GO  [DVD]

第25回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞をとった窪塚洋介の存在感が素晴らしかったですね。

柴咲コウも同日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞をとっています。というより、優秀作品賞を始め総なめと言った方が良いみたいです。

GO

2000年の直木賞受賞作です。金城一紀の自伝的作品で、窪塚洋介主演で映画化もされました。

他の作品とは違い決して明るい話ではないけれども、在日韓国人である主人公の立ち位置が明確で、とても読みやすい本でした。

でも、そうした主人公の国籍に絡む問題を抜きにして、誤解を恐れずに言えば単純に青春小説として面白い作品だと思います。

極北ラプソディ [映画版 DVD]

瑛太、加藤あい、山口祐一郎らの共演で贈る医療ドラマ。北海道にある破綻寸前の病院で、医療の原点を目指し奮闘する青年医師・今中。彼が成長していく姿を、地元女性との愛の行方を織り交ぜながら描いていく。メイキング映像を収録。解説書を封入。(「キネマ旬報社」データベースより)

DVD2枚組で、2013年3月にNHK総合にて放送されたものです。

ジーン・ワルツ [映画版 DVD]

海堂尊の医療ミステリー小説を菅野美穂主演で映画化。廃院寸前の産婦人科医院・マリアクリニックの院長代理を務める曾根崎理恵。彼女が禁断の治療をしているという噂を聞き付けた帝華大学病院のエリート医師・清川は、理恵の周辺を探り始めるのだが…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

未見です。

ひかりの剣

覇者は外科の世界で大成するといわれる医学部剣道部の「医鷲旗大会」。そこで、桜宮・東城大の“猛虎”速水晃一と、東京・帝華大の“伏龍”清川吾郎による伝説の闘いがあった。東城大の顧問・高階ら『チーム・バチスタ』でおなじみの面々がメスの代わりに竹刀で鎬を削る、医療ミステリーの旗手が放つ青春小説。(「BOOK」データベースより)

 

この人自身剣道をかなり極めた人のようで、これまでの話とは全く異なる青春小説です。

 

何よりも、主人公は「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速水晃一と「ジーン・ワルツ」の清川吾郎であり、それに高階権太を始めとするチーム・バチスタの面々が絡んでくるのですから海堂ワールドが好きな人にとってはたまらない本ではないでしょうか。ただ、医学生ではあっても医療がらみのミステリーとは関係の無い剣道メインの青春小説なので、その点さえ良ければの話ですが。

また、章毎に視点を変える書き方も目新しくは無いにしても面白く読めました。

 

ただ、同じ剣道ものでいうと誉田哲也武士道シリーズのほうがより読み応えがあったのも事実です。

 

 

というのも、少々剣道をかじったに過ぎない私くらいの力量の者では、そのトレーニングや対戦時の心理など、分からない箇所が少なからずあったのです。

どうも、この人の文章は頭が良すぎて、理屈が先に立っている感じが否めないところがあるようです。

 

いずれにしても、海堂ワールドには欠かせない一冊でしょう。

極北クレイマー2008

存続ぎりぎり、財政難の市民病院に、巨大ブリザードが吹き荒れる。新任“非常勤”外科部長・今中良夫は、この病院を生き抜けるのか?
このままでは財政が破綻すると囁かれている極北市の市民病院に、極北大から派遣されてきた医師、今中良夫。慣れない病院で数々のローカル・ルールに翻弄される日々が始まった。しかし、存続ぎりぎりの病院に、「医療事故疑惑」という痛烈な一撃が……。過酷な地方医療の現場と医師たちの格闘を描いた傑作長編!(Amazon内容紹介より)

 

本書は、2009年4月に朝日新聞出版より単行本が刊行され、2011年3月に朝日文庫(上下巻)、2013年10月に朝日文庫(新装版)が刊行された『極北クレイマー』を加筆修正し改題したものです。

 

「極北篇」シリーズの一冊で、2013年現在「極北クレイマー」と「極北ラプソディ」の2作品があります。

「極北クレイマー」は市民病院の様々な問題点を取り上げた作品です。

 

