新装版 ナイチンゲールの沈黙

眼球を摘出されてしまう子供たちのために、不定愁訴外来の田口公平がメンタルサポートをすることになる。また高名な歌手水落冴子が神経内科の特別病室に入院してきた。一方、小児科に入院している子供の父親が死体で発見される。そこに、警察庁から来た加納警視正と問題児白鳥が絡み、事件は複雑な様相を呈していくのだった。

この作者の本で最初に読んだのはこの本でした。まずは映画「チーム・バチスタの栄光」で見た探偵役「白鳥」のイメージの違いに驚いたものです。同時に、各キャラの書き分けが実に巧妙で読んでいて面白い

眼球を摘出されてしまう子供たちのために、不定愁訴外来の田口公平がメンタルサポートをすることになる。また高名な歌手水落冴子が神経内科の特別病室に入院してきた。一方、小児科に入院している子供の父親が死体で発見される。そこに、警察庁から来た加納警視正と問題児白鳥が絡み、事件は複雑な様相を呈していくのだった。

この作者の本で最初に読んだのはこの本でした。まずは映画「チーム・バチスタの栄光」で見た探偵役「白鳥」のイメージの違いに驚いたものです。同時に、各キャラの書き分けが実に巧妙で読んでいて面白いと思いました。

文章は論理で組み立っているようで、しかし怜悧というわけでもなく、読み手に畳み掛けてくる面白さがあります。

でも、何といっても一番の特徴は田口、白鳥という探偵役のキャラの設定の面白さではないでしょうか。

ただ、音楽による脳内イメージの喚起、という物語上の重要な設定が素直に受け入れられず、その点に違和感が残り少々物語世界への感情移入が出来にくく感じました。

でも、久しぶりに物語としての面白さを感じた小説です。

本書の「眼球を摘出されてしまう子供たち」の一人に佐々木アツシという少年がいます。後に、この少年を主人公として『モルフェウスの領域』と『アクアマリンの神殿』という小説が書かれます。

佐々木アツシ少年の残された片目をも病魔が襲ったため、彼を世界初の「コールドスリープ」技術により五年間の眠りにつかせる、というSF仕立ての話なのです。特に『アクアマリンの神殿』に至っては青春小説の趣さえあるのですが、個人的には今ひとつの作品でした。
と思いました。

文章は論理で組み立っているようで、しかし怜悧というわけでもなく、読み手に畳み掛けてくる面白さがあります。

でも、何といっても一番の特徴は田口、白鳥という探偵役のキャラの設定の面白さではないでしょうか。

ただ、音楽による脳内イメージの喚起、という物語上の重要な設定が素直に受け入れられず、その点に違和感が残り少々物語世界への感情移入が出来にくく感じました。

でも、久しぶりに物語としての面白さを感じた小説です。

チーム・バチスタの栄光 [コミックス]

原作は、第4回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作の『チーム・バチスタの栄光』(海堂尊)。現役医師が描くメディカル・エンタテインメントとして、話題騒然の本作。単行本は28万部の売れ行き、11月に発売された文庫は上下合わせて100万部突破、2008年2月9日には映画も公開(主演・竹内結子/阿部寛、全国東宝系)。(Amazon内容紹介より)

 

あまりい評価はありません。

チーム・バチスタの栄光 [TVドラマ版 DVD-BOX]

「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した海堂尊の同名ベストセラーを、伊藤淳史と仲村トオル共演でTVドラマ化したBOX。不可解な連続術中死の真相を暴くため、心療内科医と役人のふたりが調査を開始する。全11話を収録。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

Amazonの内容紹介には、
本作には、オリジナルの結末が用意されています。
医療ミスなのか?殺人なのか?原作とも映画とも違う展開から目が離せません。
と記載してありました。

チーム・バチスタの栄光 [映画版 DVD]

現役医師・海堂尊による大ベストセラー医療ミステリーを映画化。難易度の高い心臓手術専門の精鋭集団“チーム・バチスタ”に起きた不可解な連続術中死の真相を暴くため、門外漢の心療内科医・田口と切れ者の役人・白鳥のふたりが調査を開始するが…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

原作より先にこの映画を見たので、田口や白鳥の原作のイメージとの違いを感じずに見ることが出来ました。だからというわけでもないのでしょうが、それなりに面白いと思って見ました。

