大西 将太郎

地元東大阪市の布施ラグビースクールでラグビーを始め、啓光学園高3年で全国高校大会準優勝。高校日本代表では主将を務め、スコットランド遠征全勝の快挙を達成。ジャパンラグビートップリーグ(リーグ戦)は通算143試合に出場。2007〜08シーズンは「ベスト15」、「得点王」、「ベストキッカー賞」の三冠に輝く。日本代表には同志社大4年時(2000年)に初選出、以降、2008年のサモア戦まで通算33キャップ(試合)に出場。2007年ワールドカップフランス大会のカナダ戦では終了直前に同点ゴールを決め、12-12と引き分けながらも日本代表のワールドカップ連敗記録を13で止めた。 2016年現役引退。現在はJSPORTSやWOWOWのラグビー解説者として、また2019年ラグビーワールドカップの認知活動および、ラグビーの普及活動のため全国をまわっている。(Amazon「著者について」より)

ラグビーは3つのルールで熱狂できる

ラグビー観戦で覚えるべきルールは3つだけ。
あとは審判の“手”に注目していればだいたいわかる。
ゲームの流れを理解しちょっとした観方を知るだけで、
80分間はきっと映画より楽しい時間になるだろう。
日本代表として活躍し(2007年のワールドカップで奇跡の同点ゴールを決めたレジェンド)、
現在はわかりやすい解説が評判の大西将太郎氏による、あたらしいラグビー観戦ガイド。
初心者はギモンがスッキリ、コアファンも目からウロコの視点が満載。
この1冊で日本開催のワールドカップ観戦準備は万端だ!(「内容紹介」より)

 

本書はもとラグビー日本代表の大西将太郎氏が、わかりにくいというラグビーのルールを初心者にも理解できるように解説した本です。

競技場やテレビ桟敷でのラグビーの試合観戦がこれまで以上に楽しくなること間違いなしの本であり、簡単に読み終えることができますので、是非読んでほしい一冊です。

本書は家人のために借りてきた本でしたが、ラグビー経験者の私もそれなりの面白さをもって読むことができました。経験者とはいってもほんの入り口に立っただけの人間にはそれなりに読みごたえがあったのです。

 

もうすぐラグビーワールドカップ2019も終わりを迎えようとしています。

わが日本代表は決勝トーナメントへと進みましたが、残念ながら南アフリカの強靭な壁を破ることはできず、試合をさせてもらえませんでした。

しかしながら、今回の日本代表の魂のこもった戦いぶりは私たちの心に深く刻まれ、決して忘れ去られることはないでしょう。

 

ただ、皆が言うように日本ラグビーにとってはこれからが正念場であり、このラグビー人気を一過性のものにしてはいけません。

そうした考えのもと、ラグビーのプロ化の話もあり、日本ラグビー協会の清宮副会長は、2021年からスタートする「新リーグ構想」をぶち上げたそうです。トップ選手の年俸は一億円を超えたいとの発言もあったと言います。

たくさんの人たちがラグビーの普及に情熱を燃やしています。

本書の著者である大西将太郎氏もその一人であり、上記の清宮福会長の言葉も本書の最後に書いてあったものです。

 

本書は、ラグビーは素人のライターの福田という人物を相手に説明するという形式で、非常にわかりやすく書いてあります。

タイトルには「ラグビーは3つのルールで熱狂できる」と極端と思えそうな言葉を書いてあります。「スローフォワード」「ノックオン」「オフサイド」の三つが分かればいいというのです。

スローフォワード」とは、ボールを前に投げてはいけない、
ノックオン」とは、ボールを前方に落としてはいけない、
オフサイド」とは、ボールより前にいる人はプレーできない、ということです。

この三つの基本を押さえておけばあとは流れを理解すればいいと書いてあります。

 

ラグビーはボールを相手陣内へ運ぶことを目指す単純なスポーツです。

そして、ボールを前に投げてはならず、ボールより前でプレイしてはならない、という大前提があります。その大前提のもとに、ボールを前に落とすことも駄目で、上記の三つのルールが基本になるのです。

他のメンバーにボールを渡すには、真横、もしくは後ろへ投げるしかキックすることしかできず、そのボール運びをストップさせるためにタックルすることになります。そこにラグビーの醍醐味が生まれます。

