『仁義なき戦い 菅原文太伝』とは
本書『仁義なき戦い 菅原文太伝』は、著者自身によるあとがきまで含めて単行本(ソフトカバー)で299頁の評伝です。
『仁義なき闘い』という映画の主役である菅原文太という役者の評伝であり、面白く読んだノンフィクションです。
『仁義なき戦い 菅原文太伝』の簡単なあらすじ
「俳優になったのは成り行きだった」誰もが知るスターの誰も知らない実人生。故郷に背を向け、盟友たちと別れ、約束された成功を拒んだ。「男が惚れる男」が生涯をかけて求めたものは何だったのか。意外な素顔、大ヒット作の舞台裏、そして揺れ動く心中。発言の裏に秘められた本音を丁寧に掬い上げ、膨大な資料と関係者の貴重な証言を重ね合わせて「敗れざる男」の人生をまるごと描き出す決定版評伝。( 内容紹介(出版社より))
菅原文太は、新東宝、松竹を経て、安藤昇の引きで東映はと移籍したそうです。
そこから『現代やくざ』シリーズ、『まむしの兄弟』シリーズなどのヒット作を得、『仁義なき戦い』シリーズ、『トラック野郎』シリーズなどで大スターの仲間入りをしました。
その後、大河ドラマ『獅子の時代』に主演したり、東映版の映画『青春の門』の伊吹重蔵役、『千と千尋の神隠し』や『ゲド戦記』にも声で出演したりしています。
その後岐阜県清見村に引っ込んで暮らしていたところにある悲劇が襲い、その後の自身の膀胱がんの発症などもあって、山梨県で本格的に農業をするようになったそうです。
そして2014年11月28日、転移性肝がんによる肝不全で永眠されました。
『仁義なき戦い 菅原文太伝』の感想
映画好きの私にとって、これまで見た映画の中で最高の作品の中の一本は『仁義なき闘い』であり、その主役の菅原文太という役者は、高倉健と並んで最高の役者の中の一人です。
映画好き、それも小説と同様にジャンルを問わない映画好きの私は、御多分に漏れず学生時代には東映のヤクザ映画にもはまりました。
中でも『仁義なき戦い』という映画は衝撃であり、それまで名前しか知らなかった菅原文太という役者を知るきっかけにもなった映画です。
梅宮辰夫、松方弘樹、田中邦衛、成田三樹夫、室田日出男といった役者たちが顔をそろえた、これまでにない作品だったのです。
それまでの任侠映画とは異なる新しい現代ヤクザの流れを汲む作品であり、様式美を無視したリアリティあふれた映画であって、皆が声を揃えて面白いと叫んだものです。
その映画での主人公の広能昌三を演じた菅原文太という役者の存在感はすさまじいものでした。
この映画では、松方弘樹の演じた弱さを見せるヤクザや、千葉真一のすさまじいチンピラ姿など、ほかにも取り上げるべき役者や場面などいろいろあるのですが、菅原文太という役者はまた別格です。
その菅原文太という役者の評伝というのですからすぐに手に取りました。
ほかに、石原慎太郎が安藤昇という男を描いたノンフィクション『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』という本を図書館に予約したところでもあり、本書の情報を耳にしてすぐに借りたということもあります。
本書『仁義なき戦い 菅原文太伝』の巻末に示された参考資料の膨大な数は数えるのも嫌になるほどであり、作者の主観と客観的な情報との峻別も明確です。
詰め込まれた情報もまた膨大ではあるものの、整理されていて読みやすい作品でもありました。
しかし、これまで菅原文太という役者の実像はほとんど知らなかったこともあって、思った以上に本書『仁義なき戦い 菅原文太伝』は面白い作品でした。