倉本 聰

倉本聰(クラモト ソウ) 脚本家・劇作家・演出家。1935年1月1日生まれ、東京都出身。東京大学文学部卒業。1959年にニッポン放送に入社。退社後独立し脚本家として活動する。1984年より『富良野塾』を主宰し、俳優や脚本家を養成。2000年に紫綬褒章を受章。代表作は『北の国から』シリーズ、『優しい時間』、『風のガーデン』など。( 倉本聰のプロフィール | ORICON NEWS : 参照 )

ドラマへの遺言

『やすらぎの郷』、『北の国から』、『前略おふくろ様』…テレビドラマ界に数々の金字塔を打ち立てた巨人、脚本家・倉本聰が83歳で書き上げた最新作『やすらぎの刻~道』まですべてを語り尽くす。大河ドラマ降板の真相は?あの大物俳優たちとの関係は?テレビ局内の生々しいエピソード、骨太なドラマ論、人生観―愛弟子だからこそ聞き出せた破天荒な15の「遺言」。(「BOOK」データベースより)

 

本書は、脚本家倉本聰を師匠と仰ぐ上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)の碓井広義による「日刊ゲンダイ」に連載されたインタビューをもとに編集された作品です。

 

私の机の面の前の本棚には『北の人名録』他四冊の倉本聰のエッセイ集が四冊並んでいます。三十年以上も前に亡くなった父の本ですが、これらの本がとても素晴らしいのです。

それからも倉本聰のエッセイは何冊かを読んだものですが、ここ十数年は読んでいませんでした、

 

 

もともと、『前略おふくろ様』というドラマにはまり、倉本聰という名前を知ったのでした。その後あの『北の国から』にどっぷりとつかり、『昨日、悲別で』『ライスカレー』と見続けました。

 

 

その後倉本聰の名はあまり聞かずにいたところ、『優しい時間』や『拝啓、父上様』などが続けて放映され、楽しみな時間を持てたものです。

 

 

あまりテレビドラマは見ない私が珍しく見ていた『2丁目3番地』や東芝日曜劇場の『うちのホンカン』シリーズが倉本聰脚本の作品だと知ったのはいつのことだったでしょう。

テレビで倉本聰のインタビューやドキュメンタリーなどがあれば可能な限りは見たつもりですが、ユーモラスな人でありながらも、仕事に関しては気難しい脚本家だとの印象ばかりが先に立っていました。

ただ、その気難しさは、本書を読む限りでは創作される作品に対する職人的な厳しさの裏返しであったようです。

 

従来から、例えば勝新太郎という役者が自分の演技論を主張して黒沢明監督と衝突したなどという話を聞くたびに、一本のドラマや映画は誰の主張や意見が主になるのだろうかと疑問に思っていたものでした。

脚本があって、それをもとに演出をつける演出家、監督がいて、役者がいる。そのそれぞれが持つ表現者としての主張をどのように折り合いをつけているのでしょうか。

本書では倉本聰なりの答えの一つとして、台詞の末尾を変えられるとその台詞自体の意味も変わってくるから本読みから参加する、と言っておられます。ですから、寺尾聡は勝手に台詞を変えたのでもう二度と使わない、とも書いてありました。

つまり、脚本家としての意図を台本読みの段階で説明するということで、それは演出家と演者への注文ということになります。だから、NHKの大河ドラマでの衝突などの事件も起きるのでしょう。

その意味では、ビートたけしも認めないというのです。ビートたけしは芸人であり、瞬発力こそ命の芸人さんでしょう。倉本聰のように台詞を大事にする脚本家とは合わないというのは分かる気もします。

 

以上のようなことは、本書のごく一部です。倉本聰の仕事に対する姿勢がよくわかる一冊になっています。

とくに、現在進行形で進んでいる『やすらぎの郷』に関してもかなりのページ数を費やしてあります。『やすらぎの郷』の裏話満載ということですね。

このドラマももちろん見ているのですが、本書を読んでからはさらに舞台裏をのぞき、見知った気にもなり、より面白く見ています。

 

 

このように、今のテレビドラマ界に対する主張満載の本書は、もちろん倉本聰という一人の脚本家の主観的な意見を取り上げたインタビュー作品です。

まして、インタビュアーも倉本聰の弟子を自任する碓井広義という人物ですから、倉本聰を客観的に見れているかといわれればそうではないというしかないでしょう。

しかし、本書は倉本聰という人物を分析する本でもないし、単に倉本聰という人物を紹介したいというインタビュアーの意図のもとに書かれた本です。

そしてその意図は十分に満たされていると思います。

私のような倉本ファンにとってはもってこいの一冊でした。

団 鬼六

(1931-2011)1931年9月1日、滋賀県生まれ。関西学院大学卒。様々な職業を経たのち、1957年、文藝春秋のオール新人杯に入選し、執筆活動に入る。「奇譚クラブ」に投稿した『花と蛇』が評判を呼び、以後SM小説の第一人者となる。他の著書に『真剣師 小池重明』『美少年』『檸檬夫人』『最後の愛人』『往きて還らず』など多数。食道ガンにより2011年5月6日没。享年79。本名、黒岩幸彦。( 団鬼六 | 著者プロフィール | 新潮社 : 参照 )