 

そうした基本の中で、上記の三つの点さえ覚えておけば、細かなルールはわからなくても十分に試合を楽しむことはできます。後の細かなルールは試合をみて、解説を聞いておけば自然に覚えてしまいます。

細かなルールの多くは上記の三つのルールから派生したものであるし、他は危険防止の観点から定められたルールです。

極端なことを言うと、ラグビー経験者であっても細かなルールはわからず、試合を見ていくなかで覚えています。

というのも、ラグビーのルールは常に変化しているのです。

本書はラグビーに関しての細かなエピソードを挟みながら、上記の三つのルールをもとに結果的に難しいと言われる細かなルールも説明してあります。

 

本書の一番の見どころは、試合の流れ、高度なプレイ判断など、ちょっとラグビーをかじったくらいの経験者でも意外に思うほどの情報を盛り込んであるところです。

それは、トッププレーヤーだけが見ることができる世界であり、知識だと思われます。

そうした試合の全体を俯瞰してみるべきポイントを解説してあるところが素晴らしいと思うのです。

 

今後のラグビーの発展を願いながらもラグビーのすそ野を広げようとされている著者らの意気込みもまた伝わってきます。

ラグビーワールドカップ2019ももうすぐ終わろうとしていますが、今後ラグビーの試合を楽しむためにも、軽く読める本書はおすすめです。

 

ラグビーに関する小説などの情報は下記にまとめてあります。よかったら眺めてみてください。

廣瀬 俊朗

ポジション SO WTB
生年月日(年齢) 1981/10/17(38才)
出身地 大阪府
身長 173cm
体重 82kg
出身校・チーム歴 北野高校 – 慶應義塾大学
キャップ 28
廣瀬俊朗 選手プロフィール|ジャパンラグビートップリーグ公式サイト : 参照 )

BIOGRAPHY
2012年の春、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが、自らの就任と共にキャプテンに指名したのが廣瀬俊朗だった。メンバー発表の記者会見では、第一声で「驚きましたか?僕も驚きました」とコメント。以降、過去4年間、日本代表と無縁だった30歳のキャプテンとして、チームの船出に抜群のリーダーシップを発揮し、2013年には歴史的なウェールズ代表戦勝利の原動力となった。前キャプテン菊谷崇に抱き上げられてのガッツポーズはファンの語り草である。2014年からはリーチ マイケルにキャプテンの座を譲ったが、抜群の信頼感でチームを支えている。大阪府吹田市で生まれ、5歳からラグビースクールへ通い、学校のクラブではサッカー、バスケットボールも経験、ピアノの先生をしていた母親の影響でバイオリン教室にも通った。文武両道の人で、進学校の北野高校から慶應義塾大学理工学部機械工学科に進学。高校、大学、東芝ほか、高校日本代表など選抜チームでもキャプテンを務めている。愛称「トシ」( 廣瀬俊朗|選手プロフィール|日本ラグビーフットボール協会 : 参照 )

 

ラグビーワールドカップ2019での日本代表の活躍が日本中を沸かせてますが、その立役者の一人として廣瀬俊朗氏お名前が挙げられると思います。

ラグビーワールドカップ2019の開催に先立ち 池井戸潤の『ノーサイド・ゲーム』という作品を原作とする同名のテレビドラマが放映されました。

そこに重要な役どころで参加していたのが廣瀬俊朗氏であり、元日本代表キャプテンだったという経歴が一気にクローズアップされたのです。

 

廣瀬俊朗氏は、他の名前の出ない数多くのスタッフと共に、ラグビーワールドカップ2019を成功させるべく努力されているところです。

なんのために勝つのか。

リーダーがすべきことは何か、真のリーダーシップとは何か―高校、大学、社会人、そして日本代表の主将を務めた著者が明かすチームをひとつにまとめる秘訣とは。エディージャパンの4年間、さらにはW杯での躍進の裏側まですべてを書いた一冊!(「BOOK」データベースより)

 

本書は、ラグビー日本代表キャプテンであった廣瀬俊朗氏が、そのキャプテンシー、つまりはリーダーシップについての思いを書いた作品です。

 

日本で開催されているラグビーワールドカップ2019での日本代表の成績はというと、本稿を書いている時点(2019年10月19日)で決勝トーナメント出場が決まっています。

