戦国自衛隊1549 [DVD]

戦国時代に戦車・ヘリと共にタイムスリップしてしまった自衛隊員vs武将・織田信長の戦いを描いたSF戦国アクション!陸上自衛隊の全面協力でリアリティとスケールを追求した作品。出演は江口洋介、鈴木京香、鹿賀丈史ほか。(「Oricon」データベースより)

 

この映画も1979年の半村良原作の映画版「戦国自衛隊」と比べてしまうのですが、かなりレベルダウンしていると言わざるを得ません。

「戦国自衛隊1549」の方がCGにもお金を数段かけている筈なのですが、こちらの方がちゃちに見えてしまいました。

見る側のCGに対する目が肥えているということもあるのかもしれませんが、原野の中に突然出てくる城など見れたものではなく、やはり作り方の問題だと思いました。残念ながら、おすすめとはいかない映画です。

戦国自衛隊1549

自衛隊演習場で、新兵器の実験中に暴走事故が発生。的場一佐率いる第三特別混成団が約460年前の戦国時代に飛ばされてしまう。一方、その影響と思われる虚数空間が日本各地に出現し、現代世界を侵食し始めた。的場たちを救出するため組織されたロメオ隊の一員として、救出作戦への参加を決めた元自衛官の鹿島は、タイムスリップで戦国時代へ飛ぶが、そこで待ち受けていたものとは!?圧倒的スケールで贈るSF戦国アクション。(「BOOK」データベースより)

 

自衛隊を中核に据えた歴史改変ものの長編SF小説です。

 

富士の演習場で行われていたとある実験中の事故のために、指揮官の的場一佐を始めとする全員や装備、資材等の実験エリア全体がタイムスリップしてしまい、その後の揺り戻しによって今度は逆にひとりの武士が現代に現れる。

数年後、富士近辺に「ホール」と呼ばれる全てのものを飲みこんでしまう空間が出現するが、それは的場達が過去にタイムスリップしたことによる歴史の改変に基づくものと推測された。

そこで、現代を救うために、過去の歴史の改変を戻すべく的場一佐達を救出する作戦が開始されるが、そこには、思いもかけない事態が待ち構えていた。

 

本作品は2005年に劇場公開された映画「戦国自衛隊1549」が、福井晴敏のプロットをもとに作成されたものであり、そのプロットをもとに出版された作品だと聞きました。

 

 

1971年に発表された半村良の『戦国自衛隊』の焼き直しとは言われていましたが、全くの別物と思った方がいいでしょう。

 

 

何より、映画が先にありきのため、小説に制約がかかっているようです。そのために福井晴敏作品の特徴である詳細な描写はありませんし、作品のスケール感も失われています。

歴史との関わりを描くのであれば現実の歴史を上手く取り入れて欲しいのですが、その点が書けているとは感じられないのが残念です。

また、私が読んだ本は横長であり、デザインも含め変に凝った装丁でした。凝るのは良いのですが、実に読みにくい。この点でも残念でした。文庫本であればこの点はクリアされるのでしょうが。

以上残念ですが、映画と共におすすめとは言い難い作品でした。

ローレライ [DVD]

福井晴敏原作の「終戦のローレライ」を映画化。1945年8月、ドイツ降伏後日本海軍に収容された潜水艦「伊507」の艦内を舞台に、任務を負ったクルーたちの様々な思いが交錯する。果たして、クルーたちは任務を遂行することができるのか…。(「Oricon」データベースより)

 

映画版「亡国のイージス」に比べると少々落ちます。

評価する声もそこそこあるようなので全くの個人的な感想かもしれませんが、原作の面白さを再現できているとは思えませんでした。

終戦のローレライ

昭和二十年、日本が滅亡に瀕していた夏。崩壊したナチスドイツからもたらされた戦利潜水艦・伊507が、男たちの、国家の運命をねじ曲げてゆく。五島列島沖に沈む特殊兵器・ローレライとはなにか。終戦という歴史の分岐点を駆け抜けた魂の記録が、この国の現在を問い直す。第22回吉川英治文学新人賞受賞。(1巻 : 「BOOK」データベースより)

この国に「あるべき終戦の形」をもたらすと言われる特殊兵器・ローレライを求めて出航した伊507。回収任務に抜擢された少年兵・折笠征人は、太平洋の魔女と恐れられたローレライの実像を知る。米軍潜水艦との息詰る死闘のさなか、深海に響き渡る魔女の歌声がもたらすのは生か死か。命の凱歌、緊迫の第2巻。(2巻 : 「BOOK」データベースより)

その日、広島は核の業火に包まれた。人類史上類を見ない大量殺戮の閃光が、日本に定められた敗北の道を歩ませ、「国家としての切腹」を目論む浅倉大佐の計画を加速させる。彼が望む「あるべき終戦の形」とは?その凄惨な真実が語られる時、伊507乗員たちは言葉を失い、そして決断を迫られた。刮目の第3巻。(3巻 : 「BOOK」データベースより)

