隠蔽捜査シリーズ

隠蔽捜査シリーズ』とは

 

本『隠蔽捜査シリーズ』は、キャリアでありながら現場の第一線に立ち、正論を正論として通しきる竜崎伸也という男を主人公とする長編の警察小説です。

この主人公が単なるキャリアというだけではなく、警察官としての原理原則に従い、一切の忖度なく物事を判断するという、非常に珍しく、また痛快で面白い作品です。

 

隠蔽捜査シリーズ』の作品

 

隠蔽捜査シリーズ(2023年09月16日現在)

  1. 隠蔽捜査
  2. 果断 隠蔽捜査2
  3. 疑心 隠蔽捜査3
  4. 初陣 隠蔽捜査3.5
  5. 転迷 隠蔽捜査4
  6. 宰領 隠蔽捜査5
  1. 自覚 隠蔽捜査5.5
  2. 去就: 隠蔽捜査6
  3. 棲月: 隠蔽捜査7
  4. 清明: 隠蔽捜査8
  5. 探花 隠蔽捜査9
  6. 審議官 隠蔽捜査9.5

 

隠蔽捜査シリーズ』について

 

第一作目の『隠蔽捜査』は吉川英治文学新人賞を、第二作目『果断』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞長編部門を、シリーズとして吉川英治文庫賞を、それぞれに受賞しているほどのシリーズです。

清濁併せ飲む大人の対応を良しとしないで、その正論が通らないキャリアの世界を渡っていくのだからすごい。

かなりできる人なのでしょう、と思わせる設定が面白い。主人公はその性格のまま周りを巻き込んで事件を解決してしまいます。

その変な性格の主人公が何故か魅力的な人間に見えてきて、早く次を読みたいとなります。

それは主人公が堅物ではあっても、人としての正道を貫いているからなのでしょう。どこか人情小説の心の交流にも似た情感を漂わせる本書は、お勧めです。

 

また、第八巻の『清明: 隠蔽捜査8』からは、主人公の竜崎の勤務地が神奈川へと移り、それまでの地域の一署長ではなく、神奈川県警刑事部長という新たな地位を得て活躍しています。

このシリーズも永くなり、何となくのマンネリ感を感じていたところでした。作者もそうした声を理解されていたのでしょう。

異動先が警視庁とはあまり仲が良くないとされる神奈川県警というのも面白い設定です。第八巻では早速そうした不仲を取り込んだ構成で読ませてくれました。

新たな地位を得た竜崎の活躍が期待されます。

 

なお本シリーズは、陣内孝則と柳葉敏郎のコンビ、そして杉本哲太と古田新太のコンビと、局を違えてテレビドラマ化されています。

 

今野 敏

この作家も多作です。作品数は150冊を軽く越えているようで、シリーズ数も30を越えようとしています。

またそのジャンルも格闘小説から警察小説、アクション小説、更にはSF小説と多岐にわたります。

確かに、初期の作品には少々雑かなと思われるものが無いわけではありませんが、「隠蔽捜査」の頃あたりから各作品が格段に面白くなったように思えます。

また、このころから今野敏作品が見直されてきたためか、出版社が変わったり、作品名が改題されたりして再出版されてもいますので少々分かりにくいです。

例によって、下記のお勧め作品は面白い作品群の中の一例です。単に私が面白いと思った作品を載せているだけで、他の作品もかなりいけます。面白いです。

チーム・バチスタ3 アリアドネの弾丸 [TVドラマ版 DVD-BOX]

海堂尊の医療ミステリーシリーズ第3弾!田口&白鳥が挑む今度の舞台は、死因不明社会。Ai(死亡時画像診断)センターの設立をめぐり、新型MRIの中で起こった殺人事件。浮かび上がってきたのは警察の情報を裏で操るエリート官僚。優秀だが気の強い女性法医学者。彼女に秘かに好意を寄せる助手。Aiの天才ながら問題児の画像診断医。警察の暴力装置と呼ばれる男。正義のためにAiをつぶそうとする男…。犯人は一体誰なのか?(「キネマ旬報社」データベースより)