チーム・バチスタの栄光

心臓移植の代替手術“バチスタ”手術専門の天才外科チームで原因不明の連続術中死が発生。不定愁訴外来の田口医師は、病院長に命じられて内部調査を始めた。そこへ厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔がやってきて…。『このミステリーがすごい!』大賞を受賞したのち「SUGOI JAPAN Award 2015」の国民投票で、過去10年間のエンタメ小説の中からベストテンにも選出された傑作医療ミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

海堂尊のデビュー作であり、第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した長編の医療ミステリー小説です。

 

東城大学医学部付属病院では三件のバチスタ手術失敗での死亡事故が発生したため内部調査を開始することとなった。

その調査のために同病院不定愁訴外来の田口医師が選任されたのだが、田口医師にとっての問題は、厚生労働省の役人白鳥圭輔と共に調査をしなければならないことだった。

 

著者が現役の医師であることから病院という物語の舞台の描写は的確で、更に病院スタッフのキャラクター造形も見事で、医療現場の描写はリアリティーに富んでいます。

そして、何といってもの特徴は主人公の田口というキャラクターと厚生労働省の役人である白鳥調査官でしょう。

田口公平という通称愚痴外来を任されている実に人のいい医師と、強烈な個性の持ち主である役人の白鳥圭輔との掛け合いが見事です。

 

ただ、現実の医療現場を舞台とするミステリーであり、物語が面白いのは間違いないのですが、論理を振りかざした台詞回しは、それが特徴なのでしょうが、少々鼻につくところがあります。じっくり読まないとその意図が読み取れないのは私だけではないと思います。

しかし、その点を差し引いてもこの物語は面白いです。

海堂 尊

少し調べてみると、この人の著作は「田口・白鳥シリーズ」や「バブル三部作」などのシリーズに分けてあります。しかし、殆どの著作は同じ「桜宮市」を舞台としていて、時系列も共有しているようです。そこで、この作家の作品群は「桜宮サーガ」と呼ばれています。

登場人物も各作品で共通していたりして、わざわざシリーズとして分ける必要もないようにも思えますが、各々に主人公、舞台、括られる作品の雰囲気は異なりますので、シリーズとして見た方が良いのでしょう。

著者は千葉大学医学部を卒業し、博士号も取得している現役のお医者さんで、作品の中でAi(死亡時画像病理診断)の必要性を訴えておられる個所が少なからず見られます。

「チーム・バチスタの栄光」で第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、この作品からブレイクされました。勿論お医者さんですから医学会の内情が描かれるのは分かるのですが、現実にお役所とのやり取りを伺わせる官僚とのやり取りも描写されていたりと、医療関係に絡む様々の問題提起をされつつも、なかなかにエンターテインメント性に富んだ作品として仕上げてあります。たまに、作者の主張が走り過ぎて小説としてはどうなのかと思わせられることもありますが、概して面白い作品に満ちていると言えるのではないでしょうか。

puzzle

学校の体育館で発見された餓死死体。高層アパートの屋上には、墜落したとしか思えない全身打撲死体。映画館の座席に腰掛けていた感電死体―コンクリートの堤防に囲まれた無機質な廃墟の島で見つかった、奇妙な遺体たち。しかも、死亡時刻も限りなく近い。偶然による事故なのか、殺人か?この謎に挑む二人の検事の、息詰まる攻防を描く驚愕のミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

タイトルの通りにパズルのような長編のミステリー小説です。

 

これまた少々変わった中編小説です。

ファンタジーではないと思うのだけれど、ミステリーと言っていいのでしょう。恩田陸独特の世界が展開されます。

多分、軍艦島らしき島の廃墟を舞台に、この島にあった三つの死体についての二人の検事のやり取りが描かれます。

文庫で150頁程の読みやすい長さです。恩田陸の世界に浸るには丁度いい作品かもしれません。

白日夢 素行調査官2

警察組織の腐りきった体質は外からじゃ治せない。なかにいるおれたちじゃないとできない仕事だ。警務部人事一課監察係の本郷岳志たちは、山形へ元刑事の遺骨を引き取りに向かう。自殺したその男は元潜入捜査員で、退職時、多量の覚醒剤を持ち出していた。単独犯なのか?背後関係を調査した本郷たちは、警察組織のなかに元刑事の男を追いつめた黒い人脈が存在する痕跡をみつける。裏切り者は誰だったのか。二転三転する真相!最後まで息をつけない痛快警察小説最新作待望の完成。(「BOOK」データベースより)

 

警察内部の警察という立場の監察官を主人公とする長編の警察小説です。

 

図書館で目の前にあったので借りてしまったため、「素行調査官」の1ではなく2になっています。

警察ものの中でも犯人が警察官だった、という設定はありがちなものですが、そもそも主人公が監察官という設定ですから、舞台は警察内部の物語として描かれます。

 

