伴 一彦

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人生脚本』とは

 

本書『人生脚本』は、新刊書で265頁の長編のサスペンスミステリー小説です。

人生という脚本に翻弄される人々の姿を描く物語ですが、分かりにくい場面も少なからずあって、読み通すのに若干苦労した作品となってしまいました。

 

人生脚本』の簡単なあらすじ

 

嵐の夜、夫はなぜ列車事故に巻き込まれたのか。自分は、彼に生きていて欲しかったのだろうか。早紀は、ずいぶん長い間、夫の考えも事情も、知ろうとはしなかった。事故をきっかけに明らかになっていく夫の足跡と、見え隠れする何者かの悪意。ひとりになった自分は、今後の人生をどう生きていくべきなのか?二転三転する展開から目が離せないノンストップ・サスペンス!(「BOOK」データベースより)

 

須藤早紀は、自分が手をつないでいたはずの息子健太を交通事故で亡くした過去を持っていて、何かにつけ事故の場面を思い出してしまう日々を送っていた。

そんなある日、夫の信夫の出張先で列車事故が発生し、夫も巻き込まれてしまう。

また、早紀夫婦の共通の学生時代からの友人であったルポライターの篠山良平は、夫殺害の罪で懲役刑を受けている飯塚芳江という女の記事を書くために苦労していた。

その篠山良平と共に事故現場で信夫の死亡を確認したはずの早紀だったが、夫の死に疑惑が生じてくるのだった。

 

人生脚本』の感想

 

本書『人生脚本』は、中村雅俊氏の「よくぞここまでのストーリーを!!面白過ぎて人に話せない!話したくない!!」という惹句に惹かれて読んだものです。

しかし、ストーリーは練られたものかもしれませんが、どうにものめり込むことができませんでした。

 

まず登場人物から見ていくと、物語の中心となる人物としては須藤信夫早紀夫婦と彼らの友人の篠山良平の三人がまず挙げられます。

そして、重要人物として信夫の部下の星野という女生がおり、また和菓子屋「いちょう庵」四代目の山岡武志とその妻のひとみがいます。

その他に飯塚芳江という受刑者や、須藤千帆という事故の遺族、そのほかに早紀の勤めるビストロラパンの笹森というオーナー、根岸井上佳奈といった従業員が登場してきます。

 

主人公としては須藤早紀と言っていいのでしょう。

というのも、本書『人生脚本』は、最初は章ごとに須藤早紀と篠山良平との視点が交代し、第四章で山岡武志の目線になって以降、第五章からは同一章の中も須藤早紀と篠山良平との視点が入れ替わるようになっているからです。

ですが、ストーリーの進行上は須藤早紀の物語であり、彼女を主人公と位置付けるのが妥当だと思われます。

そして、この早紀の友人の篠山という人物にもかなりの力点が置かれているため、早紀と篠山のどちらに焦点を当てていいのか分かりにくいという点も、感情移入しにくい要因になっているような気もします。

 

このような章ごとに視点が変化することはもちろんいいのですが、その入れ替わりが急であり、それまでの視点が突然別人の視点となるために非常に読みにくく感じました。

また、脇の登場人物たちの背景を描くつもりだと思うのですが、描かれている細かなエピソードのメインストーリー上の位置付け、関係性が分かりにくく、この点でも不安定に感じます。

エピソードという点では、そもそも本書の導入部などで挟まれている飯塚芳江という懲役囚の存在が何を示しているのか、作者の伴一彦は何を言いたいのか分かりませんでした。

 

本書『人生脚本』はストーリー自体はよく考えられているとは思うのですが、こうした欠点をカバーするだけの魅力を感じるものが無かったのです。

タイトルの「人生脚本」も、本文での人生の「脚本」という言葉の使われ方も、そのままに人生を脚本に例えただけであり、ある種の運命論を語っているだけとしか思えないものでした。

結末も、個人的には中途半端にまとめているとしか思えず、この点でも不満が残りました。

つまり、本書『人生脚本』は全体的な物語の流れが不自然であり、個々の場面の描写にリアリティを感じることができず、帯の著名人の推薦文の高評価にもかかわらず、個人的には残念な作品というしかなかったのです。

批判ばかり書いてきましたが、惹句を書かれた中村雅俊氏のように面白いと思われた方も少なからずおられるのでしょうから、私の感性と合わなかったというほかない作品でした。

[投稿日]2021年12月26日  [最終更新日]2021年12月26日
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