不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに次第に明らかになる「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した“かたみ”の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。(「BOOK」データベースより)
日常の中に紛れ込む非日常、と言うか「不可解」と言って良い出来事について、丁度管理人である私が青春を過ごしたその時期を時代背景として、当時の音楽を忍び込ませながら描いている連作の短編小説集です。
そうした、私の時代との一致があるからかもしれませんが、最初は通常のホラーチックな物語と思っていたその物語なのですが、読み進めるうちに何とも心地よい世界に変貌していました。
特別に文章がうまいという印象がないまま、通常の生活の中に人情を絡めて不可思議な出来事を描くその語り口は、見事というほかないと思います。
ホラーというとスプラッターに結びついて残虐なイメージがありますが、そのホラーという言葉には捉われない方が良いと思います。ノスタルジックな世界も良いと思われる方には是非お勧めです。