本郷岳志は元探偵だったのですが、キャリアである警視正の入江透主席監察官が監察官として引き抜いたのです。

その本郷たちは山形で潜入捜査官だった男の遺骨を引き取りに行くことになります。ところがその捜査官は退職時に多量の覚醒剤を持ち出していました。その覚醒剤の背後関係を調査するうちに警察内部の暗部をあぶりだすこととなるのでした。

 

この本自体は私の好みとは若干合わなかったような記憶があります、それで、このシリーズを続けて読まなかったと思うのです。「痛快警察小説」とあるわりにはそれ程痛快な読後感を得られなかったのでしょう。

この作者の『越境捜査』という作品は結構面白く読んでいるので、本作品は私の琴線に触れなかったのだと思います。

越境捜査

警視庁捜査一課殺人犯捜査六係から、特別捜査係に異動した鷺沼は、継続捜査の任に着く。14年前に起きた、12億円を詐取した男が失踪後、死体となって発見された未解決事件の捜査に乗り出すが、難航する。真相解明を拒むかのような圧力。それは一体誰が?―警視庁と神奈川県警。組織と個人。悪と正義。さまざまな境界線を“越境”し、真実を抉り出す熱い警察小説。人気TVドラマシリーズの原作第1弾、待望の文庫化。(上巻:「BOOK」データベースより)

14年前の12億円詐取・殺人事件。再捜査を開始した鷺沼は、神奈川県警山手署刑事、宮野と手を組む。一匹狼を自認する宮野と型破りの捜査を展開し、12億円の行方をつかむ。それは、神奈川県警の裏金庫―。警察庁を含む、警察組織を覆う腐敗を見逃すか、それとも暴くか。組織の安泰をとるか、自らの信条をとるか。人生を賭けた闘いの果てにあるのは希望か絶望か。大藪春彦賞受賞作家が、静かに激しく生きる刑事たちを描く。(下巻:「BOOK」データベースより)

 

一大人気シリーズとなった「越境捜査シリーズ」の第一弾となる長編の警察小説です。

 

もう警察ものの定番と言ってもいいくらいに警視庁対神奈川県警の対立の物語は多い気がします。

 

警視庁の刑事である鷺沼は、12億円の行方が分からないまま迷宮入りになり、時効間近となった事件を洗い直していた。

そのときかつての上司で現在は神奈川県警監察官室長の韮澤から連絡を受け、その時効間近の事件が神奈川県警内部の者の犯行の可能性があることを匂わせられた。そこで、神奈川県警の宮野と共に管轄を超えて調査を開始することとなる。

しかし、その先には組織の腐敗が広がっており、韮澤も何者かの襲撃を受け入院することとなるのだった。

 

当初は警視庁と神奈川県警の対立が前面に出ていましたが、話の展開に伴い、主人公たちと警察組織そのものとの対立の図式まで重なってきます。

結局は警察内部の腐敗という話になるのですが、今野敏などのように軽く読める、とまではいかないにしても、物語のテンポがよくて、結構面白く読み進めることができました。

潜行捜査 一対一〇〇

大晦日に判明した一家惨殺事件。その捜査本部で重要な任についた幸本は、捜査方針の対立から、本部付を解任されてしまう。それから5年、膨大な物証に振りまわされ、事件は迷宮入りの様相を呈してきた。所轄署の生活安全課へと異動となった幸本は、捜査本部と異なる視点で、なおも事件を追っていた。そして偶然に手に入れたある証拠物。捜査員100人を相手に幸本執念の捜査は実を結ぶのか。(「BOOK」データベースより)

 

たった一人で捜査員100人に挑む姿を描く長編の警察小説です。

 

現実に起きた惨殺事件を思わせる捜査本部を意見の対立から解任されてしまった幸本。5年後、別件の関連して当該事件の指紋が見つかるのだが、幸本は上には知らせず自分で捜査しようと思い立つ。

幸本自身の家庭の事情や、警察内部の出世がらみの人間関係など、作品の舞台が通常の刑事ものとは若干色合いが異なります。ほんの少しだけですが今野敏の『隠蔽捜査シリーズ』を思わせたりもしますが、こちらの方がより淡白に感じました。

 

 

ストーリー自体は結構な面白さで物語は進みます。最終的な結論については様々な意見もあるようですが、まあ、個人差でしょう。私はそれなりに面白く読めました。

また、次も読みたいと思います。