泣くな研修医

本書『泣くな研修医』は、新刊書で270頁の、現役の外科医が描き出した長編の青春医療小説です。

現場を知る現役の医師ならではの、医療の現場の新米医師の姿を描いた真実味にあふれる感動的な物語でした。

 

泣くな研修医』の簡単なあらすじ

 

雨野隆治は25歳、大学を卒業したばかりの研修医だ。新人医師の毎日は、何もできず何もわからず、上司や先輩に怒られてばかり。だが、患者さんは待ったなしで押し寄せる。初めての救急当直、初めての手術、初めてのお看取り。自分の無力さに打ちのめされながら、ガムシャラに命と向き合い成長していく姿を、現役外科医が圧倒的なリアリティで描く。(「BOOK」データベースより)

 

東京の下町の総合病院の新米医師の雨野隆治は、医師歴が四・五年の後期研修医と呼ばれる医師の佐藤玲と共に当直についていた。

そこに高速道路で通事故にあった親子三人が搬送されてきた。一人は五歳の男の子で腹壁破裂と腸管脱出といういわゆる高エネルギー外傷と呼ばれる重傷であった。

隆治は、緊急手術のために呼ばれた岩井医師と先輩医師の佐藤と共に手術室に入ったものの、岩井と佐藤との会話のほとんどが理解できないでいた。

そして、手術が終わったそのとき、龍治は気を失ってしまったのだった。

 

泣くな研修医』の感想

 

本書『泣くな研修医』は、本稿の冒頭に書いた通り医療小説です。それも、新米医者の目から見た医療の現場を実にリアルに描き出してあります。

もちろん小説ですからある程度の脚色はあるでしょうが、「あまりにリアルで、自分の話かと思った」という同業の医師からの感想が来るほどだそうです( PRESIDENT 2020年1月3日号 : 参照 )。

多分、著者自身の経験がかなり入っている物語だと思われます。

本書『泣くな研修医』は、現場医療の実際をこれでもかと描いてあります。そこにはユニークな登場人物もいなければ、心が洗われる情景描写もありません。

けっしてうまいとは思えない文章で、新米医師が現場に振り回される様子が描かれています。

 

そうした点では夏川草介の『神様のカルテシリーズ』とはかなり異なります。

この『神様のカルテシリーズ』も現役の医師が書いた小説であり、ベストセラーになった小説です。

この作品は、地方医療の現実を描き出す内科医の姿を描き出した作品で、本書と異なり、主人公一止やその妻ハル、それに同じアパートの受任や勤務先の同僚、先輩の医師や看護師などのユニークな登場人物までも生き生きと描いてあります。

その上、作者の意図として楽しく読んでもらいたいと重くなりがちな命の現場の出来事も割と明るいタッチで描き出してありました。

 

 

それに対し本書の場合、主人公の雨野隆治はまだ一年目の研修医であり、リアルな医療現場の姿が描き出されています。

新米医師の目を通した医療の現場ですので、ベテランの医師よりは素人である読者の目線に近い、しかし医療を学んだ身であり素人ではない目線での現場が描かれているのです。

その上『神様のカルテシリーズ』では美しい信濃の自然の風景が折に触れ描いてあったのですが、本書の場合は自然の描写は殆どと言っていいほどにありません。

加えてユーモラスな描写も殆どないのです。本書の場合、徹底してリアルな医療現場の描写に徹してあるようです。

 

もちろん、そのことの良し悪しを言っているのではありません。

本書では外科医に限らず直面する新人の医者の直面する命の現場の様子を描き出してあるのです。そこに心象風景などの描写の要不要の話は、小説としての作法という別次元の話だと思うのです。

 

本書ではがん患者の家族だけに対しての、患者の命の存えうる時間ついての説明の場面があります。

その場面を読んでいると、先に「うまいとは言えない文章」などと書いたことがあほらしくなるような、現場を、現実を知る人間ならではのリアルな言葉が、新米医師の目を通して冷徹に示されています。

医者の、その言葉を聞く親の痩せた、シミだらけの手の描写は心に響きます。

そして、患者のお看取りの場面では、昨年突然逝ってしまった自分の母親の、お医者さんが丁寧に看取ってくれた場面を思い出してしまいました。

 

