本書『千里眼の復讐』は、『千里眼 クラシックシリーズ』第四巻の、文庫本の「解説」まで入れると全部で632頁にもなる長編のエンターテインメント小説です。
これだけの長さが必要であったのか疑問がわいてくるほどに長い小説で、読み通す労力に見合うほどの面白さを持っているとは思えない作品でした。
『千里眼の復讐』の簡単なあらすじ
日中開戦を阻止した岬美由紀だったが、違法行為のせいで南京の監獄に収監される。恩赦の条件は連続失踪事件の解決。現場の香港には脳梁切断手術を施された人々の姿が…。友里佐知子の陰謀を察知し東京に戻った美由紀をトンネル崩落事故が襲う。そこに鬼芭阿諛子の声が響いた!「ようこそ、恒星天球教主催のイリミネーションの儀式へ」隔絶された都心の地下深くで繰り広げられるデスゲームの行方は?完全書き下ろし最新作。(「BOOK」データベースより)
南京国際戦争監獄の独居房に捉えられていた岬美由紀は、南京國際戰争監獄法務最高顧問の賈蘊嶺(チアユンリン)により独房から出され、香港で起きている不審な失踪事件の解決に力を貸して欲しいと頼まれた。
失踪者の追跡により、とある養護施設にたどり着いた美由紀たちだったが、そこで見たものは本人の知らない間に手術を施された人たちであり、実験材料にされ殺された人たちの死体だった。
その処置を施した者のアパートで恒星天球教の阿吽拿(アウンナ)を名乗る友里佐知子の写真を見つけた岬美由紀は、賈蘊嶺のはからいにより帰国を果たすことになるのだった。
その後、前巻の終わりでジャクソンの焼死の現場にいた中国系アメリカ人のロゲスト・チェンと名乗る老紳士が再び登場し、ペンデュラム日本支社の抹消とペンデュラムグループが破産手続きに入ったと告げる。
その上で、友里佐知子はメフィスト・コンサルティング・グループの特別顧問補佐であったこと、そして岬美由紀に友里佐知子の企図を阻止してほしいと示唆するのだった。
さらにこの老紳士は、美由紀の嗜好に一致する十代半ばの日向涼平という少年を危険にさらし、美由紀に助けさせるのだった。
『千里眼の復讐』の感想
第三巻『千里眼 運命の暗示 完全版』の展開につなげるためでしょうか、前巻では既に帰国したはずの岬美由紀がまた監獄に捕らわれている場面から始まります。
確かに、前巻の終わりでは懲役二百年を言い渡されましたが、美由紀の貢献度に応じて減刑され、刑期満了で出所した旨の記述がありました。
そして本書冒頭で文庫本で80頁程を中国での活躍に費やし、その後日本に帰ってくるのですが、日本での場面はまた前巻の終わりに登場し美由紀に捉えられる寸前に身体が燃え上がり死んだウィリー・E・ジャクソンの場面へとつながります。
その上で、本書『千里眼の復讐』ではまた友里佐知子との戦いが全面に展開されることになり、鬼芭阿諛子(きば あゆこ)とジャムサという存在が直接の敵役として登場します。
すなわち、友里佐知子の企みにより美由紀は山手トンネルへと誘い込まれ、このトンネル内での戦闘行為に巻き込まれるのです。
本書『千里眼の復讐』での戦いはそのほとんどが山手トンネル内での戦いに尽きるのですが、その戦いがこのシリーズのこれまでがそうであるようにツッコミどころ満載です。
また、これほどの紙数を費やす必要があるかと思うほどに長く、読み通すのが苦労でもありました。
簡単に人が死ぬのはこの作者の作品では当たり前ですが、それにしても死に過ぎです。
いずれにしろ、あらてめて本書の感想を書くほどのものでもないと思われ、単純に相当に荒唐無稽な物語を楽しめる人だけが楽しめばいい、そうとしか言えない作品でした。
といいながらも、多分シリーズを読み続けることになるのだろうと思います。