今中良夫は問題を起こし、極北市民病院に外科部長として派遣されることとなった。

極北市民病院は衛生環境を始めとして数々の問題点を抱えていたが、ただ産科医師の三枝久広だけが良心として頑張っていた。

 

本書は大きくは地域医療の問題が取り上げられていますが、現実に起きた産婦人科医の逮捕という「福島県立大野病院産科医逮捕事件」を大きなテーマとして扱っています。

医療行為という一般人には理解しえないと言ってもいい事柄なので、事の当否については何も言えません。ただ、小説としては興味深いものがあります。

 

少々テーマが重いので、明るく、軽く読める小説を求めている人には向かないでしょう。

スリジエセンター1991

世界的天才外科医・天城雪彦。手術を受けたいなら全財産の半分を差し出せと言い放ち顰蹙も買うが、その手技は敵対する医師をも魅了する。東城大学医学部で部下の世良とともにハートセンターの設立を目指す天城の前に立ちはだかる様々な壁。医療の「革命」を巡るメディカル・エンターテインメントの最高峰!(「BOOK」データベースより)

 

痛快小説のような面白さを備えた、長編の医療小説です。

 

スリジエ・ハートセンター設立を目指す天城は東城大での公開手術を目前に控えていた。

しかし、天城に反発する高階の工作により公開手術の患者が手術を断ってきたため、新たな患者に対し無料で公開手術を行うことになる。

天城はまた東京での国際学会でも公開手術を行うことになっていたが、そこでも手術スタッフが入れ替えられてしまうのだった。不慣れなスタッフのもと公開手術が行われるが、予想外の事態が起こる。

一方、その頃桜宮では城東デパート火災が起き、東城大病院は速見のもと何とかその修羅場を乗り越えようとしていた。

 

とにかく面白い小説の要素の殆どを備えている作品だと感じました。終盤の東京での公開手術における鏡部長や天城の行動は『ジェネラル・ルージュの凱旋』での速水の活躍のように強力なリーダーでありヒーローなのです。読み手の心を掴んで離しません。

勿論、この場面に至るまでの各登場人物の行動などがあっての話なので、この場面だけを取り上げても意味は無いのでしょうが、それほどに惹きつけられたのです。

 

 

佐伯教授や黒崎助教授の思惑と高階講師の駆け引きや、榊総看護婦長や藤原婦長などの看護師陣も顔を見せ、更には『ジェネラル・ルージュの凱旋』で見せた速水の活躍の一旦の披露など、海堂ワールドにはまった人にとっては総仕上げ(と言うのは早いのでしょうが)的な展開が待っているのです。

その内容に応じたテンポの良い文章も読みやすく、物語の世界に入り易くしているのではないでしょうか。

 

今回、世良は医局長になったりとそれなりに顔を見せてはいながらも、その実、語り役に徹しているのですが、代わりに思いがけない結末の幕引きという役割を負わされています。

この結末にはかなり異論もあるかと思いながら読みました。是非実際に読んでどう思うかを聞きたいものです。

ブレイズメス1990

この世でただ一人しかできない心臓手術のために、モナコには世界中から患者が集ってくる。天才外科医の名前は天城雪彦。カジノの賭け金を治療費として取り立てる放埒な天城を日本に連れ帰るよう、佐伯教授は世良に極秘のミッションを言い渡す。(「BOOK」データベースより)

 

東城大学医学部付属病院の研修医世良雅志は、モナコのモンテカルロ・ハートセンター外科部長の心臓外科医天城雪彦を総合外科学教室に招聘するためにモナコ公国に派遣された。

そこで見た天城雪彦は、金こそ至上としているとしか思えない医者であった。

天城雪彦を日本に連れて帰ってはきたものの、今度は心臓手術専門の病院「スリジエ・ハートセンター」設立を表明する天城雪彦の手伝いを命じられ、東京国際学会での天城雪彦の公開手術の準備に振り回される世良であった。

 

