われはロボット 〔決定版〕

ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。(「BOOK」データベースより)

 

ロボットものの初期短編集で、ロボットSFの古典的名作と言われる作品です。

アシモフのロボットシリーズとしてまとめても良いかもしれません。それほどに「ファウンデーション」と「ロボット」の二つの作品群はアシモフの未来史の中で大きな存在です。

 

何と言ってもこの本でロボット工学三原則が示されていることが大きいです。このロボット三原則をもとにミステリ仕立てで物語が展開していきます。

いかにもこの原則に反しているかのような行動をとるロボットを、USロボット社のロボットである心理学者スーザン・キャルヴィンが回顧していきます。

 

SFが好きな人でなくても入りやすい作品だと思います。短編毎にロボットの進化もみられ、ミステリーであったり、ペーソス漂う作品であったりと、超一級の短編集です。

ロボットを主人公として書かれている作品群ではあるのですが、結局は人間について想いを馳せることになる、そんな物語になっています。

 

下記にロボットものと思われる作品をまとめてみました。このほかにも例えば「サリーはわが恋人」という短編などもロボットものと言えなくも無さそうで、覚えていない作品が多数あり、全部は拾えていないと思います。

  1. われはロボット(短編集)
  2. ロボットの時代(短編集)
  3. 聖者の行進(短編集)
  4. 鋼鉄都市
  1. はだかの太陽
  2. 夜明けのロボット
  3. ロボットと帝国
  4. コンプリート・ロボット(短編集)

 

上記の最後に掲げてある「コンプリート・ロボット」は「われはロボット」や「ロボットの時代」他の作品を含んだアシモフのロボットものの短編全31編をまとめた本です。でも古本しかないようで、あとは図書館でしょう。
 

ファウンデーション

まだ読んでいませんが、是非読んでみたいですね。

ウィキペディアによると、この2巻でファウンデーションシリーズの第一巻目を漫画化してあるそうです。今のところ(2015年3月)、この2巻しか出版されていません。

ファウンデーションシリーズ

「ファウンデーション」とは、天才数学者ハリ・セルダンが「心理歴史学者」として現帝国の崩壊を見通した末に設立した、新しい宇宙帝国を建設するのための布石となるべき組織のことです。

「組織」とはいってもそれは「国家」と言い換えても良いもので、心理面を追求する「第二ファウンデーション」の存在も明らかになります。

 

基本的に中・短編で構成されている作品群です。ですから物語を通した固定の主人公というものはいません。強いて言えば「ファウンデーション」という社会自体が主人公ということになります。ハリ・セルダンがホログラムなどの形で随所に出てきますが、言わば預言者的存在ですので主人公とは言えないでしょう。

 

下掲の「6.ファウンデーションへの序曲」「7.ファウンデーションの誕生」は「1.ファウンデーション」の前日譚ですので、時系列としては「6」「7」「1」「2」・・・の順番になります。

出版順で読むか、時系列に合わせて読むかは好みでしょうが、作者の文章力や雰囲気の変化、全体的な構想の問題もありますので個人的には出版順の方がいいかとは思います。

アシモフの死後、現代SF界の大物と言っても良い三人によって、「新銀河帝国興亡史」としてシリーズが書き継がれています。

私はまだ読んでいませんが、この三人は夫々に重厚感のある読み応えの作品を書く作家なので、アシモフ以外の人の手による本シリーズはまた違った趣のある作品に仕上がっていることは間違いないでしょう。

 

ファウンデーションシリーズ

  1. ファウンデーション
  2. ファウンデーション対帝国
  3. 第二ファウンデーション
  4. ファウンデーションの彼方へ
  5. ファウンデーションと地球
  6. ファウンデーションへの序曲
  7. ファウンデーションの誕生

新銀河帝国興亡史(括弧内は作者)

  1. ファウンデーションの危機(グレゴリイ・ベンフォード)
  2. ファウンデーションと混沌(グレッグ・ベア)
  3. ファウンデーションの勝利(デイヴィッド・ブリン)

宇宙の小石

悠々自適の隠居生活をおくっていたシュヴァルツじいさんは、原子核研究所で行なわれた実験によるふとした偶然で、数万年後の銀河世界へタイム・スリップしてしまった。地球は核戦争のために表面のほぼ全域が放射能に汚染され、辺境星域に浮かぶちっぽけな小石にすぎなくなっていた。食糧難に瀕する地球の住民は、ナショナリズムにこりかたまった結社に支配されており、党の一味は銀河帝国を構成する諸世界を相手に、恐るべき陰謀をめぐらしていた。その渦中に巻き込まれた一人の老人の勇気ある行動は、全宇宙を救えるのか。( Amazon内容紹介 より)

