日本ホラー小説大賞を受賞した貴志祐介の同名小説を森田芳光監督が映画化。顧客・菰田の家に呼び出された生命保険会社の若槻は、そこで子どもの首吊り死体を発見する。以来、信じられない悪夢と恐怖が振り掛かり…。“角川シネマコレクション11月度”。
分類: SF小説
クリムゾンの迷宮 [コミック]
全三巻のビッグコミックスで、未読です。
新世界より [コミック]
未読です。
全七巻のコミックですが、写真の画を見る限りは原作とは全く異なるような気がします。
黒い家
若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに…。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
生命保険業界を舞台に人間の怖さを描き出す、第4回日本ホラー小説大賞を受賞した作品です。
今まで読んだホラー小説の中で一番怖かった作品かもしれません。
この作家の作品を見ているとどれも人間心裡に踏み込んで、そこから恐怖を紡ぎだしてきている感じがします。
本書などその最たるもので、いわゆるホラーで思い浮かべる超人間的、超自然的なものの存在ではなく、人間こそが一番怖いのだと心から思い知らされます。
いわゆる超自然的存在の巻き起こす恐怖をテーマとするいわゆるホラーを期待しているとかなり違います。アクション性は全くありません。その点をふまえた上で人間の抱える本質的異常性を恐る恐る覗き見してください。
大竹しのぶ主演で映画化され、大竹しのぶの演技が評判になりました。
クリムゾンの迷宮
『クリムゾンの迷宮』とは
本書『クリムゾンの迷宮』は、 2003年2月に新装丁・コレクターズアイテム版KADOKAWAから刊行され、1999年4月に角川ホラー文庫から393頁の文庫として出版された、長編のホラー小説です。
意表を突く舞台設定や異常な状況の中で生き残りをかけて戦う主人公の姿はとても面白く読んだ作品でした。
『クリムゾンの迷宮』の簡単なあらすじ
藤木はこの世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を覆う、深紅色の奇岩の連なり。ここはどこだ? 傍ら携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」(「内容紹介」より)
『クリムゾンの迷宮』の感想
本書『クリムゾンの迷宮』は、見知らぬ世界を舞台に命を懸けたゲームを強いられる、長編のホラー小説です。
状況の説明はありません。突然放り込まれた現状で、目の前にある「携帯ゲーム機」と、そこに表示された文字だけを頼りに、何か行動を起こさなければならないのです。
同時に目覚めた他の八人との間で複雑な駆け引きが始まります。
山田某の著作に似たゲーム性の強い設定ですが、こちらは私が読んだ山田某の初期の作品と異なり、格段の文章力で書かれているので非常に面白く読めました。面白い小説の書き方の前後という感じです。
シチュエーションスリラーとも言えるのではないでしょうか。ホラーと言えるかは分かりません。ホラーの定義も人それぞれですが、強いて言えば私の考える、「恐怖」をテーマとする作品、というホラーの感じとは違うと思われます。
与えられた状況をどのように乗り越えるか、の興味が尽きず、一気に読んでしまいました。面白いです。
新世界より
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。( 上巻 :「BOOK」データベースより)
町の外に出てはならない―禁を犯した子どもたちに倫理委員会の手が伸びる。記憶を操り、危険な兆候を見せた子どもを排除することで実現した見せかけの安定。外界で繁栄するグロテスクな生物の正体と、空恐ろしい伝説の真意が明らかにされるとき、「神の力」が孕む底なしの暗黒が暴れ狂いだそうとしていた。( 中巻 :「BOOK」データベースより)
夏祭りの夜に起きた大殺戮。悲鳴と鳴咽に包まれた町を後にして、選ばれし者は目的の地へと急ぐ。それが何よりも残酷であろうとも、真実に近付くために。流血で塗り固められた大地の上でもなお、人類は生き抜かなければならない。構想30年、想像力の限りを尽くして描かれた五感と魂を揺さぶる記念碑的傑作。( 下巻 :「BOOK」データベースより)
1000年後の日本のとある集落「神栖66町」を舞台にした長編のSF小説で、第29回(2008年)日本SF大賞受賞作品です。
作家の想像力の見事さを思い知らされる見事な作品で、文庫本で全三巻という大部ながら、一気に読み終えてしまうほどに引き込まれた作品でした。
1000年後の日本のとある集落「神栖66町」では、子供達は「呪力」を身につけるべく学校で訓練を受けていた。
主人公の渡辺早季は夏季キャンプで「ミノシロモドキ」から今の時代の禁断の知識を教えられる。
その後早季達は「バケネズミ」の襲撃により捉われてしまうが、「塩屋虻コロニー」のバケネズミ・スクィーラや「大雀蜂コロニー」の援軍に助けられ、無事「神栖66町」に帰りつくことができたのだった。
そして、早季達も14歳になった。
とにかくそのイマジネーションの凄さに圧倒されます。