ロシア、アイルランド、サモア、スコットランドと強豪チームを打ち破っての決勝進出です。皆さんがいろんなところで言っているように、全く信じられないことで、歓喜に打ち震えている我が家です。

 

そんな日本代表の快進撃も、もとはラグビーワールドカップ2015の南アフリカ戦での勝利から始まったものでした。その時に日本代表チームのキャプテンをまかされていたのが本書の著者廣瀬俊朗氏です。

慶応大学や東芝ブレイブルーパス、そして日本代表ラグビーチームのキャプテンと、常にラグビーというスポーツの中心にいて、プレーは勿論、そのたぐいまれなるキャプテンシーを発揮してきた人物です。

そんな廣瀬俊朗氏のキャプテンとしての心構え、信条を余すところなく述べたのが本書であり、行ってみれば彼の名言集の集大成ともいうべき本に仕上がっています。

 

ところで、先日テレビを見ていたらとある番組で元大阪府知事だった弁護士の橋下徹氏が若者に対して「燃焼」という言葉を述べていました。

自分の人生の時々において「燃焼」してきたと断言できるのであれば、その人は十分な人生だと言えるのではないかというのです。

私はこの橋本徹という人物は決して認めるわけではないのですが、この人のこの言葉だけは異論がありません。「燃焼」してきたとは言えない自分には非常に刺さる言葉でした。

ちなみに、この橋本徹を言う人物も高校時代には日本選抜に選ばれているラガーマンです。

 

本書の廣瀬俊朗氏の言葉も同様なことが言えます。

この人の努力は半端なものではありません。いずれの時代でもキャプテンを任された以上はそのキャプテンとしてチームをまとめていくために必要なことを考え、それを実行し、仲間との意思疎通をはかり、それをまとめ上げていっています。

2015年のラグビーワールドカップのときは結局試合には一試合も出ることはかなわなかったのですが、それでもなお悔しさを押し隠し、裏方としてチームのために尽くしたと言います。

 

この人の名は大学時代からラグビーの試合を見るとしょっちゅう聞いていましたので知ってはいました。

ところが、先般放映された 池井戸潤の『ノーサイド・ゲーム』という作品を原作とするという同名のタイトルを有するドラマで結構重要な役で出演しているではありませんか。

驚きました。その後人気を博した廣瀬俊朗氏はラグビーの解説などで頻繁にテレビで見ることになります。

 

本書を読み、自分の人生と比してあまりの違いに打ちのめされたものです。人生の結果ではなく、人生に対する人としての態度の違いです。

肝心なところで安易な道に流れ、易きを選択してきた自分との差はあまりに異なるものでした。ほとんどの人は同じ感想をを抱くのではないでしょうか。

どうしても人は楽な道を選びます。その結果、人を羨み、自分の運の悪さを嘆くことになります。

 

本書で生きている廣瀬俊朗氏は常に挑戦の人生を歩んでいます。困難に挑戦し、それを克服し自らの糧として人間的にも大きく成長しています。

「逃げたら、同じ壁」だと彼は言います。「大事なのは、同じ失敗を繰り返さないことである。」とも言っています。

廣瀬俊朗氏が素晴らしいところは、こうした言葉を実践してきていることです。自ら挑戦し、それを乗り越えた上でこれらの言葉を発しているのです。

私はこうした本をあまり読みません。しかし、ラグビーに関して第一線で実績を残してきた人の言葉は重みがあります。

決してうまい文章ではありません。でも、これからの若い人にぜひ読んでもらいたい本です。

 

ラグビーをテーマにした小説に関しては下記コラムにも書いています。

 

良かったら参照してみてください。

ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実

1966年『リボルバー』から1969年『アビイ・ロード』まで、ビートルズのレコーディング現場にいた唯一のエンジニアが語る、ファブ・フォー、創作の秘密の全貌。(「BOOK」データベースより)

 

本書はザ・ビートルズのレコード制作の現場にいた一人のエンジニアの眼を通してみた、ザ・ビートルズの四人の姿を客観的に記した貴重な作品です。

筆者のジェフ・エメリックが参加したザ・ビートルズのアルバムの、1966年の「リボルバー」から1969年の「アビイ・ロード」に至るまでのレコーディング風景を主に書いてあります。

