グレイヴディッガー

久しぶりにこんなスピード感のある小説を読みました。10年位前に読んだ「二重螺旋の悪魔」「ソリトンの悪魔」の 梅原克文以来かもしれません。外国で言えばD・R・クーンツの「ファントム」、ロバート・R・マキャモンの「スティンガー」といったところでしょう。

そうした各作品にはどことなくホラーチックな匂いというか、クリーチャーの存在が大きいのですが、本作品は確かに舞台設定にはホラーテイストはあるかもしれませんが、アクション性の方が強いところがちょっと異なる気がします。

ノンストップアクション小説です。

死体の盗難事件という妙な事件を担当する刑事同士の会話から幕が開きます。本書の主人公八神俊彦は、骨髄移植のドナーとなって患者として苦しんでいる人を助けようという、初めて善行をする気になったワルです。一方、煮えたぎる風呂場で茹でられている死体や見えない炎で焼き殺される女などの連続殺人が発生して、八神が犯人として警察に追われたりと、この八神俊彦の一夜の逃避行を描いた作品です。

一気に読んでしまいました。

この作家の他の作品と異なり、一番エンターテインメント性が強い本ではないでしょうか。他のことは何も考えずに、ただ、単純に物語世界に浸ればいい。そういう作品です。

ジェットコースター作品が好きな人には絶対お勧めです。面白いです。

ジェノサイド

イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は―人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント、堂々の文庫化!(上巻 : 「BOOK」データベースより)

研人に託された研究には、想像を絶する遠大な狙いが秘められていた。一方、戦地からの脱出に転じたイエーガーを待ち受けていたのは、人間という生き物が作り出した、この世の地獄だった。人類の命運を賭けた二人の戦いは、度重なる絶対絶命の危機を乗り越えて、いよいよクライマックスへ―日本推理作家協会賞、山田風太郎賞、そして各種ランキングの首位に輝いた、現代エンタテインメント小説の最高峰。(下巻 : 「BOOK」データベースより)

 

スケールの大きな長編のエンターテイメント小説です。

 

四人の傭兵はコンゴの紛争地帯にいる、あるピグミー一族と一人のアメリカ人の抹殺を命じられます。一方、古賀研人は急死した父親からのメールに従いある難病の治療薬の開発に着手するのでした。ここに人類の存亡をかけた戦いが始まります。

 

思っていた内容とは異なる作品でした。

ジェノサイドという題名からして、映画プレデターのようなアクションものを予想していたのですが、いい意味で裏切られました。他の作品と比してもまた全く異なるテイストで驚きます。

 

学術的なこともよく調べてあるし、構成も緻密に考えられてもいるのでしょうが、もう少しエンターテインメントとして徹してくれていれば、更に面白く読めたのではないかと思われる作品です。

というのも、著者の歴史観の取り扱い方が軽すぎるのです。歴史観が色濃く出ること自体は作品として問題はないのでしょうが、各場面で少々唐突にすぎますし、表現も単純で浅薄に感じられてならないのです。せっかくの物語が色褪せてしまいました。

 

もう一点加えれば、重要な役割を果たす友人の存在にしても少々説明不足でご都合主義的に感じられてもったいないです。残念でした。

でも、さすがベストセラーになっている本です。その面白さは否定できません。

13階段

無実の死刑囚を救い出すために与えられた期限は三ヶ月、報酬は一千万円だった。不可能とも思える仕事を引き受けた二人の男に待ち受けていた運命とは―手に汗握る展開と、胸を打つ驚愕の結末。現代社会の罪と罰を問い、圧倒的なサスペンスで読書界を震撼させた江戸川乱歩賞受賞作。『十年ぶりの後書き』収録。(「BOOK」データベースより)

 

過失殺人で服役した少年と刑務官が、冤罪の恐れのある死刑囚の無実を証明しようと走り回る長編のサスペンス小説です。

 

重い本です。途中までもう読むのを止めようかと何度か思いました。

この本の中に出てくるように、刑罰そのものについての2つの大きな考え方として教育刑主義と応報刑主義の対立があります。

結論は簡単に出るものではありませんが、現代の通説と言われる応報刑主義に何となく、そういうものかもしれないという感じを持ったことがあります。

本書では、中ほどで回想シーンの多用などで死刑制度そのものの問題点などを読者に真正面から提起します。本筋の物語は全然進まずに、これでもかと死刑制度について問いかけてくるのです。これが少々重かった。

横山秀夫の「半落ち」という作品も問いかけるテーマは重く、決して明るい本ではありませんでしたが、それなりに物語として感情移入して読めました。

しかし、本書はその重さゆえか物語世界に入っていけないのです。体調次第では読むのを止めてしまったかもしれません。

 

 

それでも終盤になると話は急展開を見せ、物語世界に引き込まれました。今は最後まで読んでそれなりに良かったとは思っています。やはり選考委員の満場一致で第四十七回江戸川乱歩賞を受賞した作品だなと思っているのです。

まあ、お勧めではあるのですが、それなりの覚悟がいるかもしれません。