これこそが海堂尊だ、と言える作品だと思います。

根底にヒューマニズムが置かれていて、人の命と、その命を救うための施設にかかる費用との問題を提起されています。その上で事実上の主人公である天城雪彦のスーパーマン的活躍が展開され、エンターテインメント作品として仕上げられているのです。

そして物語の進行役である世良雅志の視点を通して、読者はその世界に入って行き易くなっていると感じられます。

 

個人的には、あのロジカルモンスター白鳥に代表される論理の展開は言葉の遊びに思えてあまり好きではないので、そうした点でもロジックをもてあそぶ展開の無い本書は気楽です。

桜宮サーガとも言われる海堂尊ワールドの一環であることが示される表現も随所に挟まれていて、それもまた物語の世界を広げる役に立っていることはあえて言うまでも無いことなのでしょう。

 

現役の医者である作者ならではの、現場を知る者の強みが如何なく発揮された作品に仕上がっていて面白いです。

新装版 ブラックペアン1988

一九八八年、世はバブル景気の頂点。「神の手」をもつ佐伯教授が君臨する東城大学外科教室に、帝華大の「ビッグマウス」高階講師が、食道癌の手術を簡単に行える新兵器「スナイプ」を手みやげに送り込まれてきた。揺れる巨艦…!大ベストセラー『チーム・バチスタの栄光』に繋がるミステリー、一巻本として新装刊行。(「BOOK」データベースより)

 

「田口・白鳥シリーズ」に登場する役者達が時代を遡り、若かりし姿となって活躍します。

主人公は東城大学医学部付属病院の研修医である世良雅志。後に病院長となる高階権太や若かりし看護師の藤原や猫田などとの間で医師として成長していくのだった。

 

やはりこの人は医者ものがいい。普段眼にも耳にもしない情報が盛り込まれているし、登場人物が医療の世界で生き生きと動き回っている気がします。

世良雅志の成長の物語ではありますが、青春小説としても読めなくはないかもしれません。

 

最後の落ちはそれなりに納得のいくものではありますが、この結末への伏線として必要な設定であるにしても、そこにいくまでの重鎮の言動に少々無理を感じてしまいました。

 

「バブル三部作」と名付けられたこのシリーズは、この後「ブレイズメス1990」「スリジエセンター1991」と続きます。

 

ジェネラル・ルージュの伝説

ドラマ「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」も絶賛放送中、救命救急センター・速水医師の外伝が登場! 単行本に収録されたジェネラルの原点「ジェネラル・ルージュの伝説」に、新たに書き下ろした「疾風」と、その後の物語「残照」も収録! さらに、文庫用に大幅加筆したエッセイや、自作解説で、創作の秘密を惜しみなく明かします。巻末にはファン必見の年表&主要登場人物リスト&用語解説辞典付き。とんでもなく豪華な一冊です!(Amazon内容紹介より)

 

シリーズ外伝にあたる短編や、エッセイなど、ファンにはたまらない内容の一冊です。

 

他の場所でも書きましたが、「ジェネラル・ルージュの凱旋」と「ナイチンゲールの沈黙」と時間軸が同じなのは、もともとこの両者は同じ物語であったものを切り分けたものだそうで、時間が同時進行なの当たり前な話でした。

そういう裏話満載の海堂ワールド全開の解説本です。

 

いままで、同じ作家のひとつのシリーズで物語の世界が同じというのは、特にSFなどでは何回かお目にかかったことがあります。

しかし、同じ作家の全作品が舞台を同じくするというのは初めてでした。本人も書いていましたが、整合性を保つのはかなり難しいのではないかと思われます。

 

本書の冒頭にジェネラル・ルージュの速水の物語があります。短編であり、もう少し読みたいと思わせられる物語でした。と同時に、こうした、物語にスピードがあり、ヒーローがヒーローとして活躍する定番の話が読んでいて面白い物語になるのだと思いました。

勿論、作者の筆力、構成力あってのことなのですが。更に、その裏に人情話が絡めば言うことはありません。速水を助ける猫田のルージュに絡む話などは一番です。