戦国自衛隊1549 [DVD]

戦国時代に戦車・ヘリと共にタイムスリップしてしまった自衛隊員vs武将・織田信長の戦いを描いたSF戦国アクション!陸上自衛隊の全面協力でリアリティとスケールを追求した作品。出演は江口洋介、鈴木京香、鹿賀丈史ほか。(「Oricon」データベースより)

この映画も1979年の半村良原作の映画版「戦国自衛隊」と比べてしまうのですが、かなりレベルダウンしていると言わざるを得ません。

「戦国自衛隊1549」の方がCGにもお金を数段かけている筈なのですが、こちらの方がちゃちに見えてしまいました。見る側のCGに対する目が肥えているということもあるのかもしれませんが、原野の中に突然出てくる城など見れたものではなく、やはり作り方の問題だと思いました。残念ながら、おすすめとはいかない映画です。

戦国自衛隊1549

富士の演習場で行われていたとある実験中の事故のために、指揮官の的場一佐を始めとする全員や装備、資材等の実験エリア全体がタイムスリップしてしまい、その後の揺り戻しによって今度は逆にひとりの武士が現代に現れる。数年後、富士近辺に「ホール」と呼ばれる全てのものを飲みこんでしまう空間が出現するが、それは的場達が過去にタイムスリップしたことによる歴史の改変に基づくものと推測された。そこで、現代を救うために、過去の歴史の改変を戻すべく的場一佐達を救出する作戦が開始された。しかし、そこには、思いもかけない事態が待ち構えていた。

本作品は2005年に劇場公開された映画「戦国自衛隊1549」が、福井晴敏のプロットをもとに作成されたものであり、そのプロットをもとに出版された作品だと聞きました。1971年出版の半村良の「戦国自衛隊」の焼き直しとは言われていましたが、全くの別物と思った方がいいでしょう。

何より、映画が先にありきのため、小説に制約がかかっているようです。そのために福井晴敏作品の特徴である詳細な描写はありませんし、作品のスケール感も失われています。歴史との関わりを描くのであれば現実の歴史を上手く取り入れて欲しいのですが、その点が書けているとは感じられないのが残念です。

また、私が読んだ本は横長であり、デザインも含め変に凝った装丁でした。凝るのは良いのですが、実に読みにくい。この点でも残念でした。文庫本であればこの点はクリアされるのでしょうが。

以上残念ですが、映画と共におすすめとは言い難い作品でした。

ローレライ [DVD]

福井晴敏原作の「終戦のローレライ」を映画化。1945年8月、ドイツ降伏後日本海軍に収容された潜水艦「伊507」の艦内を舞台に、任務を負ったクルーたちの様々な思いが交錯する。果たして、クルーたちは任務を遂行することができるのか…。(「Oricon」データベースより)

映画版「亡国のイージス」に比べると少々落ちます。評価する声もそこそこあるようなので全くの個人的な感想かもしれませんが、原作の面白さを再現できているとは思えませんでした。

終戦のローレライ

とにかく長い物語です。文庫本全四巻で千七百頁を超えます。それでも、かなり面白く読みました。「亡国のイージス」でも「国家」について考えさせられましたが、本作でもまた、先の戦争を通じて国家の在り方について問いかけられています。

第二次世界大戦も末期の物語です。日本への移送中に米軍から逃れるために日本近海に投擲されてしまった、ドイツの秘密兵器「ローレライ」を回収するために海軍新兵折笠征人らの戦いが始まった。

とにかくディテールにこだわる作家さんだと思われます。登場人物も多数に上るのですが、それぞれについて人物の背景を説明し、更に舞台の背景を説明するのですから物語が長くなるのも当たり前でしょう。凄いのは、冗長になるであろうこの長い物語を読み手の興味を惹いて飽きさせないその筆力です。山崎豊子の作品も決して上手いとは思えない文章でいながら、長大な物語を引っ張っていきますが、その感覚に似ているのでしょうか。

かように、もう少し簡潔に描写出来るのではないかと思わせる個所が少なからずあるのですが、それよりも物語を読ませる力が強いと感じさせられます。場合によっては政治色が強くなり、読者の興を削ぎかねないテーマなのですが、エンターテインメント性が強いためかこの点も負担にはなっていないようです。

日本には珍しい骨太のスケールの大きい作品の一つだと思います。軽く読める本ではありませんので、そうした本を好みの方以外の大半は面白いと評価されるのではないでしょうか。

