 

 

本書『香君』は、「香り」に焦点を当て、特別な嗅覚をもつ者を主人公としたこれまでにない視点の物語です。

そうした独特な視点のこの物語世界には「香君」という活神の制度があり、帝国国王とは別に国民の信頼を集めています。

この「香君」という制度では、活神の身体が老いると<再来の年>にお告げの場所で十三歳になった新しい香君を見つけるといい、それはまるでチベットにおけるダライ・ラマの制度のようでもあります( 14世ダライ・ラマ法王発見の経緯と輪廻転生制度 : 参照 )。

 

本書『香君』のようないわゆるファンタジーと呼ばれる作品は、殆どの場合はその世界観がそれなりに構築されていて物語を違和感なく読むことができます。

しかし、本書の著者上橋菜穂子が描く作品のように物語世界丁寧に描かれている作品はそうはないと思います。

例えば三部作が映画化もされたファンタジーの名作中の名作である『指輪物語』は分かり易い例の一つでしょう。

 

 

他に日本の作品でいえば『図書館の魔女シリーズ』などの 高田大介の作品が挙げられると思います。

 

 

こうした作品は物語の世界がその世界としてきちんと作り上げられているからこそ、その世界のリアルさを表現していることができていると思うのです。

 

そうしたなかでも上橋菜穂子の描く作品は物語の世界が丁寧に構築してあり、この世界の政治体制や権力のありようが苦労することなく頭に入ってきます。

そのことは上記の『鹿の王』にしても、また本書『香君』においても当てはまり、ウマール帝国を中心とする政治体制とそこに存在する「藩王国」との関係、それに「香君」という特殊な制度の在りようが物語の前提として理解できるのです。

そうした前提は、この丁寧に構築された世界で「香君」が存在する理由も、主人公が冒頭から殺されそうになりつつも、その後の目まぐるしく身分が変転する理由を理解することが容易になります。

 

本書『香君』の魅力はその物語世界の正確性と同時に、上記の「香君」という存在の設定でしょう。

特別な「嗅覚」という能力を持つ者を主人公に据えるという他にはない発想で綴られたこの物語は、作者により丁寧に構築された物語世界のうまさと相まって、読む者に多くの期待を抱かせる作品です。

読んでいる途中では特殊能力を持つ主人公の設定が先にあって、その能力に合わせた世界を考えたのかと思っていたのですが違いました。

作者によるあとがきを読むと、優れた嗅覚を持つ者を主人公としたのではなく、植物や虫が発する香りについての知見が先にあり、その微細な香りをも嗅ぐことのできる能力を有する者という設定ができたのだそうです。

 

そうした設定の中に設けられた「オアレ稲」という物語の道具がまたよく考えられていて、本書の魅力の構築に役立っています。

適当な配合、そして量で作られた秘伝の肥料を与えることを前提に、暑さにも寒さにも、また害虫にも強いという性質をもつこの植物は、その性質のために帝国の存立基盤ともなっている植物なのです。

この「香君」と「オアレ稲」の存在とがこの物語の核であり、サスペンスフルな物語展開の骨子となっています。

つまり、オアレ稲は民を豊かにはしたものの、他の作物が育たなくなるという欠点を有しており、さらには特別な肥料が必要特性も有し、帝国の支配の道具としてうってつけの存在だったのです。

 

こうした作物は戦略的な意義を有していて、私達の現実世界を意識した寓意的な物語ではないかと考えてしまいます。

そんな生々しい現実世界の情勢を背景に垣間見ることのできる本書の物語は、それでもアイシャという少女と香君の存在により、未来を見据え、力強く生きていくことを示してくれています。

切れ者の大人たちの謀りごとを前に、ただ卓越した嗅覚を持つ少女がその能力をフルに生かして皆の幸せを祈り、そして行動していく話ですがその未来への展望が見事です。

 