 

アシモフの初期長編小説です。

 

主人公は1949年に近所の研究所の事故の余波で数千年の未来へ飛ばされてしまいます。未来の世界で、ある実験の実験台にされた彼は大変な知能と能力を獲得し、その結果、通じなかった言葉も理解できるようになり、現在の自分が置かれた状況も把握できるようになります。

その世界は巨大な宇宙帝国を形成していたのですが、地球は宇宙辺境の小石として忘れ去られていました。その地球の狂信的な一派は帝国に対しある陰謀をたくらんでいたのですが、主人公はその一派と帝国との戦いに巻き込まれていきます。

 

1950年の出版ですので内容は古さを感じるかもしれません。しかし、私も読んだのは40年近く前になりますので断言はできないのですが、レビューを見てもその古さを感じることは無いとあります。

この作品も後にはアシモフのファウンデーションシリーズに位置づけられる作品ですが、そもそも独立した作品として書かれた作品であり、単体として面白く読めます。

私の纏め方が下手で薄っぺらい物語に思えそうですが、アシモフの作品らしく読みやすく、スケールの大きい、SFらしい作品です。

 

本作品を含めて以下の三作品が「トランターもの」と言われ、ファウンデーションの前史にあたります。

  1. 宇宙の小石
  2. 暗黒星雲の彼方に
  3. 宇宙気流

この胸いっぱいの愛を [ DVD ]

原作・梶尾真治、監督・塩田明彦をはじめ『黄泉がえり』のスタッフが再結集して贈るラブファンタジー。出張で故郷・門司を訪れた鈴谷比呂志は、祖母が営む旅館で20年前の自分と遭遇する。比呂志ら4人は、86年にタイムスリップしていたのだった。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

この映画の存在は全く知りませんでした。

『クロノス・ジョウンターの伝説』の中の「鈴谷樹里の軌跡」を原作とする作品ですが、主人公も舞台設定もかなり異なっていて、別作品と考えた方が良さそうです。

とはいえ、作りようによってはかなり面白い映画になりそうなので期待したいのですが、レビューを見る限りは賛否半ばのようで、レンタルするか難しいところです。

ダブルトーン

パート勤めの田村裕美は、五年前に結婚した夫の洋平と保育園に通う娘の亜美と暮らしている。ある日彼女は見ず知らずの他人、中野由巳という女性の記憶が自分の中に存在していることに気づく。その由巳もまた裕美の記憶が、自分の中にあることに気づいていた。戸惑いつつも、お互いの記憶を共有する二人。ある日、由巳が勤める会社に洋平が営業に来た。それは…。(「BOOK」データベースより)

 

記憶を共有する二人の女性の行動を描く、長編のサスペンスファンタジー小説です。

 

税理士事務所に勤務する田村裕美と、企画事務所に勤める中野由巳は、毎朝、自分は誰なのかを目覚めのとき確認する朝を迎えていた。

日常の生活に入ればもう一人のユミの記憶は薄れてしまうのですが、次第にもう一人の記憶がはっきりと残るようになってきました。

そして、中野由巳の前に一人の男が現れます。

 

記憶を共有する二人の女性という奇妙な設定で幕を開けたこの物語も、やはり熊本の街が舞台になっています。

ですから、熊本の街に住む私にとっては馴染みの名称ばかりの街並みなのです。梶尾真治の物語では普通のことですが、読み手としては何となくの親しみを感じてしまうのは無理もないことでしょう。

本書では、二人の間に共通する一人の男が現れ、この作者には珍しく、記憶の共有という現象にまつわる謎解きを中心とするサスペンス色豊かな物語が展開されるのです。

 

しかしながら、いつもの梶尾真治の作品と比べると何となくの違和感を感じてしまいます。人間へのやさしい視点でつづられる梶尾真治の文章の持つあたたかさが今一つ薄いと感じられるのです。

サスペンス色を前面に押し出している分だけ、描かれている人間への「想い」についての書き込みが足りなく感じるのでしょうか。

とはいえ、梶尾真治らしいロマンに満ちたタイムトラベルものであることに間違いはなく、読みやすい物語でもありました。

 