第二十四回吉川英治文学新人賞、第二十一回日本冒険小説協会大賞日本軍大賞を受賞した作品です。

月に繭 地には果実

かつて、地球を壊滅寸前にまで追い込んでしまった人類。一部の者は月に逃れて地球の再生を待ち、地球に生き残った人々は、おぞましい滅亡の記憶を封印した…。それから二千年の時を経て、月の民は地球帰還作戦を発動。決行に先駆け、地球に送り込まれた「献体」の中に、少年・ロランがいた。文学と「ガンダム」の歴史的コラボレーション。(「BOOK」データベースより)

福井晴敏という作家を最初に知った本です。図書館で「ガンダム」との文字があったのですぐに借りました。ガンダム自体はアニメのガンダムシリーズの第一作である「機動戦士ガンダム」の最初の数話分程しか見ておらず、知らないも同然です。アニメを全話見るのはなかなか難しいものです。しかし、物語の世界観は当初から面白そうだとは思っており、その小説版であるからにはすぐに飛び付きました。

本書はもともと「∀ガンダム(ターンエーガンダム)」という全五十話のテレビアニメ作品であったものがノベライズ化されたもので、まず角川スニーカー文庫から全五巻の「∀ガンダム」として発売され、次いでハルキ・ノベルスから∀ガンダム(上・下)として、幻冬舎文庫から「月に繭 地には果実」(上・中・下)、幻冬舎から「月に繭 地には果実 From Called “∀” Gundam」としてハードカバーで、講談社BOXから「∀ガンダム 月に繭 地には果実」(上・下)として次々と出版されました(by Wikipedia)。

そもそも私が知っている「ガンダム」は「機動戦士ガンダム」しかないものですから、少々戸惑いましたが、最後まで読んでみたら構成もしっかりとした、普通の、というのも変ですが、SF小説であるのに驚きました。普通のSFとして見ると結構面白い物語です。ここでも少々説明的では、と思う個所もありますが、それは福井晴敏という作家のスタイルと割り切って読むべきなのでしょう。

亡国のイージス [DVD]

福井晴敏原作のベストセラー小説を映画化。首都・東京を人質に、最新鋭の防空システムを持つイージス艦“いそかぜ”が乗っ取られた。特殊兵器を東京に向けられ、残された時間は10時間という中で、国家最大の危機に立ち向かう男の姿を描くスペクタクル・エンタテインメント大作。真田広之、寺尾聰ほか出演。(「Oricon」データベースより)

真田広之、中井貴一、寺尾聰、佐藤浩市といった芸達者な役者さん達が出演しているというだけでも見る価値はあるでしょう。これらの人たちがスケールの大きな原作を料理するのですから、よほどのことが無い限り、それなりの面白さは保証されていると言って良いと思います。

実際、自衛隊の協力もあって、終盤のアクションシーンは実際の自衛艦の中で撮影されたようです。

この映画を見たときは、胸を張っておすすめで切り映画ですとまでは言えませんが「そこそこに」面白い、との感想を持ちました。

亡国のイージス

東京湾に浮かぶ最新鋭のイージス艦「いそかぜ」が、北朝鮮の工作員とそれに同調する自衛官のグループに乗っ取られてしまう。このテロリストは生物化学兵器「GUSOH」を有しており、テロリストグループに東京を人質に取られたも同様だった。この「いそかぜ」に先任警衛海曹仙石恒史と防衛庁情報局(DAIS)所属の如月行とが潜り込み、テロリストたちに立ち向かうのだった。

本書も、文庫本の上下巻を合わせると千百頁を超える分量という長い作品です。でも、その物語が決して長過ぎるとは感じません。先に書いたように、ディテールを詳しく書き込んであるのですが、それが冗長に感ぜずに、舞台背景や人物の関連などの理解に役立っています。

自衛隊の装備や専門用語についても詳しく解説してあります。そうしたハード面の描写に加え、登場人物の人物造形もメリハリよく描写してあります。更には、その多数の登場人物たちの人間関係の描写も読ませ、特に仙石恒史と諜報員としての実態を持つ如月行との関係は胸に迫るものがあります。加えて敵役のテロリストたちもその思想や生活の背景の描写は詳しく、心情として犯人側に傾きやすい背景を用意したりと、小説としての構成も上手いと感じさせられました。

とにかく、骨太の物語で細かなところまでまで詳しく書き込まれた、日本には珍しいタイプの小説です。本当は実に細かなところでの間違いもあるらしいのですが、気にする必要も無いところでしょうし、筋立ても読み手を裏切る意外性に富み、第一級の冒険小説だと思います。

日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞を受賞しています。