『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』とは
本書『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』は『ヨギガンジーシリーズ』の第一弾で、1987年7月に松田道弘氏の解説まで入れて241頁で新潮文庫から書き下ろし出版された、長編の推理小説です。
本書は、謎解き推理小説としての面白さはさほどは感じませんでしたが、ミステリー文庫本としての仕掛けには十二分に満足させられた作品でした。
『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』の簡単なあらすじ
驚愕! こんなことが出来るとは。マジシャンでもある著者が企んだ、「紙の本ならでは」の仕掛け。 未読の人には、絶対に本書のトリックを明かさないで下さい。
二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団体〝惟霊(いれい)講会〟。超能力を見込まれて信者の失踪事件を追うヨギガンジーは、布教のための小冊子「しあわせの書」に出会った。41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、実はある者の怪しげな企みが隠されていたのだ――。
マジシャンでもある著者が、この文庫本で試みた驚くべき企てを、どうか未読の方には明かさないでください。本文冒頭より
「しあわせの書」は桂葉華聖(かつらばかせい)という人の著で、一九八七年七月一日、惟霊講会の出版局から刊行されている。
この本の体裁はA6判二百ページほどの小冊、ごく普通の文庫本といった感じだ。一ページが四十一字十五行、改行が多くゆったりした字組みは、普段、活字に親しまない人達にも読み易いようにという心配りなのだろう。……( Amazon 内容説明より )
『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』の感想
本書『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』は、推理小説としてはそれほど感心した作品ではありませんでした。
そもそも、本書を読むきっかけになったのは杉井光の『世界でいちばん透きとおった物語』という作品であり、「電子書籍化絶対不可能!」や「紙の本でしか体験できない感動」といった謳い文句で人気を博している作品でした。
ところが、本書『しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術』もまた紙媒体でしか成立しない仕掛けが施されていることで有名な作品だったのです。
そもそも『世界でいちばん透きとおった物語』の最後に献辞として書かれていた「A先生」が本書の作者泡坂妻夫だろうということで調べたところ、本書の仕掛けの話に行きついたのです。
ですが、本書の探偵役ヨギガンジーが正体不明の何ともはっきりとしないキャラクターである上に、推理小説としての出来が決して感心するものではありませんでした。
ただ、キャラクターの説明がないことは、本書が『ヨギ ガンジーの妖術』に続く『ヨギガンジーシリーズ』の第二弾であり、最初の長編だということも関係してくると思われます。
しかしながら、その物語の内容自体があまりできが良いとは思えなかったのです。
ただ、ミステリーとしての面白さは感心しませんでしたが、本書に施された仕掛けはいろいろなサイトで紹介されているのも当然だと思ったものです。
そもそも作者の泡坂妻夫という作家は、奇術師として名の通ったひとで、私もかつて何冊か読んだことがあり、その奇術師らしいトリックに感心した覚えがあります。
その作品は、多分『乱れからくり』『11枚のとらんぷ』あたりだったと思うのですが、今ではその内容も覚えていません。ただ、そのトリックが秀逸でありその作者の名前だけは強烈に覚えていたのです。
繰り返しますが、本書はミステリーとしては感心しませんでしたが、紙媒体ならではのトリックは見事だと言わざるを得ませんでした。