 

 

ほとんどの人にとって、青春時代を語るとき、「ザ・ビートルズ」は必須の話題でしょう。私にとっても勿論、中学時代から高校時代の数年間、そしてそれ以降を語るうえでは欠かせないグループです。

私の高校時代は、なかなかチューニングの合わないニッポン放送のオールナイトニッポンのラジオ放送を聞き、カレッジフォークを聞いていました。決して欧米のロックンロールではなかったのです。

しかし多くの人と同じく、映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』や『ヘルプ!4人はアイドル』などのザ・ビートルズの映画に影響され、私も遅まきながら彼らの歌声に魅せられていったのでした。

その後は、ラグビー仲間で熱狂的と言ってもいいザ・ビートルズファンの友人の影響もあり、私も人一倍のファンとなったのです。

こうした思い出は、当時のザ・ビートルズファンであれば誰でも語ることができるでしょう。

 

 

本書は、当然ですが、あくまでジェフ・エメリックというエンジニア個人の眼を通してみたザ・ビートルズやその周りの人物や出来事を書き記したドキュメンタリー作品です。その点を意識しながら読めばという前提付きですが、かなり面白い作品だったと思います。

また、総頁数は七百頁近くにもなる大部の本ですので、それなりの時間をとっておかなければ読み通せないでしょう。

筆者の主観的作品だとの限定を付けたのは、登場する人物についての評価がこれまで私が見聞きしてきた評価とは異なる部分が少なからずあるからです。

 

本書ではザ・ビートルズの四人の他に多くの人物が登場しますが、そのうち音楽プロデューサーであったジョージ・マーティンやマネージャーのブライアン・エプスタインなど、全くの音楽素人でミーハーにすぎない私でも聞いたことがある人もいます。

そして私は、ザ・ビートルズの成功は上記のジョージ・マーティンやブライアン・エプスタインの力がかなり大きかった、ということを当然のごとく聞かされていました。

しかし、本書で描かれるこの二人は決してそうではありません。筆者によれば、ジョージ・マーティンは目立ちたがり屋であり、ブライアン・エプスタインは得体のしれない人物だと、一言で言えばそうなります。

勿論、二人の音楽的、またマネージメントの手腕はそれぞれに認め、評価はしてあるのですが、特に音作りに関しては自分、つまりは筆者のジェフ・エメリックの功績が大だということを再三にわたり書いてあります。

音楽エンジニアという職業の内容を知らず、筆者の書いている技術的なことはほとんど理解できない私ですから、彼らの仕事面に対する筆者による評価が正当なものかどうかはわかりません。

ただ、筆者がグラミー賞などの客観的な賞を何度も受賞されていることからも、技術面では間違っていることは書いてないのでしょう。でも、人間性についてはいかがなものか、とは感じました。

 

ザ・ビートルズの四人のメンバーに対する筆者のジェフ・エメリックの評価はかなり偏っているのではないかという印象があるのです。

例えば、リンゴ・スターやジョージ・ハリスンは、本書の初めのほうでは他の二人の影に隠れた自信のない人物として書いてあります。

しかし、リンゴはザ・ビートルズにもと居たドラマーに代わってリズムセクション強化のために選ばれたという話を聞いていたので、きちんとしたリズムを刻めないというリンゴに対する評価は意外なものでした。

また、ジョージにしてもアルバム「サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の作成の項で、「ジョージ・ハリスンの曲はジョンやポールの曲に比べてランクが落ちるというのが共通の認識だった」とさえ書いてあるのです。

確かに地味ではあったかもしれませんが、本書で書かれているほどに自信がなかったかというと、これまで聞いていた印象とは異なります。

 

筆者は、この四人の中ではポールと一番仲が良かったらしくポールのことは否定的な評価は書いてありません。というよりも、人間的にも音楽家としても高評価です。

反対にジョンに対しては辛らつです。と言っても、ジョンに対しての悪意を感じるわけではありません。ドラッグの影響もあってか、単純に感情の起伏が激しく、時には他人に対し毒舌を吐き、攻撃的になると、筆者が感じたことを客観的な事実として言っているだけです。

 