著者上橋菜穂子の作品では、心に残る言葉が記されていますが、本書においてもそれは変わりません。

自然の摂理は確かに無情だけれど、でも、けっこう公平なものだとか、人には知識や経験から推論を導き、考え、希望を見出す力がある、などというアリキ師の言葉などそうでしょう。

生き物は自分ではどのような存在に生まれるかは選べないが、どんな小さな者も己の役割を担って生きている、などという「香君」オリエの言葉などもそうです。

こうした言葉が本書のあちこちにちりばめられています、だからといって、本書が難しく高尚な言葉を語っているということではありません。

まさにファンタジーとして読みやすい物語のなかに必然的な言葉として散りばめられているのであって、普通に読んでいるままに頭に入ってきます。

 

ただ、本書『香君』は、著者上橋菜穂子の『鹿の王』のような元気のいいアクションの場面はありません。相手は言葉を持たず動くこともない植物であり、人間同士の戦いの場面もありません。

虫との戦いはありますが、彼らも単に本能に従って食べ物を探すだけです。

植物の発する「香り」が主人公のアイシャには、ときには嬉しく、ときには騒がしく「聞こえる」のです。

その植物の香りをもとに推測し、考え、行動するアイシャの姿はアクション場面こそないものの心動かされます。

この点の発想は、多分ですが、日本文化の一つとしてある、香りと出会い向き合う「香道」の「聞く」という言葉から発想されているのでしょう( 香りと出会い、向き合う。聞香・お香の楽しみ方 : 参照 )。

 

でも、そうしたことはどうでもよく、単純に本書『香君』という物語に身を委ね、物語を楽しめばいい、と心から思います。

それほどに面白く、よく考えられた物語です。

鹿の王 水底の橋

本書『鹿の王 水底の橋』は、文庫本で464頁の長編のファンタジー小説です。

2015年本屋大賞を受賞した『鹿の王』の続編となる物語ですが、戦士のヴァンと孤児のユナは登場せず、医術師ホッサルを中心とする物語です。

 

鹿の王 水底の橋』の簡単なあらすじ

 

伝説の病・黒狼熱大流行の危機が去った東乎瑠帝国では、次の皇帝の座を巡る争いが勃発。そんな中、オタワルの天才医術師ホッサルは、祭司医の真那に誘われて恋人のミラルと清心教医術発祥の地・安房那領を訪れていた。そこで清心教医術の驚くべき歴史を知るが、同じころ安房那領で皇帝候補のひとりの暗殺未遂事件が起こる。様々な思惑にからめとられ、ホッサルは次期皇帝争いに巻き込まれていく。『鹿の王』、その先の物語!(「BOOK」データベースより)

 

東乎瑠帝国では皇帝の後継者問題で揺れていた。現皇帝那多瑠帝の娘婿である比羅宇候と、那多瑠帝の弟である由吏候とが次期皇帝候補として有力者として囁かれていた。

皇帝になる人物次第で帝国内でオタワル医術や清心教医術に対する対応が異なっていたため、その争いはホッサルたちにも無関係でありえなかった。

比羅宇候は宮廷祭司医長の最有力候補である津雅那の後ろ盾であるし、由吏候はオタワル医術の庇護者だとみられていたのだ。

そのため、東乎瑠(ツオル)帝国の後継者問題は清心教医師団とオタワル医師団にとっても死活問題であり、ホッサルらもそうした世の動きに巻き込まれ、いやでも政治との関係を考えないわけにはいかないのだった。

 

鹿の王 水底の橋』の感想

 

本書『鹿の王 水底の橋』は、本書だけの独立した物語、といっても過言ではなく、前作を読んでいなくても本書だけで充分面白く読むことができます。

前作では主人公としては戦士のヴァンと孤児のユナがいて、そしてもう一人の主人公として東乎瑠(ツオル)帝国の医術師ホッサルがいました。

本書はその医術師ホッサルひとりが主人公であり、ヴァンらは全く出てきません。

 