ちなみに、本書は2013年、NHKのBSプレミアムでテレビドラマ化されたそうです。しかし、DVD化はされていません。

ボクハ・ココニ・イマス 消失刑

実刑判決を受けた浅見克則は「懲役刑」と「消失刑」のどちらかを選べ、と言われる。消失刑だったら、ある程度の自由が与えられ、刑期をどのように過ごしてもかまわないらしい。いったい、どんな刑罰なのか?究極の孤独。僕は、いないも同然だった。それでも、彼女を救いたかった。(「BOOK」データベースより)

 

「究極の孤独」を強いられる「消失刑」を選択した主人公を描く、長編のファンタジー小説です。

 

いかにも梶尾真治らしいファンタジーロマン小説です。

とにかく、受刑者は、普通生活を営むことはできるのだけれども、誰からもその存在を認識してもらえないという刑罰の「消失刑」というアイディアが素晴らしいのでです。

 

他者を見ることはできるのだけれども、自分の存在は認識してもらえないということは、当然会話はできません。

単純に、普通の暮らしができるのならば懲役刑よりも当然「消失刑」の方がいいと思えそうでもあります。

しかしながら、誰も自分の存在を認識できず、いないものとして扱われるという状況はどのようなものか、会話のできないつらさや、怪我をしたとしても誰も気づいてくれない怖さなどを作者はすこしずつ示していきます。

意外な出来事の末に、何とかして他者との意思疎通を図ろうとする主人公の努力を、次第に応援している自分が居ました。

 

この作者はまずはそうした限定された状況を創り出すことがうまい作家さんだと思います。

例えば、私が好きな作品である『クロノス・ジョウンターの伝説』は、過去に戻ればその反発で戻った過去の分以上の未来へ飛ばされてしまうという状況下での主人公の行動が描かれていて、自己犠牲という感動をもたらしてくれます。

 

 

更に、その限定された状況を乗り越える主人公の姿をまたロマン風味豊かに描きだす上手さがあり、本書はまさにそうした典型の作品といえます。

ちなみに、本書は2019年5月現在、Amazonでも楽天でも注文はできないようです。個人的には好きな本なので残念です。

黄泉がえり [ DVD ]

『害虫』の塩田明彦監督、国民的アイドルグループ・SMAPの草なぎ剛主演のファンタジードラマ。九州の阿蘇地方で、死んだ人間が甦るという奇妙な現象が起きる。厚生労働省勤務の川田平太は自分の故郷で起きた現象を解明すべく、現地へと赴くのだったが…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

原作とは若干異なる物語です。柴崎コウの主題曲が印象的な映画でした。

黄泉がえり

あの人にも黄泉がえってほしい―。熊本で起きた不思議な現象。老いも若きも、子供も大人も、死んだ当時そのままの姿で生き返る。間違いなく本人なのだが、しかしどこか微妙に違和感が。喜びながらも戸惑う家族、友人。混乱する行政。そして“黄泉がえった”当の本人もまた新たな悩みを抱え…。彼らに安息の地はあるのか、迫るカウントダウン。「泣けるリアルホラー」、一大巨編。(「BOOK」データベースより)

 

梶尾真治お得意の、時間旅行ものの長編のSFホラー小説です。

 

草薙剛と竹内結子主演で、柴崎コウの主題歌でも有名になった映画版「黄泉がえり」の原作です。私にとっては映画の原作と言うよりもこの作品があって後に映画化されたと言う方が正解なのです。

 

 

映画版と小説とではかなりな部分で違いがあり、映画しか見てない人は是非小説版を読むことをお勧めします。

この作家の特徴の一つとして郷土の熊本が舞台となる作品が多い、ということが挙げられます。

この作品もそうで、私の身近の町名が随所に出てきます。だからというわけではないのですが、この作品も素晴らしい作品です。内容は改めて言うまでもないでしょうが、人の想いをこれほど身近に、飾らない普通の文章で語る作家も珍しいと思います。

 

ちなみに、2019年の2月には2016年におきた熊本地震をモチーフに本書の続編となる『黄泉がえり again』が出版されています。

クロノス・ジョウンターの伝説 [ コミック]

梶尾真治のタイムトラベル・ロマンスの傑作として名高く、映画化、舞台化など展開の続く連作「クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ」(朝日新聞社刊)を、「木造迷宮」(徳間書店刊)のアサミ・マートが渾身のコミカライズ!(「キネマ旬報社」データベースより)

 

未読です。