本書の著者はザ・ビートルズのレコーディングのエンジニアだった人です。と言ってもレコーディング・エンジニアとはどういう職業なのか、私も含め理解できる人はそうはいないと思います。

レコーディング・エンジニアとは「レコード、CDなどの音楽録音物の制作に従事し、音響の調整と録音などを行う技術者の呼称」( ウィキペディア : 参照 )を言います。

より詳しくは、上記ウィキペディアの該当項目を参照してください。多分、あまり理解できないと思います。少なくとも私はそうでした。

 

ジェフ・エメリックの仕事ぶりに関しては、現代のデジタル音楽で簡単に作り出せる様々な音色を、当時の機械を駆使して演者の要求する音色を作り出しているさまはよくわかりました。

他の人では無しえない音作りをしていたと思われます。

そうした音楽エンジニアである筆者が書いた本なので、本書はレコーディング上の技術的な事柄を中心に書いてあります。本当はそうしたレコーディング上の技術的な事柄を知らないと本書の面白味というか、醍醐味は半減するのかもしれません。

しかし、そうしたことを知らないでも十分に楽しめる本です。事実、本書に書いてある技術的な事柄のほとんどは私は理解できていませんが、四人の人間性など非常に高い関心をもって読み終えることができました。

 

様々なエピソードが述べられた末に、「ホワイト・アルバム」作成の頃、オノ・ヨーコが登場します。既に仲の良い四人組ではなくなっていたザ・ビートルズは、ヨーコの登場を機に更に機能不全に陥っていくのです。

 

 

そして、「アビイ・ロード」を最後にザ・ビートルズは解散してしまいます。ここらの描写は読んでいて寂しいばかりです。

それでも、ジェフ・エメリックは、ザ・ビートルズ解散の原因は「ぼくはヨーコが原因だったとも思わない。・・・アーティストとしての方向性が、もはや折り合いをつけられないほどバラバラになってしまっていたことだと思っていた。」と書いています。

 

 

この「アビイ・ロード」というアルバムのタイトルの決まり方に関しては、ジャケット撮影のためにチベットまで行くことに難色を示したリンゴの、「外で写真を撮って、『アビイ・ロード』というタイトルにすればいい」という一言で決まったと書いてあります。

こうした小さなエピソードの積み重ねは楽しいものですが、本書はエンジニアであるジェフ・エメリックの音作りの苦労に重きが置かれていて、裏話はその間の挿話のようになっています。

それでもなお、本書はザ・ビートルズファンとしては彼らの生きた姿を教えてくれる貴重な本です。

 

その時に対象となっているアルバムを聞きながらの読書は一段と楽しいものでもありました。しかし、心が離れていく彼らの足跡をたどることでもある読書でもあり、その面では寂しいものでもありました。

それと同時に、音楽に携わる人たちの音に対する感覚の鋭さに、あらためて驚かされる作品でもありました。

とはいえ、ファンとして一読していい作品だと思います。楽しいひと時でした。

J・エメリック

イギリスの音楽プロデューサーおよびレコーディング・エンジニア。彼のキャリアで最も有名な作品には、ビートルズのアルバム『リボルバー』、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』、『ザ・ビートルズ』 (ホワイト・アルバム)、『アビイ・ロード』と、ポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム『バンド・オン・ザ・ラン』がある。( ウィキペディア : 参照 )

 

ザ・ビートルズに関する『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実』の作者。

倉本 聰

倉本聰(クラモト ソウ) 脚本家・劇作家・演出家。1935年1月1日生まれ、東京都出身。東京大学文学部卒業。1959年にニッポン放送に入社。退社後独立し脚本家として活動する。1984年より『富良野塾』を主宰し、俳優や脚本家を養成。2000年に紫綬褒章を受章。代表作は『北の国から』シリーズ、『優しい時間』、『風のガーデン』など。( 倉本聰のプロフィール | ORICON NEWS : 参照 )

ドラマへの遺言

『やすらぎの郷』、『北の国から』、『前略おふくろ様』…テレビドラマ界に数々の金字塔を打ち立てた巨人、脚本家・倉本聰が83歳で書き上げた最新作『やすらぎの刻~道』まですべてを語り尽くす。大河ドラマ降板の真相は?あの大物俳優たちとの関係は?テレビ局内の生々しいエピソード、骨太なドラマ論、人生観―愛弟子だからこそ聞き出せた破天荒な15の「遺言」。(「BOOK」データベースより)