「ローレライは、あなたが望む終戦のためには歌わない」あらゆる絶望と悲憤を乗り越え、伊507は最後の戦闘へ赴く。第三の原子爆弾投下を阻止せよ。孤立無援の状況下、乗員たちはその一戦にすべてを賭けた。そこに守るべき未来があると信じて。今、くり返す混迷の時代に捧げる「終戦」の祈り。畢生の大作、完結。(4巻 : 「BOOK」データベースより)

 

第二次世界大戦も末期、日本への移送中に米軍から逃れるために日本近海に投擲されたドイツの秘密兵器「ローレライ」を回収するための戦いを描く、長編の冒険小説ですた。

 

とにかく長い物語です。文庫本全四巻で千七百頁を超えます。

それでも、かなり面白く読みました。『亡国のイージス』でも「国家」について考えさせられましたが、本作でもまた、先の戦争を通じて国家の在り方について問いかけられています。

 

 

福井晴敏という人は、とにかくディテールにこだわる作家さんだと思われます。

登場人物も多数に上るのですが、それぞれについて人物の背景を説明し、更に舞台の背景を説明するのですから物語が長くなるのも当たり前でしょう。

凄いのは、冗長になるであろうこの長い物語を読み手の興味を惹いて飽きさせないその筆力です。山崎豊子の作品も、例えば『不毛地帯』 (新潮文庫 全五巻)のように決して上手いとは思えない文章でいながら、長大な物語を引っ張っていきますが、その感覚に似ているのでしょうか。

 

 

かように、もう少し簡潔に描写出来るのではないかと思わせる個所が少なからずあるのですが、それよりも物語を読ませる力が強いと感じさせられます。

場合によっては政治色が強くなり、読者の興を削ぎかねないテーマなのですが、エンターテインメント性が強いためかこの点も負担にはなっていないようです。

 

日本には珍しい骨太のスケールの大きい作品の一つだと思います。軽く読める本ではありませんので、そうした本を好みの方以外の大半は面白いと評価されるのではないでしょうか。

第二十四回吉川英治文学新人賞、第二十一回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞を受賞した作品です。

 

ちなみに、本書は役所広司、妻夫木聡らの出演で映画化されています。かなり見ごたえのある作品として出来上がっていたと思います。

 

月に繭 地には果実

かつて、地球を壊滅寸前にまで追い込んでしまった人類。一部の者は月に逃れて地球の再生を待ち、地球に生き残った人々は、おぞましい滅亡の記憶を封印した…。それから二千年の時を経て、月の民は地球帰還作戦を発動。決行に先駆け、地球に送り込まれた「献体」の中に、少年・ロランがいた。文学と「ガンダム」の歴史的コラボレーション。(上巻 : 「BOOK」データベースより)

地球人としての生活に安息を覚えるロランをよそに、地球帰還作戦は決行された。抵抗する地球人だが、宇宙的兵器を操る月の民の戦力には遠く及ばない。しかし地球人が過去の遺産=“ターンA”を発掘したことから、戦力は均衡。ロランは“ターンA”に乗り込み、月の民と戦うことに。エンターテインメント界の寵児が放つ、新世紀の「戦争と平和」。(中巻 : 「BOOK」データベースより)

夥しい爆発の光が咲き乱れる宇宙は溶鉱炉と化し、次々と墜落する機体が月面を灼熱させる。多くの人間を犠牲にした戦争もついに佳境に。“ターンA”のコクピットで、ロランが見つける真実は?そして“ターンA”の意味とは?「ガンダム」の歴史に新たな一ページを刻み、小説の無限の可能性を提示するSF大河ロマンの金字塔。怒涛の完結編。(下巻 : 「BOOK」データベースより)

 

月面と地球上とに分かれて生き残った人類間の闘争を描く、福井晴敏が描くガンダム小説としての文庫本三冊からなる長編SF小説です。

 

福井晴敏という作家を最初に知った本です。図書館で「ガンダム」との文字があったのですぐに借りました。

ガンダム自体はアニメのガンダムシリーズの第一作である「機動戦士ガンダム」の最初の数話分程しか見ておらず、知らないも同然です。

アニメを全話通して見るのはなかなか難しいものです。しかし、ガンダム物語の世界観は当初から面白そうだとは思っており、その小説版であるからにはすぐに飛び付きました。

 

 

本書はもともと「∀ガンダム(ターンエーガンダム)」という全五十話のテレビアニメ作品であったものがノベライズ化されたものです。

まず角川スニーカー文庫から全五巻の「∀ガンダム」として発売され、次いでハルキ・ノベルスから∀ガンダム(上・下)として、幻冬舎文庫から「月に繭 地には果実」(上・中・下)、幻冬舎から「月に繭 地には果実 From Called “∀” Gundam」としてハードカバーで、講談社BOXから「∀ガンダム 月に繭 地には果実」(上・下)として次々と出版されました(ウィキペディア : 参照)。

 

 

そもそも私が知っている「ガンダム」は「機動戦士ガンダム」しかないものですから、少々戸惑いましたが、最後まで読んでみたら構成もしっかりとした、普通の、というのも変ですが、SF小説であるのに驚きました。

