鬼平犯科帳 TV版

池波正太郎原作による人気時代劇のフジテレビ版第1シリーズ。江戸時代後期に実在した火付盗賊改方長官・茶L谷川平蔵の活躍を描いている。スペシャル2話を含む全26話を14枚のDVDに収録し、特製ブックレットと共に豪華特製BOX化。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

池波正太郎作品最大の人気シリーズと言えるかもしれません。テレビドラマも繰り返し放映されており、八代目松本幸四郎、丹波哲郎、萬屋錦之介と演者も超一流の役者さんが演じていて、八代目松本幸四郎の子である二代目中村吉右衛門もまた鬼平を演じています。

下記はウィキペディアに掲載されていたものです。

『鬼平犯科帳』 (制作:東宝、主演:八代目松本幸四郎)『鬼平犯科帳’69』とも
『新・鬼平犯科帳』(制作:東宝、主演:八代目松本幸四郎)『鬼平犯科帳’71』とも
『鬼平犯科帳』 (制作:東宝、主演:丹波哲郎)
『鬼平犯科帳』 (制作:東宝、主演:萬屋錦之介)
『鬼平犯科帳』 (制作:松竹、主演:二代目中村吉右衛門)

鬼平犯科帳 劇場版

テレビシリーズが高視聴率をマークしている池波正太郎原作の傑作時代劇の劇場版。鬼平の抹殺を企む悪の大組織が、悪行の限りを尽くして、いざ鬼平へと戦いを挑む。テレビ版では決して見ることのできない壮大なスケールで臨場感たっぷりに魅せる。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

未見です。

鬼平犯科帳

斬り捨て御免の権限を持つ幕府の火付盗賊改方の長官・長谷川平蔵。盗賊からは“鬼の平蔵”“鬼平”と恐れられている。しかし、その素顔は義理も人情もユーモアも心得た、懐の深い人間である。新感覚の時代小説の世界を拓き、不動の人気を誇る「鬼平犯科帳」シリーズ第一巻は、同心・小野十蔵の物語から始まる。(Amazon内容紹介 より)

 

このシリーズも色々言うまでもありません。

悪に対しては問答無用の非情さを持ちながら時に情の深さも垣間見せる、主人公の火付盗賊改方長谷川平蔵の人物造形が素晴らしいことがこの大人気シリーズの一番の理由ではないでしょうか。

テレビ版の鬼平犯科帳も原作を越えんばかりの出来だったように思います。最初に平蔵を演じた八代目松本幸四郎の出来が見事でした。そのあとを継いで四代目の平蔵を幸四郎の次男、二代目中村吉右衛門が演じていますがこの人の平蔵も評価が高いですね。

他に、舞台化、映画化とされていますが、さいとう・たかをにより漫画化もされているようです。

鬼平犯科帳 コミックス

さいとうたかをは言うまでも無く劇画会の大御所で、あのゴルゴ13の作者でもあります。この作家は貸本屋時代から読んでますがその創作力ははすごいですね。

現時点(2019年01月08日)でリイド社のコミック乱に連載中です。リイド社からはSPコミックスで55巻、SPコミックスコンパクトで68巻待っ出ており、文春時代コミックスから105巻が出ています。上記写真はリイド社版にリンクしています。

壬生義士伝 コミック

本コミックスは2014年4月17日に「ホーム社書籍扱いコミックス」として出版されました。

 

発表誌が廃刊したりなどの事情があり、出版社も「角川書店」「講談社」「集英社」「ホーム社」といろいろですが、現在は「ホーム社書籍扱コミックス」として一元化されている、と思っていいようです。

 

現時点(2018年12月)時点で第八巻まで出版されています。

本作品は原作をほぼ忠実に再現されており、その画力は見事です。

NHKで放映された「浦沢直樹の漫勉」という番組でも取り上げられていたのですが、本作品は一人で作画されているということです。

そのため出版のペースは決して早くはないものの、待つだけの価値はありました。

日輪の遺産 特別版

浅田次郎の同名小説を佐々部清監督が映画化。終戦間際の45年8月10日、陸軍大臣に呼び出された3人の軍人に、ある密命が下される。それは、マッカーサーから奪った財宝を秘密裡に陸軍工場へ移送し、隠匿せよというものだった…。堺雅人主演。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

この映画も原作ものの映画という意味では期待したほどではありませんでした。

 

仕方のないことですが、原作の冒頭から主人公的立場にいる丹羽明人や海老沢といった原作の導入部で動き回る人物は登場しません。地元の富豪、金原庄造の有する学園の卒業式で金原が倒れ、その妻久枝が昔を語り始めるところから物語は始まります

話はマッカーサーの財宝を隠匿する、その過程に絞られて進んでいくのですが、一番大事な教師と20名の少女達の行動とその行動の理由が何ともはっきりとしません。

その点が映画として明確に示されるか、若しくは曖昧にするのならばそのことを示唆するなりの手当を示してあればよかったのでしょうが、肝心の場面の情報が少なく、失望感が残るばかりでした。

壬生義士伝 TV版

吉村貫一郎は、南部藩随一の文武両道の士といわれながら、妻子を養うために脱藩し、壬生浪(みぶろ)と呼ばれた新選組に入隊する。“人斬り貫一 ”と恐れられ、また“守銭奴 ”とさげすまれながらも、稼いだ金は妻子に送っていた。恒例の正月スペシャル。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