そして、医師であるホッサルが主人公ということは、本書のテーマが医療、もしくは生命であることにも繋がります。

前作でも医療についての深い考察がなされ、それが日本医療小説大賞の受賞にも結び付きましたが、本書でも前作に劣らない設定が為されています。

 

本書の帯にも書かれている、「なにより大切にせねばならぬ人の命。その命を守る治療ができぬよう政治という手が私を縛るのであれば、私は政治と戦わねばなりません。」というホッサルの言葉は、俗事に惑わされずに医療に専念したい気持ちを表しています。

こうして、本書ではオタワル医術と、東乎瑠(ツオル)帝国の医術である清心教の宮廷祭司医との対立を中心に、「医療」をテーマに物語が展開するのです。

誤解を恐れずに簡単にまとめると、オタワル医術は究極的には患者の命を救うためにはあらゆる手段を尽くすべきという立場であり、清心教の医師団は、病は人間の体の穢れを原因とするのであり、禁忌を犯して命を救ってもあの世での幸せな後生を得ることはできないとします。

 

ここで大事なのは、両者ともに患者のことを真摯に考え、患者のためにはどうすればいいのかを第一義に考えている点では同じだということです。

単純な善悪二元論ではなく、双方にそれなりの理由が、正義があり、その正義のために自説を曲げずに貫いているのです。

そうした点も含めて、上橋菜穂子という作家の紡ぎだす物語の世界は、物語の社会が見事なまでに構築されています。

トールキンのファンタジーの名作『指輪物語』でも物語の舞台となる世界が、架空の言語まで作り上げられていて、比類なきファンタジーとして成立していたように、上橋菜穂子の紡ぎだす世界は細部まできちんと積み上げられていて、登場人物らの行動もその社会の中で必然として存在しています。

 

 

そうした舞台背景があってこその物語であり、それぞれの立場での主張がそれなりに正当性をもって繰り広げられる様は読んでいてとても心地よいものです。

どちらか一つの価値観だけを押し付けられるのではない、お互いの主張にそれなりの根拠づけがなされ、その上で相手を論破していく。

そうした過程を経て導かれる結論は読み手の心にこれ以上はないほどに迫ってきて、大きな感動をもたらしてくれるのです。

 

本音を言えば、前作の続編として、ヴァンやユナらのその後を読みたい気持ちももちろんあります。しかし、本書は本書として感動的な作品として見事に前作の流れを引き継いでいます。

更なる続編を読みたいというのは作者の苦労を知らない読者の勝手でしょうが、読みたいです。続編を期待します。

鹿の王

本書『鹿の王』は、文庫本全四巻で1270頁弱の長さを持つ長編のファンタジー小説です。

「生命」という壮大なテーマを掲げながらも非常に読みやすい物語であり、また日本医療小説大賞や本屋大賞を受賞した皆に愛されている小説です

 

鹿の王』の簡単なあらすじ

 

強大な帝国・東乎瑠から故郷を守るため、死兵の役目を引き受けた戦士団“独角”。妻と子を病で失い絶望の底にあったヴァンはその頭として戦うが、奴隷に落とされ岩塩鉱に囚われていた。ある夜、不気味な犬の群れが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生。生き延びたヴァンは、同じく病から逃れた幼子にユナと名前を付けて育てるが!?たったふたりだけ生き残った父と子が、未曾有の危機に立ち向かう。壮大な冒険が、いまはじまる―!( 第一巻 :「BOOK」データベースより)

謎の病で全滅した岩塩鉱を訪れた若き天才医術師ホッサル。遺体の状況から、二百五十年前に自らの故国を滅ぼした伝説の疫病“黒狼熱”であることに気づく。征服民には致命的なのに、先住民であるアカファの民は罹らぬ、この謎の病は、神が侵略者に下した天罰だという噂が流れ始める。古き疫病は、何故蘇ったのか―。治療法が見つからぬ中、ホッサルは黒狼熱に罹りながらも生き残った囚人がいると知り…!?( 第二巻 :「BOOK」データベースより)

