猫は忘れない

知り合いのスナックママ、ミーナから、旅行中の飼い猫の世話を頼まれた“俺”は、餌やりに訪れたマンションで、変わり果てた姿となった彼女を発見する。行きがかりから猫のナナを引き取り、犯人捜しを始めた“俺”は、彼女の過去を遡るうちに意外な人物と遭遇、事件は予想外の方向へと進展するが…猫との暮らしにとまどいながらも、“俺”はミーナの仇を取るためにススキノの街を走り抜ける。ススキノ探偵シリーズ第12作。(「BOOK」データベースより)

やはり出版年が新しい作品の方が面白い、と言うより作品がきちんと纏まっている気がする。

知り合いのスナックママ、ミーナから、旅行中の飼い猫の世話を頼まれた“俺”は、餌やりに訪れたマンションで、変わり果てた姿となった彼女を発見する。行きがかりから猫のナナを引き取り、犯人捜しを始めた“俺”は、彼女の過去を遡るうちに意外な人物と遭遇、事件は予想外の方向へと進展するが…猫との暮らしにとまどいながらも、“俺”はミーナの仇を取るためにススキノの街を走り抜ける。ススキノ探偵シリーズ第12作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第十一弾となるハードボイルド小説です。

 

やはり出版年が新しい作品の方が面白い、と言うより作品がきちんとまとまっている気がする。

半端者 – はんぱもん –

授業にも出ないで昼間から酒を飲み、思い通りにならない現実に悩みながらも、また酒を飲む。ひょんなことから知り合った謎のフィリピン女性、フェ・マリーンと恋に落ちた大学生の“俺”は、行方不明となった彼女を捜して、ススキノの街をひたすら走り回る。若き日の“俺”、高田、そして桐原の人生が交錯し、熱く語らい、ときに本気で殴り合う。デビュー作『探偵はバーにいる』の、甘く切ない前日譚が文庫オリジナルで登場。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第十弾となるハードボイルド小説です。

 

本書の刊行が2011年3月ですから、やはり、作品を重ねるにつれて面白さも増してくるように思えます。

確かに、中には後で出版されたから面白いとはいえない作品もあります。しかし、基本的に経験は大きいのではないでしょうか。

本作品も第一作に比べると格段に練れている印象を受けます。でも、もしかしたら、内容がシリーズ第一作よりも前の時代設定であり、主人公の青春記的な側面も持っているのでそう思うのかもしれませんが。

ただ、フィリピーナが突然に主人公の「俺」に好意を寄せるなど唐突と言えなくもない点もありますが、そうした事柄は殆ど気になりません。それよりも、後々のこのシリーズの重要メンバーの高田や桐原との出会いなどが描かれていて、そちらの方に関心が高まりました。

旧友は春に帰る

「…ただ、お願い。助けて」突然送られてきたモンローからのメッセージは、“俺”の眠気を覚ますのに充分なものだった。どうしても事情を話そうとしない彼女を夕張のホテルから助け出し、無事に本州へと逃がしてやった直後から、“俺”の周りを怪しげな輩がうろつき始める。正体不明のトラブルに巻き込まれ、地元やくざに追われるはめになった“俺”は、ひとり調査を開始するが…旧友との再会、そして別れが哀切を誘う感動作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第九弾となるハードボイルド小説です。

 

少々ストーリーに無理がある感じがしないでもなかったのと、モンローの位置付けが若干分かりにくかった。

探偵、暁に走る

地下鉄で乗客とトラブルになっていたところを救ったのがきっかけで、“俺”はイラストレーターの近藤と飲み友だちになった。その近藤が何者かに刺されて死んだ。友人の無念を晴らすべく、ひとり調査を開始した“俺”の前に、振り込め詐欺グループ、闇金融、得体の知れない産廃業者らの存在が…絶体絶命の窮地に陥りながらも、“俺”は友の仇を討つために札幌の街を走り回る。好調シリーズ、長篇第8作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第七弾となるハードボイルド小説です。

 

