ジェネラル・ルージュの伝説

ドラマ「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」も絶賛放送中、救命救急センター・速水医師の外伝が登場! 単行本に収録されたジェネラルの原点「ジェネラル・ルージュの伝説」に、新たに書き下ろした「疾風」と、その後の物語「残照」も収録! さらに、文庫用に大幅加筆したエッセイや、自作解説で、創作の秘密を惜しみなく明かします。巻末にはファン必見の年表&主要登場人物リスト&用語解説辞典付き。とんでもなく豪華な一冊です!(Amazon内容紹介より)

 

シリーズ外伝にあたる短編や、エッセイなど、ファンにはたまらない内容の一冊です。

 

他の場所でも書きましたが、「ジェネラル・ルージュの凱旋」と「ナイチンゲールの沈黙」と時間軸が同じなのは、もともとこの両者は同じ物語であったものを切り分けたものだそうで、時間が同時進行なの当たり前な話でした。

そういう裏話満載の海堂ワールド全開の解説本です。

 

いままで、同じ作家のひとつのシリーズで物語の世界が同じというのは、特にSFなどでは何回かお目にかかったことがあります。

しかし、同じ作家の全作品が舞台を同じくするというのは初めてでした。本人も書いていましたが、整合性を保つのはかなり難しいのではないかと思われます。

 

本書の冒頭にジェネラル・ルージュの速水の物語があります。短編であり、もう少し読みたいと思わせられる物語でした。と同時に、こうした、物語にスピードがあり、ヒーローがヒーローとして活躍する定番の話が読んでいて面白い物語になるのだと思いました。

勿論、作者の筆力、構成力あってのことなのですが。更に、その裏に人情話が絡めば言うことはありません。速水を助ける猫田のルージュに絡む話などは一番です。

海堂 尊

少し調べてみると、この人の著作は「田口・白鳥シリーズ」や「バブル三部作」などのシリーズに分けてあります。しかし、殆どの著作は同じ「桜宮市」を舞台としていて、時系列も共有しているようです。そこで、この作家の作品群は「桜宮サーガ」と呼ばれています。

登場人物も各作品で共通していたりして、わざわざシリーズとして分ける必要もないようにも思えますが、各々に主人公、舞台、括られる作品の雰囲気は異なりますので、シリーズとして見た方が良いのでしょう。

著者は千葉大学医学部を卒業し、博士号も取得している現役のお医者さんで、作品の中でAi(死亡時画像病理診断)の必要性を訴えておられる個所が少なからず見られます。

「チーム・バチスタの栄光」で第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、この作品からブレイクされました。勿論お医者さんですから医学会の内情が描かれるのは分かるのですが、現実にお役所とのやり取りを伺わせる官僚とのやり取りも描写されていたりと、医療関係に絡む様々の問題提起をされつつも、なかなかにエンターテインメント性に富んだ作品として仕上げてあります。たまに、作者の主張が走り過ぎて小説としてはどうなのかと思わせられることもありますが、概して面白い作品に満ちていると言えるのではないでしょうか。

六番目の小夜子

津村沙世子―とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。(「BOOK」データベースより)

 

恩田陸のデビュー作であり、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作に残った、長編の青春ファンタジー小説です。

 

「ファンタジーノベル大賞」の候補作に残っていることからも分かるように、本作品はファンタジーなのでしょう。本作をホラーと呼ぶには異論がある人が大半であろう程度に少々のホラーテイストがあります。

ある高校の生徒の間に伝わる三年に一度のお祭り(行事)にまつわる物語であり、青春小説とは言えると思います。

 

「サヨコ」に指名されても特別なことは何もないのだけれど、自分が「サヨコ」であることを誰にも知られずに一年をすごさなければなりません。

登場人物の青春にまつわる悩み、出来事が語られるなかに「サヨコ」の物語が絡んできます。

 

それにしても、この作者はいろいろな味の物語を紡ぎだしてくれます。お勧めです。

夜のピクニック

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。(「BOOK」データベースより)

 

第2回本屋大賞、そして第26回吉川英治文学新人賞を受賞した、高校生の「歩行祭」の一夜を描いた長編の青春小説です。

 

本屋大賞受賞の理由も良く分かる爽やかな読後感でした。久しぶりにいい本に出会ったという印象です。

でも何より、高校生がただ80Kmを歩くというイベント、その一夜の出来事だけで素晴らしい青春小説を作り上げるという作家の才能、というかイマジネーションに驚愕したものです。

この作家との最初に出会いがこの本ですから、他の本を読みたくなるのも当然でしょう。ところが、その期待は見事に良い意味で更に裏切られることになります。

恩田 陸

この作家は一言では語ることが出来ない作家だと思います。

最初に読んだ「夜のピクニック」は青春小説の傑作で、次に読んだ「ネクロポリス」は負のダークファンタジーと言ってもよさそうだし、デビュー作の「六番目の小夜子」はホラーチックなミステリー要素を含んだ青春小説なのでしょう。このジャンル分けも微妙なんですけどね。

ただ、文章は読みやすいですが、そのファンタジックな想像力に振り回されないようにする努力はいるかもしれません。

私はまだ紹介作品の他に「ブラザー・サン シスター・ムーン」や「黒と茶の幻想」など全部で八冊しか読んでいないのですが、結構多作な作家なので未読の作品で面白いものが眠っているはずだと思っています。「麦の海に沈む果実」などが人気が高そうです。

2017年本屋大賞が決まりました!