 

本書は、脚本家倉本聰を師匠と仰ぐ上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)の碓井広義による「日刊ゲンダイ」に連載されたインタビューをもとに編集された作品です。

 

私の机の面の前の本棚には『北の人名録』他四冊の倉本聰のエッセイ集が四冊並んでいます。三十年以上も前に亡くなった父の本ですが、これらの本がとても素晴らしいのです。

それからも倉本聰のエッセイは何冊かを読んだものですが、ここ十数年は読んでいませんでした、

 

 

もともと、『前略おふくろ様』というドラマにはまり、倉本聰という名前を知ったのでした。その後あの『北の国から』にどっぷりとつかり、『昨日、悲別で』『ライスカレー』と見続けました。

 

 

その後倉本聰の名はあまり聞かずにいたところ、『優しい時間』や『拝啓、父上様』などが続けて放映され、楽しみな時間を持てたものです。

 

 

あまりテレビドラマは見ない私が珍しく見ていた『2丁目3番地』や東芝日曜劇場の『うちのホンカン』シリーズが倉本聰脚本の作品だと知ったのはいつのことだったでしょう。

テレビで倉本聰のインタビューやドキュメンタリーなどがあれば可能な限りは見たつもりですが、ユーモラスな人でありながらも、仕事に関しては気難しい脚本家だとの印象ばかりが先に立っていました。

ただ、その気難しさは、本書を読む限りでは創作される作品に対する職人的な厳しさの裏返しであったようです。

 

従来から、例えば勝新太郎という役者が自分の演技論を主張して黒沢明監督と衝突したなどという話を聞くたびに、一本のドラマや映画は誰の主張や意見が主になるのだろうかと疑問に思っていたものでした。

脚本があって、それをもとに演出をつける演出家、監督がいて、役者がいる。そのそれぞれが持つ表現者としての主張をどのように折り合いをつけているのでしょうか。

本書では倉本聰なりの答えの一つとして、台詞の末尾を変えられるとその台詞自体の意味も変わってくるから本読みから参加する、と言っておられます。ですから、寺尾聡は勝手に台詞を変えたのでもう二度と使わない、とも書いてありました。

つまり、脚本家としての意図を台本読みの段階で説明するということで、それは演出家と演者への注文ということになります。だから、NHKの大河ドラマでの衝突などの事件も起きるのでしょう。

その意味では、ビートたけしも認めないというのです。ビートたけしは芸人であり、瞬発力こそ命の芸人さんでしょう。倉本聰のように台詞を大事にする脚本家とは合わないというのは分かる気もします。

 

以上のようなことは、本書のごく一部です。倉本聰の仕事に対する姿勢がよくわかる一冊になっています。

とくに、現在進行形で進んでいる『やすらぎの郷』に関してもかなりのページ数を費やしてあります。『やすらぎの郷』の裏話満載ということですね。

このドラマももちろん見ているのですが、本書を読んでからはさらに舞台裏をのぞき、見知った気にもなり、より面白く見ています。

 

 

このように、今のテレビドラマ界に対する主張満載の本書は、もちろん倉本聰という一人の脚本家の主観的な意見を取り上げたインタビュー作品です。

まして、インタビュアーも倉本聰の弟子を自任する碓井広義という人物ですから、倉本聰を客観的に見れているかといわれればそうではないというしかないでしょう。

しかし、本書は倉本聰という人物を分析する本でもないし、単に倉本聰という人物を紹介したいというインタビュアーの意図のもとに書かれた本です。

そしてその意図は十分に満たされていると思います。

私のような倉本ファンにとってはもってこいの一冊でした。

団 鬼六

(1931-2011)1931年9月1日、滋賀県生まれ。関西学院大学卒。様々な職業を経たのち、1957年、文藝春秋のオール新人杯に入選し、執筆活動に入る。「奇譚クラブ」に投稿した『花と蛇』が評判を呼び、以後SM小説の第一人者となる。他の著書に『真剣師 小池重明』『美少年』『檸檬夫人』『最後の愛人』『往きて還らず』など多数。食道ガンにより2011年5月6日没。享年79。本名、黒岩幸彦。( 団鬼六 | 著者プロフィール | 新潮社 : 参照 )

