本書『高校事変Ⅲ』は、タイトルのナンバリングのとおり、『高校事変シリーズ』の第三巻の長編のアクション小説です。
今回の舞台は外国であり、戦いのプロである傭兵を相手にした結衣の目いっぱいのアクションが繰り広げられます。
『高校事変Ⅲ』の簡単なあらすじ
犯罪史に残る凶悪な半グレ連合リーダーを父に持つ優莉結衣を、全寮制の矯正施設・塚越学園のトップが訪ねてきた。結衣は転入を勧められるが、見学に出発した未明、突如として武装集団の襲撃に遭う。結衣の記憶はそこで途切れ、ふたたび目覚めたときには、熱帯林の奥地にある奇妙な“学校村落”に身を置いていた。同じく日本から来た少年少女ら700人が生活しながら通学する、要塞化された校舎の謎。シリーズ最高傑作登場!(「BOOK」データベースより)
優莉結衣は、以前在籍していた泉が丘高校での暴力事件がもとで、現在在籍している葛飾東高校を去らなければならなくなっていた。
その事件は結衣が起こしたものではなかったものの、ディープフェイクによる動画をもとに判断されたものだった。
その結衣のもとを訪ねてきた塚越学園学園長の角間良治の誘いに応じ、結衣は塚越学園を見学に行くことになったが、途中で襲撃に会い、角間良治は殺され、結衣も拉致されてしまう。
結衣が目が覚めると、そこは日本ではなさそうなチュオニアンという学校施設であり、七百人を超える日本人の生徒たちがいた。
親たちに見放された子供たちが塚越学園の入学前に集められていて、数多くの監視カメラや盗聴マイクのもと点数制が敷かれており、ある点数が貯まると最悪では銃殺に処せられるのだという。
ここチュオニアンの檜蘇という名の学園長は、結衣に対し、問題を起こせば生徒を一人ずつ処分すると脅しをかけてくるのだった。
『高校事変Ⅲ』の感想
本書『高校事変Ⅲ』で描かれている時代を反映している事柄と言えば、児童虐待など破壊された家庭環境の問題でしょうか。
でも、本書とテーマというには、壊れた家庭環境のような問題は半グレ集団を相手にする本シリーズでは普遍的な問題のような気もします。
あえて反映された時代性を言うとすれば、それは「ディープフェイク」などの技術上の先進性であると言えるでしょうか。でも、それもシリーズを通して言えることだと思います。
本書では前巻の最後で現れた結衣の妹の凜香も絡んできます。と言っても凜香自身の行動はあまり描かれているわけではありません。
他に、第一巻で登場した啻山(ただやま)理緒子や、矢幡総理を警護するSPの代表の錦織清孝の息子である醍醐律紀などが登場しています。
本書『高校事変Ⅲ』の惹句には「シリーズ最高傑作」とありますが、その文句には疑問があるところです。ただ、この異論はまだ三巻しか読んでいない時点でのものです。
少なくとも、インパクトにおいては第一巻のほうが大きいでしょうし、個人的なアクションという面では第二巻の方がリアリティがあったような気がします。
第一巻、そして本書第三巻よりは第二巻の方が起きる事件が相対的に身近であり、結衣のアクションの相手も個人、もしくは暴力団であって、物語として現実味があると感じたのでしょう。
本書『高校事変Ⅲ』は、まさに荒唐無稽な物語です。そして、だからこそ、と言っていいと思いますが、アクションに特化したエンターテイメント小説としてただ楽しんで読むべき作品だと思います。
そして、物語に厳密なリアリズムを求める読者でなければ、その期待に応えて物語を楽しむことができる作品だと思います。
今後の展開が楽しみな作品です。