「呪力」とは念動力のことですし、「ミノシロモドキ」とは先史文明が遺した「国立国会図書館つくば館」の端末機械であり、「バケネズミ」とはハダカデバネズミから進化したとされる生物のことです。
このようにこの通常の小説とは異なる概念が随所に出てきます。
イマジネーションの凄さと言えば、 B・オールディスの『地球の長い午後』を挙げないわけにはいきません。
この『地球の長い午後』は、太陽がその寿命を終える日も近い、遥か未来の我が地球を舞台にした物語です。植物に覆われた地球の姿の描写は驚異的で、そんな世界での少年たちの冒険が始まります。
話を本書『新世界より』に戻すと、『新世界より』はSF作品であり、世界観からすればファンタジーと分類されるかもしれません。
でも、その世界感がきちんと成立していて、読んでいて違和感がありません。勿論、探せば細かな矛盾点や論理の破たんしている個所などが見つかるのかもしれませんが、見つけようとも思はないほどに、作家の筆力で押し切られてしまいます。
読み手はその世界観に飲み込まれてしまうのです。
ただ、私のようにSFやファンタジー好きの人間にはたまらない物語ですが、そうした空想小説を好まない人には受け入れられないと思います。
また、1000頁を超える分量で、文庫本でも上、中、下の三分冊になる大長編です。ライトノベルに慣れた人にも取り付きにくいかもしれません。しかし、
一度入り込んでしまえばこの不思議な世界の虜になることでしょう。
本書とは逆の短編集ですが、少し似た雰囲気を持つ作品として上田早夕里の描く夢みる葦笛 という作品集があります。
この本は、人間の体に対する改変を中心に「異形のもの」という存在を見据えて、ホラーから恋愛小説までを描いた全十編からなる短編集であって、どことなく似ています。
でももしかしたら、同じ作者の華竜の宮という作品のほうがふさわしいのかもしれません。
25世紀の未来、地球はホットブルームと呼ばれる地殻変動による海底の隆起で、海水面が260メートル近くも隆起し、陸地を失ってしまった世界の話で、文庫本で上下二巻の本書に負けないほどの壮大な物語です。
貴志 祐介
この人はホラー作家だと思っていました。しかし、「クリムゾンの迷宮」や「新世界より」を読む限りでは確かにホラーテイストはあるものの、「恐怖」を売りにするのではなくて、その強烈なイマジネーションで構築される世界で展開される物語こそが本来の魅力だと思うようになりました。
「黒い家」の恐怖でさえも作者の想像力の強さがあってこその物語であると思うのです。
とにかく簡単に読める作家ではないのですが、一度その世界にひたるとその魅力に捉われてしまう気がします。
妖魔シリーズ
エロスとバイオレンス満載の長編の伝奇小説です。
念法を使う工藤明彦は、婚約者を殺されたことから妖魔との戦いに明け暮れることになります。相手は闇の軍団であり、クトゥルー神話に出てくる異形のものを思わせる妖魔達です。
この作者の基本はこのシリーズにあるのかもしれません。私はシリーズ中の十冊くらいしか読んでいないのですが、改めて調べてみると20冊を越えようかというシリーズになっているようです。とにかく、初期の菊池秀行作品のエロ、グロ、バイオレンスに満ちた作品でした。
途中から文体についてゆけなくなり読まなくなったのですが、少なくとも私が読んでいたころはまだ純粋に「面白い」シリーズでした。
バイオニックソルジャーシリーズ
エロスとバイオレンス満載の長編の伝奇小説です。
魔界行及び新魔界行シリーズとを合わせてバイオニックソルジャーシリーズとしています。エロスとバイオレンス満載のアダルト向け作品です。当初三部作だったのですが、その後「新・魔界行」として更に三部作が追加されました。
作品は異世界の住人を相手とするエロスとバイオレンスの満ちた小説であり、夢枕獏と同じような伝奇小説の書き手として読んでいたものです。
主人公南雲秋人は科学の力で強化されたバイオニックソルジャーであり、殺された妻や子の復讐のために、瓜生組に戦いを挑みます。
とにかく、パワーがみなぎっており、何も考えずに作品世界を楽しむだけです。理屈は要りません。変に考えると逆に読めなくなります。
この作家がブレイクするきっかけとなった作品で、この後次々とエロスとバイオレンス満載の作品を発表し続けます。
本シリーズでは魔界行三部作が「魔界行 完全版」として刊行されています。
魔界都市ブルース シリーズ
舞台は魔震後の「新宿」であり、『魔界都市〈新宿〉』や『魔界医師メフィスト』と同じ舞台の、伝奇小説です。
その新宿でせんべい屋を営みつつ人探しを業とする、究極の美貌を持つ秋せつらが主人公です。この秋せつらが妖糸を駆使して妖魔達を撃退するのです。
当初は夢枕獏と同じ匂いのする作家が同時に現れたと思い、エロスとバイオレンス満載の彼らの作品を漫画感覚で読んでいたものです。
しかしかながら、最初は少々耽美的に過ぎる、くらいに思っていた菊地秀行の作品群ですが、そのうちに文章の美文調(?)が激しくなってきて、どうにも鼻についてきました。
結局、作家の独りよがりが過ぎると感じるようになり、菊地秀行の作品自体を読まなくなってしまいました。
ちなみに、このシリーズは短編と長編が出版されており、短編はタイトルの初めに魔界都市ブルースと付くそうです。そして、2018年12月現在でも、なおシリーズとして書き継がれていることを久しぶりに調べてみて知りました。