そうした、ノートパソコンの電源を落とさずに帰る研修医などの、現場を知る作者ならではの場面は随所に出てきます。

もちろん、看護師さんの新米医師への配慮など、看護師の力がいかに大事か、などの場面も出てきます。

 

続編はまだ図書館に入っていません。早めに入ることを期待します。

 

ちなみに、本『泣くな研修医』を原作として、GENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーの白濱亜嵐が主演でテレビドラマ化され、本日2021年4月24日から放映されます。

本書の雨野隆司にしては白濱亜嵐という人はかっこよすぎな気もしますが、どうでしょう。

 

泣くな研修医シリーズ

本『泣くな研修医シリーズ』は、新人の外科医師を主人公とした青春医療小説です。

医療の現場における新米医師の実際を克明に記したリアルですが、感動的でもある青春小説です。

泣くな研修医シリーズ(2021年04月23日現在)

  1. 泣くな研修医
  2. 逃げるな新人外科医
  3. 走れ外科医

 

泣くな研修医シリーズ』について

 

本『泣くな研修医シリーズ』は、今のところ第一巻『泣くな研修医』しか読んでいませんので、本稿の情報は随時書き換えていきます。

 

本『泣くな研修医シリーズ』の主人公は大学を卒業したばかりの二十五歳の研修医の雨野隆治という新米医師です。

第一巻『泣くな研修医』の冒頭で、忙しく働いている両親に兄ちゃんの様子がおかしいという弟の話が出てきます。多分その弟が雨野隆治という主人公だろうという推測のまま、話は進んでいきます。

主人公の雨野隆治は第一巻目の『泣くな研修医』では、東京下町の総合病院に勤務する一年生です。この後、第二巻目の『逃げるな新人外科医』では二十七歳の三年目となっており、第三巻『走れ外科医』では二十九歳の五年目の外科医となっています。

そして、第一巻『泣くな研修医』では、リアルな医療現場の現実が描き出されているところを見ると、第二巻、第三巻とその状況は変わらないと思われるのです。

 

つまり、少なくとも第一巻の『泣くな研修医』では、夏川草介の『神様のカルテシリーズ』で描かれている地域医療の問題や、大鐘稔彦の『孤高のメス―外科医当麻鉄彦』で描かれている大学の医局制度の問題などの社会的なテーマには触れられていません。

さらには信州の四季折々の風景のような、背景となる自然の描写もまずありません。

本シリーズは医療の現場を描くことを目指しているようです。そしてその現場で右往左往する新米医師の様子を描くことに徹しています。

 

 

小説としてどれだけ完成度があるのかは私には判断できません。しかし、決してうまいとは思えない文章で描き出されるこのシリーズは確実に読む者の胸に迫ります。

少なくとも、本シリーズの読み初めには、本書の文章が小説にはあまり慣れておられないのだろう、という印象が先にありました。

しかし、その文章が描き出す新米医師の実態は、彼が犯したミスに対し先輩医師が言った、医者は「ミスすると患者を殺してしまう仕事」だと言われた言葉に集約されるように強烈です。

そうした緊張感の中でただがむしゃらに病院に泊まり込み、患者に寄り添う主人公の姿は感動的ですらあります。

 

著者中山祐次郎という人は、「普段は自覚しづらい命の価値」を認識し、その上で「死ぬ時に後悔しない人生」を送ってほしいという気持ちを伝えるには小説という媒体がより伝わりやすいという考えで本シリーズを描いたそうです( PRESIDENT 2020年1月3日号 : 参照 )。

その思いは読者にも深く届いていると思われます。

続巻を読みたいのですが、わが図書館にはまだ入っていません。早速購入希望を出そうと思います。まあ、自分で買え、という話ですが・・・。

 

ちなみに、本『泣くな研修医シリーズ』はGENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバーの白濱亜嵐の主演でテレビドラマ化され、2021年4月24日から放映されるそうです。

白濱亜嵐は本書の主人公の印象にしては少々線が太く、かっこよすぎな気もしますが、こればかりは見てみないと分かりません。

普段はドラマはあまり見ない私ですが、このドラマは見てみたいと思います。