何者かに攫われたユナを追い、“火馬の民”の集落へ辿り着いたヴァン。彼らは帝国・東乎瑠の侵攻によって故郷を追われ、強い哀しみと怒りを抱えていた。族長のオーファンから岩塩鉱を襲った犬の秘密と、自身の身体に起こった異変の真相を明かされ、戸惑うヴァンだが…!?一方、黒狼熱の治療法をもとめ、医術師ホッサルは一人の男の行方を追っていた。病に罹る者と罹らない者、その違いは本当に神の意思なのか―。( 第三巻 :「BOOK」データベースより)

岩塩鉱を生き残った男・ヴァンと、ついに対面したホッサル。人はなぜ病み、なぜ治る者と治らぬ者がいるのか―投げかけられた問いに答えようとする中で、ホッサルは黒狼熱の秘密に気づく。その頃仲間を失った“火馬の民”のオーファンは、故郷をとり戻すべく最後の勝負を仕掛けていた。病む者の哀しみを見過ごせなかったヴァンが、愛する者たちが生きる世界のために下した決断とは―!?上橋菜穂子の傑作長編、堂々完結!( 第四巻 :「BOOK」データベースより)

 

鹿の王』の感想

 

本書が抱えているテーマは「生命」です。そのテーマを展開するためにこの物語の構築している世界は綿密に計算されていて、本書に登場する地方ごとの政治体制や各部族の習俗などが緻密に構築されています。

その世界を主人公ヴァンらが所狭しと活躍します。決して一つの地方だけではなく、構築された物語の世界を縦横無尽に駈けまわり、物語の世界の広大さを感じさせてくれます。

 

上橋菜穂子という作家は、物語の舞台となる架空の世界の構築が非常にうまい作家さんです。基本となる世界感が厳密に構築されているからこそ、その舞台に登場する人物らが生き生きと動き回ることができるのです。

特に本書はそうで、飛鹿(ピュイカ)というカモ鹿に似た動物を乗りこなす、などのファンタジー特有の架空の設定が実にリアリティーを持って読者に迫ってきます。

 

本書にはもう一人の主人公と言ってもいい医術師であるホッサルという人物がいます。この人物を巡っての物語の部分で、より直截的に医療行為についての考察が為されます。

そして、もう一人ヴァンと共に流行り病を生き延びたユマという幼子がいて、本書で重要な役割を担っているのです。

これらの人物の配置は、本書を冒険譚として読み進めるうちに本書のテーマとする「生命のありよう」が自然に読者の心の裡に住みついている、という本書のもつ仕組みの重要な要素となっています。

本書はまた、個々の人間の身体に存在する無数の微生物の活動によって人間の生命活動が維持されているように、個々の人間が集まって社会を形成しつつ生きているというその関係性を小説として組み立てています。

 

こうした描き方は日本のSF界の重鎮でありあの名作『日本沈没』を著わした小松左京が顕著でした。

小松左京という人は壮大なハードSFからコミカルな短編まで様々なジャンルの小説を書かれていますが、アイデアの源泉を人体に求めている短編作品が少なからずあったのです。

 

 

その点では半村良にも人体の仕組みをモデルにした作品がありましたが、残念ながら小松左京の作品も半村良の作品もタイトルを覚えていません。

 

本書は宗教の側面も考えられています。それは、ホッサルらの治療行為を神の意思に反するものとして受け入れない帝国の医師団として設定されています。

このことは現実にもキリスト教の一つの派の中に似たような考え方をする人らがいて問題となりました。

 

このように多くの問題提起を含む本書ですが、先にも述べたように、示されているテーマなど考えずにただ一遍の冒険譚としてみても非常な面白さを持った作品です。

単純に主人公ヴァンらの冒険譚として十分以上に面白い物語なのです。

だからこそ本屋大賞も受賞し、加えて日本医療小説大賞をも受賞しているのだと思われます。

 