いわゆる官能小説の書き手であることは知っていましたが、サド・マゾ作品を書かれる作家さんだということで、一冊も読んだことはありませんでした。

1989年に一度断筆宣言をされたそうですが、1995年に『真剣師・小池重明』という作品を書かれ、復活されたそうです。

今回、柚月裕子の『盤上の向日葵』という作品を読むにあたり、小池重明という人を調べていく中で団鬼六の『真剣師・小池重明』という本にであい、読むことになりました。

真剣師 小池重明

羽生善治をして「不思議な魅力を感じた」「どう評価していいのかわからない」と言わしめた、不世出の天才棋士・小池重明の波乱に満ちた生涯―。「小池重明の遺書」、「小池重明名勝負棋譜」収録。 –このテキストは、単行本版に関連付けられています。 (「BOOK」データベースより)

本書は、柚月裕子の『盤上の向日葵』という将棋を題材にしたミステリーを読むにあたり、真剣師の小池重明という人物のことを調べてから読んだ方がいいという焼酎太郎さんのお勧めに従って見つけた作品です。

真剣師というのは、簡単に言えば「テーブルゲームの賭博によって生計を立てている者」のことであり、ここでは賭け将棋で生きている人物のことになります。

なぜそのようなギャンブラーが本の題材になるのかというと、一冊の本にするに値するほどの、それだけ凄まじい人生を送った人物であったということです。

事実、小池重明という人物の将棋の強さは強烈なものがあったようで、連続二期アマ名人となり、プロ棋士を相手にしてもことごとく勝ち続けたといいます。プロ棋士への道も開きかけたのですが、小池の寸借詐欺事件や女性問題、暴力事件などの素行の悪さから日本将棋連盟により却下されてしまったそうです。

しかしながら、生来人当たりは良く、どこか憎めない性格だったそうですから、恩人を裏切っても許してもらえ、再度その恩人を裏切ってもまた別な支援者が現れるなど、愛される側面もあったと思われます。そういった性格だからこそ女性にも好かれたのであり、人妻との駆け落ち事件を三回も起こすことになったのでしょう。

この点については、著者の団鬼六自身が小池重明について

この男には不可思議な魅力があった。人間の不純性と純粋性を兼ね合わせていて、つまり、その相対性の中に彷徨をくり返していた男である。善意と悪意、潔癖と汚濁、大胆と小心、結城と臆病といった相反するものを総合した人間といえるだろう。徹底して多くの人に嫌われる一方、また、多くの人に徹底して愛された男である。

と本書の「はじめに」と題された文章の中で書いています。

先に述べた『盤上の向日葵』という作品に登場する真剣師が小池重明をモデルにしている人物です。著者の柚月裕子自身が本書『真剣師小池重明』を読みこの本を書いたと言っています。

そんな、一個の人間として社会生活を満足に営むことのできない性格破綻者と言えそうな小池重明という人間を、晩年の小池重明をよく知る著者が、小池重明本人の手記などをも引用しながら、克明に暴き出しているのが本書です。相当なインパクトを持った評伝です。

本書のようなギャンブルに生きる人物を描いた作品としては、柚月裕子も読んだと書いていましたが、阿佐田哲也の『麻雀放浪記』(全四巻)という作品があります。タイトルの通り麻雀をテーマにした作品で、文章中に麻雀牌の図柄を織り込んだ小説でした。

破滅的ではありますが、主人公の成長譚としてどこか青春小説のような側面も持ったピカレスク小説であり、麻雀にのめり込んだ学生であった私や友人はこの小説をむさぼり読んだ記憶があります。

ちなみに、この『麻雀放浪記』は真田博之主演で映画化もされ、監督がイラストレーターの和田誠だということでも話題になりました。また、いろいろな漫画家によるコミック化も為されているようです。

ついでに言うと、柚月裕子の文章にも出てきましたが、『聖の青春』という作品をよく目にします。早逝した天才棋士村山聖の生涯を描いた作品だそうで、松山ケンイチ主演で映画化もされました。かなり評価の高い作品らしいので、近いうちに読んでみようと思います。この作品は山本おさむにより漫画化もされています。