主演の渡辺健のイメージが少々強い男過ぎるかな、と思い、また、妻役の高島礼子もちょっと印象が違いました。新選組の主だった人物も金子賢の沖田総司や竹中直人の斎藤一も、また筧利夫の坂本龍馬も首をひねりました。

映画版と異なり、原作をそれなりに細かなエピソードまで追いかけているのは良いのですが、故郷会津の山なみの風景で、山道の所々に掘削の跡が残っていたりと、少々興をそぐ個所があったのは残念です。

しかし、最後まで見終わる頃にはそうした点はどこかに行っていました。沖田総司など最後まで違和感の残る人もいるにはいたのですが、皆さすがの役者さんで、原作の雰囲気をよく表現していたと思います。

 

ただ、新選組内部の事件の殆どに主人公がメインで映り込んでいるのは、仕方がないのかもしれませんが、ちょっと違う印象はありました。原作ではそこまで絡んではいなかったと思います。

全部で十時間という長編です。細切れにしか見れなかったは残念ですが、レンタルで見る価値は十分にあると思います。

壬生義士伝 映画版

浅田次郎原作、滝田洋二郎監督の時代劇。混迷の幕末期に新撰組隊士として、妻と子を守るためだけに生き抜いた吉村貫一郎。副長助勤・斎藤一はそんな吉村を憎みながらも、その小さくも強固な生き方に惹かれていく。“あの頃映画 松竹DVDコレクション”。(「キネマ旬報社」データベースより)

映画は、年老いた佐藤浩市が演じる斎藤一が村田雄浩演じる大野千秋の病院へ孫を連れていくところから始まります。

丁度満州へ旅立つ準備をしていたその病院に置いてあった吉村貫一郎の写真を見て、斎藤一の回想の場面へと移るのです。

 

中井貴一の演技が光る、かなり良くできた作品だと感じました。

勿論137分という上映時間ですので、原作の全てが表現されているわけではありませんが、家族を思う吉村貫一郎の姿は良く描けていたと思います。2004年の第27回日本アカデミー賞で、最優秀作品賞や最優秀主演男優賞を始めとする多数の賞を受賞しています。

日輪の遺産

日輪の遺産』とは

 

本書『日輪の遺産』は1993年8月に刊行されて2021年10月に新装版として文庫化された、文庫本で576頁の長編小説です。

太平洋戦争終戦時の財宝の行方をめぐる人々の行いを描く、感動的な、しかし浅田次郎作品としては今一つの物語でした。

 

日輪の遺産』の簡単なあらすじ

 

その額、時価200兆円。敗戦後の日本を復興に導くため、マッカーサーから奪った財宝を隠す密命を日本軍は下す。それから47年。不動産事業で行き詰まった丹羽は、不思議な老人から財宝の在り処を記した手帳を託される。戦争には敗ける。しかし日本はこれでは終わらない。今こそ日本人が読むべき、魂の物語。(「BOOK」データベースより)

 

丹羽明人は競馬場で知り合った老人の最後を看取り、お礼にと一冊の手帳を渡された。

ボランティアの海老沢と共に老人の大家だという資産家の金原と老人についての話をするうちに、手帳に書かれているとんでも無い話が全くの虚構でも無さそうなことに気づくのだった。

 

日輪の遺産』の感想

 

本書『日輪の遺産』は1993年出版の作品であって著者のごく初期の作品であり、残念ながら浅田次郎の作品にしては完成度が今一つと感じました。

本書は本書として面白いのですが、『壬生義士伝』を始めとする新選組三部作や『天切り松-闇がたりシリーズ』といった素晴らしい作品を読んだ後ではどうしてもこの著者に対する要求が高くなってしまい、一般読者の勝手な要求としてそう思ってしまいました。

 

 

終戦時の真柴司郎少佐小泉重雄中尉望月庄造曹長の命令に従いマッカーサーの財宝を隠そうとする三人の行動と、老人の手帳に記された事実に振り回される現代の丹羽明人海老沢金原という三人の姿とが交互に語られます。

頁が進むにつれ終戦時と現代との関連が次第に明かされていく仕組みはいかにも浅田次郎ではあります。

 

ただ、例えば終戦時の真柴少佐たちが財宝の隠匿作業の手伝いに少女たちを使う理由が、秘密を最小限のものとするためなどと少々分かりにくい理由だったり、クライマックスでのマッカーサーの行動が不自然だったり、と今の浅田次郎の小説では見当たらないだろう不自然さが少なからずあるのです。

著者は「大勢の登場人物が使いこなせず、視点が不安定となり、ときにはあいまいにもなっている。センテンスの配分が悪く、文末の処理も稚拙である。」とがあとがきで書いておられます。

「視点の曖昧さ」等のために物語として消化不足と感じるのでしょうか。改めて現在の浅田次郎の力量で書かれた本作品を読んでみたいと思いました。

 

色々ケチをつけた上で変かもしれませんが、それでもやはり浅田次郎の物語です。

今の浅田次郎の水準に比して完成度が低いというだけであり、面白い小説ではあります。

 

ちなみに、本書『日輪の遺産』を原作として、堺雅人や中村獅童といったキャストで映画化されています。