 

未見です。

ジェネラル・ルージュの凱旋 [コミックス]

累計部数1000万部突破の大人気「チーム・バチスタ」シリーズが、マンガ文庫で登場です!
伝説の歌姫が緊急入院した頃、不定愁訴外来担当の田口公平の元に匿名の告発文書が届く。“将軍(ジェネラル)”の異名をとる、救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着していると……。ふたたび調査に乗り出すこととなった田口・白鳥コンビが大活躍!! 大人気ベストセラー小説をマンガで一気読みできます!(Amazon内容紹介より)

 

未読です。

チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋 [TVドラマ版 DVD-BOX]

海堂尊のベストセラー小説を伊藤淳史主演でTVドラマ化したシリーズ第2弾のBOX。意識不明の杉山沙希が搬送され、過去に診察したことがあった田口は、救命救急センターに呼び出される。さらに厚生労働省の白鳥まで現れ…。全12話を収録。7枚組。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

未見です。

ジェネラル・ルージュの凱旋 [映画版 DVD]

竹内結子、阿部寛主演の医療ミステリー『チーム・バチスタの栄光』の続編。東城大学付属病院の窓際医師・田口公子と厚生労働省の切れ者官僚・白鳥圭輔が、“ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)”の異名を持つ救命救急センター長の癒着疑惑に挑む。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

この映画を見たときは原作のイメージとの差は織り込み済みだったし、竹内結子、阿部寛という好きな役者さんなので、映画版の田口や白鳥もそれなりに違和感無く受け入れることが出来ました。何より、速水役の堺雅人が良かったですね。やはり演技の上手い人はどんな役でも光っています。

新装版 ジェネラル・ルージュの凱旋

東城大学医学部付属病院に伝説の歌姫が緊急入院した頃、不定愁訴外来の田口公平の元には匿名の告発文書が届いていた。救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという。高階病院長の特命で疑惑の調査を始めた田口だったが、倫理問題審査委員会の介入や厚生労働省の変人役人の登場で、さらに複雑な事態に巻き込まれていく…。「バチスタ」シリーズ第3弾、待望の新装版!(「BOOK」データベースより)

 

「バチスタ」シリーズ第三弾の長編の医療ミステリー小説です。

 

不定愁訴外来の田口公平のもとへ東城大学病院救急救命センター長の速水に対する匿名汚職告発状が届いた。

この問題は倫理問題審査委員会にかけられるのだが、同委員会にはオブザーバーとしてロジカル・モンスター白鳥も参加し、更には救命センターでは白鳥の部下である姫宮が新人ナースとしての研修を受けるのだった。

 

問題児である白鳥の出番が少なく、代わりに姫宮なる女子が登場します。この女性が白鳥に輪をかけた存在であって、強烈な個性を持っています。

でも、本書の特徴としては、キャラの面白さもさることながら、作品の時系列として2作目『ナイチンゲールの沈黙』と同時進行になっている点が挙げられます。

 

 

作家が特定の世界を構築し、その世界の中で作品世界を展開することはよくある手法だし、この作品もそうなのだけれど、時間軸が同じという手法には初めて接しました。

後で調べてみると、当初は一冊の本として書かれていた原稿を出版社の意向により二冊に分けたのだそうです。しかし、そのおかげと言って良いのか、なかなかにユニークな構成になり、面白さも増したのではないでしょうか。

 

本作の主要人物であるジェネラル・ルージュたる速水の活躍が小気味良い作品となっています。

スーパーヒーローが危機に際しその能力を十分に発揮し、結果としてその判断を誤ることは無い、という物語は読み手にカタルシスをもたらすものです。

ミステリー小説としてはいかがなものかという意見があるようです。しかし、個人的にはミステリーであるかどうかは関係が無く、読んだ時間が楽しかったと思えればいいと思っているので、本書は十分に面白い時間だったと言えます。

