この物語はジャンルを考慮せずに、今まで私が読んだ全ての物語の中でも最も好きな物語の中のひとつです。
冥王サウロンが作った指輪を処分をするために旅ででる。ただそれだけのお話なのですが、この指輪を処分しに行くという物語に、以降の全てのファンタジーに影響を与えたと言っても過言ではない、胸躍らせる物語のエッセンスが全て入っています。
もともとSF等の現実離れした物語が好きだった、ということもあるのでしょう。物語のかなめとなる指輪は、世界を手に入れる力を得ることは出来るが逆に指輪の魔力に捉われる危険性が高い、という代物です。この指輪を存在させる世界観が、エルフの言葉まで作り上げてしまう程に緻密に、そして破綻が無く構築されています。また、旅の仲間の中心となる四人のホビット達のみならず、そのホビットを助ける人間や魔法使い、エルフ、ドワーフ、更には敵役となるサウロンや重要なキーを握るゴラム(スメアゴル)など、登場人物の造形がよくできているのです。随所に挟まれるホビットの歌にしてもしかりで、読み手の心を捕まえて離さない物語です。
著者のトールキンはオックスフォードの言語学者であり、デンマークを舞台とする英雄譚である「ベーオウルフ」研究の第一人者でもあるそうで、ケルト神話、北欧神話にも精通していると言いますから、そうした物語の要素が「指輪物語」として結実していると言えるのでしょう
でも、読み手としてはそうした作者の背景よりも作品自体が問題なのですが、その作品が前述のとおり素晴らしいのです。この壮大な物語は三部作として映画化もされ、好評を博しました。
法螺話が嫌いだとか、ハードボイルド作品や時代小説しか受け付けない、とかいう人には受け入れられないかもしれませんが、そうでない限りは少々長い物語ですが本を置くことが出来なくなると思います。それほどのおすすめの本です。
蛇足ながら、私のこの作品に対する熱などは大したものではなく、本当に好きな人は中つ国の歴史を調べ挙げて、後記の遺稿集なども全て隅から隅まで読んでおられるようです。
新版 指輪物語 (文庫版 全10巻)
- 旅の仲間 4巻
- 二つの塔 3巻
- 王の帰還 2巻
- 追補編 1巻