ちなみに、本書には『鹿の王 水底の橋』という続編が出版されました。

この続編ではオタワルの天才医術師ホッサルが主人公であり、戦士のヴァンと孤児のユナは全く登場しません。ヴァンやユナのその後の物語も是非読みたいものです。

 

 

また電子書籍版での合本版も、Amazon Kindl版、Rakuten kobo版ともに出版されています。

 

 

さらに、2022年2月4日に本書を原作とするアニメ映画が「鹿の王 ユナと約束の旅」というタイトルで公開されます。詳しくは下記サイトを参照してください。

 

精霊の守り人 [ DVD ]

女用心棒のバルサは新ヨゴ国の王子チャグムが川に転落したところへ通りかかり、命を救った。宮殿に連れて行かれたバルサは、妃から「王子を連れて逃げてほしい」と頼まれる。チャグムには精霊の卵が宿ったが、その精霊は悪しき魔物と言われており、帝から暗殺されようとしていると言うのだ。やむなくチャグムを連れて逃亡するバルサ。バルサは闘い、生きる厳しさと身を守る術をチャグムに教えていく。シーズン1DVD-BOX。(「Oricon」データベースより)

 

綾瀬はるか主演のNHKテレビドラマのDVDBOXです。

獣の奏者エリン [ DVD ]

崇高な獣“王獣”と心を通わせた少女・エリンが、その類まれな才能ゆえに王国の勢力争いに巻き込まれ、波乱万丈の人生を送ることになり…。『精霊の守り人』の上橋菜穂子による巨編ファンタジー『獣の奏者』を、高いクオリティで定評のあるProduction I.Gとトランス・アーツの制作でTVアニメ化。第1話から第4話までを収録。(「Oricon」データベースより)

 

DVD12巻。全50話。未見です。

獣の奏者 [ コミック ]

上橋菜穂子×武本糸会が贈る珠玉の本格ファンタジー!!!闘蛇(とうだ)‥‥それは戦闘用の偉大なる獣。王獣(おうじゅう)‥‥それは王の威光を示す神聖な獣。エリンの母は、戦闘用の獣(けもの)である「闘蛇(とうだ)」の世話をする有能な医術師。だが、ある日その闘蛇が全て死んでしまった!母はその責任を問われ、裁きにかけられることになるが‥‥!人を恐怖させ、また、魅了する、神秘的で獰猛な「獣」。その存在に魅せられた少女・エリンの運命がここに廻(まわ)り出す!

母が指笛を吹いた時、彼女の運命が始まったーー!エリンは、獣ノ医術師である母・ソヨンと暮らす好奇心おう盛な十歳の少女。だがある日、母が世話している戦闘用の獣・闘蛇(とうだ)が全て死んでしまった!母はその責任を問われ、裁きにかけられることになるがーー。「精霊の守り人」などで知られる上橋菜穂子の原作を、武本糸会がコミカライズ!手触りと、温かみのある極上ファンタジーがここに!!(Amazon内容紹介より)

 

シリウスKC 全11巻。未見です。

獣の奏者

リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。母の不思議な指笛によって死地を逃れ、蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、母と同じ獣ノ医術師を目指すが―。苦難に立ち向かう少女の物語が、いまここに幕を開ける。(「BOOK」データベースより)

 

「決して人に馴れぬ孤高の獣」を飼いならす少女の姿を描いた長編のファンタジー小説です。

 

緑の瞳を持つ少女エリンは獣ノ医術師である母と共に闘蛇衆たちの村で暮らしていた。

ある日母が世話をしていた闘蛇の中でも特に強い「牙」が死んだ。エリンの母はその責めを負わされ処刑されてしまう。

母と引き離され一人で生きていくことになるエリンだったが、蜂飼いのジョウンに助けられ、共に暮らすこととなるのだった。

 