ススキノ探偵シリーズはこの本から読み始めました。というか、東直己という作家自体、本書で知った次第です。

この本を読んだときのブログに、「これは面白い。私の感性にピッタリとはまった作品でした。こういうことは滅多にないから、たまにあるととても嬉しい。」という文章から始まる一文を書いていました。以下そのままです。

そもそもは、大泉洋主演の映画「探偵はBARにいる」がそこそこ面白かったので、原作でも読んでみようか、という軽いノリでした。例によって、図書館で丁度「東 直己」という著者名があったので即借りた次第です。500頁を越える分量なので少々分厚い、と思ったのだけど、一気に読んでしまいました。

まさか主人公が50歳のおっさんとは思ってもみなかったけど、読み終えてみると大人のハードボイルドでした。

 

 

北方謙三の『ブラディ・ドール シリーズ 』や、『ブラディ・ドール シリーズ 』に統合されたらしい『街シリーズ』のちょっとキザでかっこいい男たちとはまた違います。

同じようにかっこいい男ではあるのだけれど、キザではありません。軽妙な会話と言いまわしは読んでいて非常に小気味よく、早速次の作品を読まなければ、と思わされました。

 

 

登場人物も個性的な人物が描かれており、その夫々が魅力的です。

本『ススキノ探偵シリーズ』一作目の『探偵はバーにいる』から順に読んで、各登場人物の背景を知りたいと、そう思わせる作品です。

ハードボイルドが好きな人なら読むべきですし、好きでない人も多分、このシリーズは好きになると思います。

この作家を知らなかった私が恥かしい。

ライト・グッドバイ

馴染みの退職刑事種谷からの突然の連絡。呼び出しの応じた“俺”を待っていたのは「殺人容疑者と親友になれ」という頼みだった。未解決のままの女子高生行方不明事件の証拠を見つけるため、容疑の濃厚な男の家に上がるまでになれ、ということらしい。“俺”は、バーでの偶然の出会いを装い、男に近づくことを企む。そしてそれは生涯最低の冬の幕開けでもあった。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第七弾となるハードボイルド小説です。

 

今回の物語の対象となる男がかなりいやらしい男として描かれていて、感情移入しにくい物語でした。

物語の核となる人物が問題で、筋立ても少々無理が感じられ、このシリーズの中では低評価の一冊という印象でした。

 

こうして見ると、最初に読んだ「探偵、暁に走る」が一番面白く読めた本のような気がします。

核となる人物のキャラクターもしっかりと書き込まれていて、主人公が関わっているその筋立てもまったく無理が感じられません。

比べてはいけないのかもしれないけれど、それに比べてこの一冊は・・・、とどうしても思ってしまいます。

駆けてきた少女

ちょっとした行き違いからガキに腹を刺されて入院した“俺”は、見舞いにきた自称「霊能力者」こと濱谷のオバチャンの依頼で、女子高生の家庭調査を引き受けるハメに。軽い気持ちで手を付けたこの一件と、自分を刺した犯人探しとが交錯した時、すでに札幌の闇に蠢く巨大な陰謀に巻き込まれていることに、“俺”は気づくのだった。いまどきの高校生に翻弄されながらも、ススキノの中年便利屋が奮闘する軽快ハードボイルド。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第六弾となるハードボイルド小説です。

 

本書の物語の別な側面として描かれている作品として「ススキノ・ハーフボイルド」があります。

本書の話が動き出すきっかけとなる存在でもある高校生の松井省吾が主人公である作品なのですが、この高校生はススキノ探偵の「俺」の投影でもあるようで、これまたなかなかに面白い作品です。

この作品には他のシリーズ内の作品や探偵畝原シリーズの共通の登場人物も顔を見せたり、東直巳ワールドが展開します。

探偵は吹雪の果てに

ちんぴらに袋叩きにされて、“俺”は入院した。そこで偶然、病院の付添婦をしている昔の恋人と再会。彼女からの依頼で雪の田舎町まで一通の手紙を届けることになった探偵だが、町に着くなり身辺に不審な男たちの影がちらつき始め、理由も解明できないまま町を追い出されてしまう。やくざの組長の桐原の助けを借り、再び町に舞い戻った探偵に最大の危機が!雪原を血にそめる死闘の果ての意外な結末とは?シリーズ最高傑作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の長編第五弾となるハードボイルド小説です。