そうした普通のSFとして見ると結構面白い物語です。本書でも少々説明的では、と思う個所もありますが、それは福井晴敏という作家のスタイルと割り切って読むべきなのでしょう。

ガンダムだからというわけではなく、冒険SF小説として面白い小説でした。

亡国のイージス [DVD]

福井晴敏原作のベストセラー小説を映画化。首都・東京を人質に、最新鋭の防空システムを持つイージス艦“いそかぜ”が乗っ取られた。特殊兵器を東京に向けられ、残された時間は10時間という中で、国家最大の危機に立ち向かう男の姿を描くスペクタクル・エンタテインメント大作。真田広之、寺尾聰ほか出演。(「Oricon」データベースより)

 

真田広之、中井貴一、寺尾聰、佐藤浩市といった芸達者な役者さん達が出演しているというだけでも見る価値はあるでしょう。

これらの人たちがスケールの大きな原作を料理するのですから、よほどのことが無い限り、それなりの面白さは保証されていると言って良いと思います。

実際、自衛隊の協力もあって、終盤のアクションシーンは実際の自衛艦の中で撮影されたようです。

この映画を見たときは、胸を張っておすすめで切り映画ですとまでは言えませんが「そこそこに」面白い、との感想を持ちました。

亡国のイージス

在日米軍基地で発生した未曾有の惨事。最新のシステム護衛艦“いそかぜ”は、真相をめぐる国家間の策謀にまきこまれ暴走を始める。交わるはずのない男たちの人生が交錯し、ついに守るべき国の形を見失った“楯”が、日本にもたらす恐怖とは。日本推理作家協会賞を含む三賞を受賞した長編海洋冒険小説の傑作。( 上巻 : 「BOOK」データベースより )

「現在、本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内に設定されている。その弾頭は通常に非ず」ついに始まった戦後日本最大の悪夢。戦争を忘れた国家がなす術もなく立ちつくす時、運命の男たちが立ち上がる。自らの誇りと信念を守るために―。すべての日本人に覚醒を促す魂の航路、圧倒的クライマックスへ。( 下巻 : 「BOOK」データベースより )

 

日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞などを受賞している、国防問題を取り上げたスケールの大きな長編の冒険小説です。

 

東京湾に浮かぶ最新鋭のイージス艦「いそかぜ」が、北朝鮮の工作員とそれに同調する自衛官のグループに乗っ取られてしまう。

このテロリストは生物化学兵器「GUSOH」を有しており、テロリストグループに東京を人質に取られたも同様だった。

この「いそかぜ」に先任警衛海曹仙石恒史と防衛庁情報局(DAIS)所属の如月行とが潜り込み、テロリストたちに立ち向かうのだった。

 

本書も、文庫本の上下巻を合わせると千百頁を超える分量という長い作品です。でも、その物語が決して長過ぎるとは感じません。

先に書いたように、ディテールを詳しく書き込んであるのですが、それが冗長に感ぜずに、舞台背景や人物の関連などの理解に役立っています。

自衛隊の装備や専門用語についても詳しく解説してあります。そうしたハード面の描写に加え、登場人物の人物造形もメリハリよく描写してあります。

更には、その多数の登場人物たちの人間関係の描写も読ませ、特に仙石恒史と諜報員としての実態を持つ如月行との関係は胸に迫るものがあります。

加えて敵役のテロリストたちもその思想や生活の背景の描写は詳しく、心情として犯人側に傾きやすい背景を用意したりと、小説としての構成も上手いと感じさせられました。

 

とにかく、骨太の物語で細かなところまでまで詳しく書き込まれた、日本には珍しいタイプの小説です。

本当は実に細かなところでの間違いもあるらしいのですが、気にする必要も無いところでしょうし、筋立ても読み手を裏切る意外性に富み、第一級の冒険小説だと思います。

 

自衛隊を描き出した作品としては月村了衛の『土漠の花』があります。アフリカのジブチとソマリアの国境付近で現地の勢力に襲われる自衛隊の隊員の、灼熱の太陽のもと、自衛隊の基地までの70Kmの行動を描いた冒険小説です。本作に比してアクション面が強い作品だと思われます。

 

 

また、安生正の『ゼロの迎撃』という作品のほうが、より本作『亡国のイージス』に近いと思われます。

というのもこちらは、防衛庁情報本部情報分析官の真下俊彦三等陸佐が三人の部下と共に、東京の中心部でテロ攻撃を実行した正体不明のテロリストに立ち向かうという、自衛隊の現下の状況を踏まえて法律論まで踏み込んで書かれている作品だと思われるからです。

 

 

ちなみに、本作品は真田広之や寺尾聰らの出演で映画化もされています。この映画は防衛庁や海上自衛隊、航空自衛隊らの協力のもとに製作され、なかなかの迫力をもった映画になっていたと思います。

ただ、アクション面が強調され、政治的側面や人間ドラマは、無いことはなかったのですが、あまり重きが置かれていなかったのではないでしょうか。