2017年4月11日に、本屋大賞が発表されました。(「本屋大賞」 : 参照 )

受賞作は恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』であり、156回直木三十五賞との同時受賞ということになりました。2005年の本屋大賞を受賞した『夜のピクニック』に次いで二回目ということになります。

受賞作の『蜜蜂と遠雷』ですが、この作品は著者本人の言葉によると「青春音楽群像小説」だそうです。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」というジンクスがある、芳ヶ江国際ピアノコンクールを舞台に繰り広げられる青春群像劇ということです。

私はまだ読んでいませんが、出来るだけ早く読み合いものです。

神様からひと言 [DVD]

『明日の記憶』の荻原浩原作、食品会社のクレームセンターを舞台に描いたコメディドラマ。“リストラ要員収容所”と恐れられる「お客様相談室」へ異動になった涼平。そこで出会ったのは、ひと癖もふた癖もあるクレーム処理班のメンバーだった。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

食品会社のクレームセンターを舞台に描いたコメディドラマです。2006年にWOWOW「ドラマW」枠で放送されました。未見です。

僕たちの戦争 完全版 [DVD]

005年夏。尾島健太(森山未來)は台風が通過したばかりの海にサーフィンをしにやってきた。大荒れの海に向かってパドリングを始めた健太。今、まさに沖に向かってサーフボードに体を預けているその海の上空を、昭和19年夏、九十三式陸上中間練習機が飛んでいた。操縦するのは石庭吾一(森山未來・二役)。_ しっかりと操縦桿を握っている吾一の遠くで稲妻が走る。と同時に彼には飛行機のエンジン音が聞こえなくなり、前方の視界が歪み意識が遠のいていく。一方、現代の健太にも、大きな波をとらえようとした矢先、目の前の大きな半透明の壁が立ちはだかり気が遠くなっていく。
そして、お互い目を覚ました所は、今まで見たことのない風景が広がる場所。どうやら2人は、何の偶然からか入れ替わってしまったらしい……。 (Amazon 内容紹介より)

 

TBSで2006年9月に放送されたスペシャルテレビドラマです。

未見ですが、概ね評判は良いようです。

HOME 愛しの座敷わらし [DVD]

父・晃一(水谷豊)の転勤で、東京から岩手の田舎町へと引っ越してきた高橋一家。
晃一がよかれと思って選んだ新しい住まいは、なんと築200年を数える古民家だった。
東京での暮らしに馴れていた妻の史子(安田成美)は、突然の田舎暮らしに不安と不満でいっぱい。
中学3年の長女・梓美(橋本愛)にも古民家はただのボロ家にしか見えず、転校先の学校生活を考えると心が落ち着かない。
また、同居する晃一の母親・澄代(草笛光子)は田舎住まいには支障を語らないものの、最近、認知症の症状が始まりつつある様子。
唯一、古民家への転居を楽しんでいる小学5年の長男・智也(濱田龍臣)は、治りかけている喘息の持病を今も史子にひどく心配され、
サッカーをやりたくてもやれずにいる。五者五様、どこかぎくしゃくしている一家をやんわりとまとめたい晃一だったが、
家族の不平不満をなかなかうまく解消することはできず、異動先の支社でも馴れない営業職に悪戦苦闘の毎日だった。
そんなある日、不思議な出来事が高橋家に起こり始める・・・。(Amazon 内容紹介より)

 

テレビで放映されたものを見ました。この映画の公開時の批評がどちらかと言うと好意的者は少なかったように記憶していたので、期待をせずに見たのですが、思いのほかに良い映画だったと思います。

タイトルの「座敷わらし」メインの物語かと思っていたら、家族の物語でした。原作を読んでいないので何とも言えないのですが、映画は映画としてファンタジックな側面も含めてきらいではありませんでした。

誘拐ラプソディー 特別版 [DVD]

伊達秀吉、38歳。金なし、家なし、仕事なし。あるのは借金と前科だけ。とことんツキに見放され、生きることに嫌気が差し、ついに死を決意したそのとき、目の前に人生最後のチャンスが訪れる。家出少年、伝助が現れたのだ。「大金を手に入れるなら誘拐が一番」刑務所時代に耳にした言葉が頭をよぎった秀吉は、一発逆転に賭け、伝助を連れ去る。身代金要求、受け渡しと、意外なほど事は順調に進み、完全犯罪成立かと思われた瞬間、とんでもない事実が明らかに・・・伝助の父親は地域最大規模のヤクザ、篠宮組の組長だったのだ。必死に逃亡する秀吉、組織をあげて猛追するヤクザ、さらには篠宮組の不穏な動きを察知した警察も動き出し・・・前代未聞の逃亡劇の結末とは?(Amazon 内容紹介より)

 

未見です。レビューの評判は良いようです。