 

このシリーズを今まで読んだ限りでは面白さという点では一番低いと思いました。

舞台が札幌から離れたためでしょうか。それとも自然の中での逃走や格闘など、これまでとは異なる状況設定のためでしょうか。

どこかほかの本か映画で見たようなシーンがあり、今一つ世界に入れませんでした。

探偵はひとりぼっち

みんなに愛されていたオカマのマサコちゃんが、めった打ちにされて殺された。若いころに彼と愛人同士だったという北海道選出の大物代議士が、スキャンダルを恐れて消したのではないかという噂が流れはじめる。マサコちゃんの友人だった俺は、周囲が口を閉ざすなか調査に乗りだした。やがて、身辺に怪しげな男たちが現われ、奇怪な事件が…日本推理作家協会賞受賞作家が描く、軽快なハードボイルド・シリーズ第4作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の第四弾の長編のハードボイルド小説です。

 

相変わらず物語はテンポよく進みます。

 

本書は、大泉洋主演の映画『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』の原作になっています。

 

向う端にすわった男

ある夜「俺」のところに、結婚詐欺にまつわる依頼が舞い込んだ。詐欺を仕組んだのは、元一流商社マンの伊野田という男だという。さっそく「俺」は、札幌にメディア革命を起こそうと息巻くこの男の企画会社にもぐり込んだのだが…夢見る男の不気味な犯罪を描く中篇「調子のいい奴」ほか、バーにすわった謎の男をめぐる表題作など、5篇を収録。札幌ススキノを舞台にした新感覚ハードボイルド。(「BOOK」データベースより)

 

出版年順にいけば「ススキノ探偵シリーズ」の第四弾となる作品集ですが、短編集なので番外編的な位置づけになるのでしょう。全部で五編の中・短編を収めたハードボイルド作品集です。

 

「俺」が主人公の初めての短編集です。いろんな男が登場します。

標題になっている「向う端にすわった男」では、まずは文章がこれぞハードボイルドだという雰囲気をあたりに振りまいています。そんな男が実際に居る筈もないと思いつつ、それでも<ケラー・オオハタ>では静かな店の中にキースジャレットのピアノが流れており、男はひとり静かにマティニを飲んでいるのです。

これがまた実にかっこいい。ここだけ取り出せば、北方謙三の『ブラディ・ドール シリーズ 』だといっても通るかもしれない。 そうした設定のもとで「俺」はまた悪い癖でトラブルに巻き込まれていそうな男に声をかける・・・・・。

 

 

この短編とあわせて5編の物語はやはり面白い。

 

結局、このシリーズがもっとも私の感性に合うようで、続編を読めるのはいつだろうかと、今から心待ちにしているのです。

消えた少年

学校では問題児扱いだが映画が大好きな中学生、翔一と知り合い意気投合した(俺)。ところが、翔一の親友が惨殺死体で発見され、一緒にいたはずの彼も行方不明となってしまった。変質者による誘拐か?暴力団がらみなのか?それとも、学校をも巻きこんだ障害者施設反対運動に関係があるのか?担任の教師、春子に翔一の捜索を依頼された(俺)は、彼の姿を探してススキノを疾走する!新感覚ハードボイルド長篇第三作。(「BOOK」データベースより)

 

「ススキノ探偵シリーズ」の第三弾の長編のハードボイルド小説です。

 

この作家は若者への怒りの量が多いのか、今の若者を物語のどこかで、それも結構な重要なポイントで絡ませることが多い。そしてその若者は結構なアホなのです。

現実の若者がこの作者の言うような理不尽な行いをしているのかは私にはわからない。しかし、作家という人たちは少なくとも私よりは世間を、今の若者を知っているだろうから、物語そのままではないにしろ、近しいところがあるのでしょう。

 

物語は相変わらず面白いです。