いわゆる官能小説の書き手であることは知っていましたが、サド・マゾ作品を書かれる作家さんだということで、一冊も読んだことはありませんでした。

1989年に一度断筆宣言をされたそうですが、1995年に『真剣師・小池重明』という作品を書かれ、復活されたそうです。

今回、柚月裕子の『盤上の向日葵』という作品を読むにあたり、小池重明という人を調べていく中で団鬼六の『真剣師・小池重明』という本にであい、読むことになりました。

真剣師 小池重明

羽生善治をして「不思議な魅力を感じた」「どう評価していいのかわからない」と言わしめた、不世出の天才棋士・小池重明の波乱に満ちた生涯―。「小池重明の遺書」、「小池重明名勝負棋譜」収録。 –このテキストは、単行本版に関連付けられています。 (「BOOK」データベースより)

本書は、柚月裕子の『盤上の向日葵』という将棋を題材にしたミステリーを読むにあたり、真剣師の小池重明という人物のことを調べてから読んだ方がいいという焼酎太郎さんのお勧めに従って見つけた作品です。

真剣師というのは、簡単に言えば「テーブルゲームの賭博によって生計を立てている者」のことであり、ここでは賭け将棋で生きている人物のことになります。

なぜそのようなギャンブラーが本の題材になるのかというと、一冊の本にするに値するほどの、それだけ凄まじい人生を送った人物であったということです。

事実、小池重明という人物の将棋の強さは強烈なものがあったようで、連続二期アマ名人となり、プロ棋士を相手にしてもことごとく勝ち続けたといいます。プロ棋士への道も開きかけたのですが、小池の寸借詐欺事件や女性問題、暴力事件などの素行の悪さから日本将棋連盟により却下されてしまったそうです。

しかしながら、生来人当たりは良く、どこか憎めない性格だったそうですから、恩人を裏切っても許してもらえ、再度その恩人を裏切ってもまた別な支援者が現れるなど、愛される側面もあったと思われます。そういった性格だからこそ女性にも好かれたのであり、人妻との駆け落ち事件を三回も起こすことになったのでしょう。

この点については、著者の団鬼六自身が小池重明について

この男には不可思議な魅力があった。人間の不純性と純粋性を兼ね合わせていて、つまり、その相対性の中に彷徨をくり返していた男である。善意と悪意、潔癖と汚濁、大胆と小心、結城と臆病といった相反するものを総合した人間といえるだろう。徹底して多くの人に嫌われる一方、また、多くの人に徹底して愛された男である。

と本書の「はじめに」と題された文章の中で書いています。

先に述べた『盤上の向日葵』という作品に登場する真剣師が小池重明をモデルにしている人物です。著者の柚月裕子自身が本書『真剣師小池重明』を読みこの本を書いたと言っています。

そんな、一個の人間として社会生活を満足に営むことのできない性格破綻者と言えそうな小池重明という人間を、晩年の小池重明をよく知る著者が、小池重明本人の手記などをも引用しながら、克明に暴き出しているのが本書です。相当なインパクトを持った評伝です。

本書のようなギャンブルに生きる人物を描いた作品としては、柚月裕子も読んだと書いていましたが、阿佐田哲也の『麻雀放浪記』(全四巻)という作品があります。タイトルの通り麻雀をテーマにした作品で、文章中に麻雀牌の図柄を織り込んだ小説でした。

破滅的ではありますが、主人公の成長譚としてどこか青春小説のような側面も持ったピカレスク小説であり、麻雀にのめり込んだ学生であった私や友人はこの小説をむさぼり読んだ記憶があります。

ちなみに、この『麻雀放浪記』は真田博之主演で映画化もされ、監督がイラストレーターの和田誠だということでも話題になりました。また、いろいろな漫画家によるコミック化も為されているようです。

ついでに言うと、柚月裕子の文章にも出てきましたが、『聖の青春』という作品をよく目にします。早逝した天才棋士村山聖の生涯を描いた作品だそうで、松山ケンイチ主演で映画化もされました。かなり評価の高い作品らしいので、近いうちに読んでみようと思います。この作品は山本おさむにより漫画化もされています。