チーム・バチスタ第2弾 ナイチンゲールの沈黙 [TVドラマ版 DVD-BOX]

海堂尊の原作を伊藤淳史と仲村トオル主演でTVドラマ化したシリーズのスペシャル版。“バチスタ事件”から9ヵ月後。東城医大で脳腫瘍の除去手術を受けた少年が、原因不明の脳幹出血を起こし植物状態に。診察医の田口は、院長から内部調査を命じられる。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

未見です。

新装版 ナイチンゲールの沈黙

眼球を摘出されてしまう子供たちのために、不定愁訴外来の田口公平がメンタルサポートをすることになる。また高名な歌手水落冴子が神経内科の特別病室に入院してきた。一方、小児科に入院している子供の父親が死体で発見される。そこに、警察庁から来た加納警視正と問題児白鳥が絡み、事件は複雑な様相を呈していくのだった。

この作者の本で最初に読んだのはこの本でした。まずは映画「チーム・バチスタの栄光」で見た探偵役「白鳥」のイメージの違いに驚いたものです。同時に、各キャラの書き分けが実に巧妙で読んでいて面白い

眼球を摘出されてしまう子供たちのために、不定愁訴外来の田口公平がメンタルサポートをすることになる。また高名な歌手水落冴子が神経内科の特別病室に入院してきた。一方、小児科に入院している子供の父親が死体で発見される。そこに、警察庁から来た加納警視正と問題児白鳥が絡み、事件は複雑な様相を呈していくのだった。

この作者の本で最初に読んだのはこの本でした。まずは映画「チーム・バチスタの栄光」で見た探偵役「白鳥」のイメージの違いに驚いたものです。同時に、各キャラの書き分けが実に巧妙で読んでいて面白いと思いました。

文章は論理で組み立っているようで、しかし怜悧というわけでもなく、読み手に畳み掛けてくる面白さがあります。

でも、何といっても一番の特徴は田口、白鳥という探偵役のキャラの設定の面白さではないでしょうか。

ただ、音楽による脳内イメージの喚起、という物語上の重要な設定が素直に受け入れられず、その点に違和感が残り少々物語世界への感情移入が出来にくく感じました。

でも、久しぶりに物語としての面白さを感じた小説です。

本書の「眼球を摘出されてしまう子供たち」の一人に佐々木アツシという少年がいます。後に、この少年を主人公として『モルフェウスの領域』と『アクアマリンの神殿』という小説が書かれます。

佐々木アツシ少年の残された片目をも病魔が襲ったため、彼を世界初の「コールドスリープ」技術により五年間の眠りにつかせる、というSF仕立ての話なのです。特に『アクアマリンの神殿』に至っては青春小説の趣さえあるのですが、個人的には今ひとつの作品でした。
と思いました。

文章は論理で組み立っているようで、しかし怜悧というわけでもなく、読み手に畳み掛けてくる面白さがあります。

でも、何といっても一番の特徴は田口、白鳥という探偵役のキャラの設定の面白さではないでしょうか。

ただ、音楽による脳内イメージの喚起、という物語上の重要な設定が素直に受け入れられず、その点に違和感が残り少々物語世界への感情移入が出来にくく感じました。

でも、久しぶりに物語としての面白さを感じた小説です。

チーム・バチスタの栄光 [コミックス]

原作は、第4回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作の『チーム・バチスタの栄光』(海堂尊)。現役医師が描くメディカル・エンタテインメントとして、話題騒然の本作。単行本は28万部の売れ行き、11月に発売された文庫は上下合わせて100万部突破、2008年2月9日には映画も公開(主演・竹内結子/阿部寛、全国東宝系)。(Amazon内容紹介より)

 

あまりい評価はありません。