この作品も読みごたえのある作品でした。

守り人シリーズ」でも書いたように、上橋菜穂子の作品は構成がよく練られていて、物語の奥行きが広く安心して読み進むことが出来ます。

大人も子供も上橋菜穂子の紡ぎだす世界に入り易く、読者が主人公の冒険物語に感情移入しやすいので人気があるのではないでしょうか。

 

本書は本来「闘蛇編」「王獣編」の二巻で終わる予定だったのですが、あまりの要望の多さに「探求編」「完結編」が追加され、さらに外伝を加えて全五巻になったそうです。

 

ちなみに、上掲の書籍の写真は講談社文庫版にリンクしていますが、各編を二分冊にしている青い鳥文庫版もあります。

 

 

この作品は全50話としてアニメ化され、2009年からNHK教育テレビで放送されました。

 

守り人シリーズ

守り人シリーズ(完結)

  1. 精霊の守り人
  2. 闇の守り人
  3. 夢の守り人
  4. 虚空の旅人
  5. 神の守り人 <上> 来訪編
  6. 神の守り人 <下> 帰還編
  7. 蒼路の旅人
  1. 天と地の守り人 <第1部> ロタ王国編
  2. 天と地の守り人 <第2部> カンバル王国編
  3. 天と地の守り人 <第3部> 新ヨゴ皇国編
  4. 流れ行く者 守り人短篇集
  5. 炎路を行く者 -守り人作品集-
  6. <守り人>のすべて 守り人シリーズ完全ガイド

 

この世界は人間の世界と精霊の世界と重なった二重構造をしていて、同じ時間と空間に重なって存在しているという。

その世界での女用心棒バルサは水の精霊の卵を宿している皇子チャグムの護衛をすることとなります。

皇子は、帝国の威信のために息子を殺そうとしている父帝と、水の精霊の卵を狙っている精霊の世界の怪物との両者から命を狙われていたのです。

 

人類学者である著者上橋菜穂子が著した児童文学で、野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞他多数の賞を受賞しています。

児童文学とは言いつつも十分大人の鑑賞に耐えうる、安定感のある構成の作品です。ハリーポッターシリーズが幅広く大人に受け入れられたのを思えば良いでしょう。

というより、ハリーポッターシリーズよりはずっと大人向けではないでしょうか。

上橋菜穂子の作品の『獣の奏者』(講談社文庫全五巻)にも言えることですが、個人的には本『守り人シリーズ』は大人向けの物語だと思っています。

ただ、その文章、物語の内容が分かりやすく、子供が読んでも面白い物語だと言えるのです。

 

 

この作品の面白さの一つに、主人公の女用心棒バルサが児童文学であるにも拘らず「三十歳の女用心棒」という設定であることにもあるかもしれません。

作者によれば、編集の担当者には怒られたけれども「短い槍を担いだ三十代のオバサンが、小さな男の子の手をひいて逃亡している姿が浮かんできた」のだから仕方が無いのだそうです。

 

このシリーズは「守り人」とという言葉と、もう一つ「旅人」という言葉がつけられた書名とに分かれます。

バルサが主人公の作品は「守り人」がつき、皇子チャグムが主人公の作品には「旅人」がつけられているのです。

 

全26話としてアニメ化され2007年にNHK-BS2で放送されました。

 

 

更に、2016年の春から3年かけて全22回の4Kでの実写ドラマとして、綾瀬はるかの主演で放映されました。

同様のNHKドラマのシリーズ作品である『坂の上の雲』の出来栄えがとてもよかったことを考えると、同様に力の入ったシリーズのようで期待していました。

しかし、残念ながら日本人の役者さんたちが演じるカタカナの名の登場人物やファンタジーの世界は今一つリアリティに欠け、綾瀬はるかのアクション意外に見るべきものはあまりありませんでした。