ラーマシリーズ

2130年、太陽系に突如侵入した謎の物体は、直径20キロ、自転周期4分という巨大な金属筒であることが判明した。人類が長いあいだ期待し、同時に怖れてもいた宇宙からの最初の訪問者が、ついに現われたのだ!“ラーマ”と命名されたこの人工物体の調査のため派遣されたエンデヴァー号は、苦心のすえラーマとのランデヴーに成功、その内部へと入ったが…ヒューゴー賞ほかあまたの賞を受賞した名作、待望の改訳決定版!(「BOOK」データベースより)

 

22世紀を舞台に、太陽系に進入した異星の宇宙船ラーマを探索する姿が描かれる長編のSF小説です。本作品はヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞しています。

 

2130年頃、後に「ラーマ」と名付けられることになる天体が太陽系に侵入してきた。少しずつ判明してきたその天体は人工物であり、全長が50キロメートル、直径が20キロメートルの円筒形をした建造物であった。

近くにいたエンデヴァー号が艦長ノートン中佐の指揮のもとその探査に向かった。

 

この巨大建造物の内部に入り探査していく工程が描かれていきます。その描写が科学的な根拠に基づく推測であり、読み手は納得させられてしまうのです。

後に内部を照らす明かりは人工太陽であることが分かってきたり、海や都市などを探査していくうちに、「バイオット」と名付けられるロボットらしき存在にも出会います。しかし、生命体が見当たらないまま、この建造物は太陽に近づいていくのです。

探査期限も迫るころ、ラーマでは「三つ一組」であることが重要だと判明します。

探査の物語であり、異世界の描写の物語で、ヒューゴー賞受賞、ネビュラ賞を受賞し、非常に評価の高い作品です。

 

ただ、個人的にはあまり面白いとは思えなかった作品で、同様の巨大建造物での出来事を描いたニーブンの「リングワールド」の方が面白いと思ったものです。

以下ジェントリー・リーと共著として2~4と続くのですが、私は未読です。ネットでの評判も続編になるとあまり良くないようです。

 

ラーマシリーズ(完結)

  1. 宇宙のランデヴー
  2. 宇宙のランデヴー 2(ジェントリー・リーと共著)
  3. 宇宙のランデヴー 3(ジェントリー・リーと共著)
  4. 宇宙のランデヴー 4(ジェントリー・リーと共著)

2010年 [映画]

SF映画史上に燦然と輝く名作『2001年宇宙の旅』の続編。科学者たちを乗せたソビエト連邦の宇宙船・レオーノフ号が、謎多き「モノリス」の正体やディスカバリー号のその後を調査するために木星へと旅立つ。(「キネマ旬報社」データベースより)

「2001年宇宙の旅」を受けて制作されたこの映画は、前作ほどのインパクトは無かったものの、木星の表面を横切る宇宙船のシーンなど、映像の美しさが印象的でした。また、ロイ・シャイダーの存在が大きかったと思います。

2001年宇宙の旅

スタンリー・キューブリック監督による映画史に残る名作です。確かに、スチュワーデス(当時)の衣装などは若干古いと感じられないことも無いですが、少なくとも映画として見た場合、2014年の現在この映画を見ても決して古くは感じられないその完成度は驚嘆に値します。

また、「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れる導入部や、地球と月との間をつなぐシャトルが舞う場面での「美しく青きドナウ」などを始めとするクラシック音楽の美しさも素晴らしいものでした。

最大の魅力は、宇宙船ディスカバリー号の人工知能HAL9000というコンピュータが起こす反抗や、最大の謎であるモノリス、ラストシーンの意味するもの、など映画自体のストーリーの素晴らしさにあるでしょう。そして、その筋立てを最大限に魅せる映像美が見事であることは言うまでもありません。まだ見てない方は是非見るべきです。

宇宙の旅シリーズ

三百万年前の地球に出現した謎の石板は、原始的な道具も知らないヒトザルたちに何をしたのか。月面で発見された同種の石板は、人類に何を意味しているのか。宇宙船ディスカバリー号のコンピュータ、ハル9000はなぜ人類に反乱を起こしたのか。唯一の生存者ボーマンはどこに行き、何に出会い、何に変貌したのか…。発表以来25年、SF史上に燦然と輝く記念碑的傑作に、作者クラークの新版序文を付した完全決定版ついに登場。(2001年宇宙の旅 :「BOOK」データベースより)

 

スタンリー・キューブリックによる映画「2001年宇宙の旅(A Space Odyssey)」があまりにも有名な物語です。アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックとがアイディアを出し合って作った物語だそうで、映画公開に遅れること二カ月後に小説版が出版されました。

その後『2010年宇宙の旅』を原作とした映画も作成されました。

 

 

木星近辺に発見されたモノリス探査のために宇宙船ディスカバリー号で向かうのですが、途中人工知能HAL9000の異常により搭乗員が殺害される事態が発生します。人工知能HAL9000の異常の謎やモノリスの存在の謎など、一人となったボーマン船長がモノリス探査で見たものは・・・。(2001年宇宙の旅)

 

当然のことながら映画版とは基本線だけは同じですが、例えば映画では木星が舞台であったものが小説では土星になっているなど、細かな点が異なります。映像によるイメージがある映画版とでは描写の仕方でも異なるのは当然でしょう。

更に、これはこの文を書くまで忘れていたのですが、「2010年宇宙の旅」以降の小説ではパラレルワールドという設定だったそうです。舞台も木星になっています。

この作品に関しては小説版と映画版の両方を見ることをお勧めします。

宇宙の旅シリーズ(完結)

  1. 2001年宇宙の旅
  2. 2010年宇宙の旅
  3. 2061年宇宙の旅
  4. 3001年終局への旅

都市と星〔新訳版〕

遙か未来、銀河帝国の崩壊によって地球に帰還することを余儀なくされた人類は、誕生・死さえも完全管理する驚異の都市ダイアスパーを建造、安住の地と定めた。住民は都市の外に出ることを極度に恐れていたが、ただひとりアルヴィンだけは、未知の世界への憧れを抱きつづけていた。そして、ついに彼が都市の外へ、真実を求める扉を開いたとき、世界は…。巨匠が遺した思弁系SFの傑作、待望の完全新訳版。(「BOOK」データベースより)

 

クラークの作品の中でも『幼年期の終わり』と並ぶ名作と言われる長編のSF小説です。

 

銀河帝国の崩壊の後、人類は地球の片すみにコンピュータで管理されたユートピアであるドームを作り暮らしていた。全てデータ化された人類は、数万年の間を置いて再構成されるだけの存在として、10億年もの間をその中で生活していたのだ。

ある日、ダイアスパーと名付けられたそのドームの外に出たい、という若者が現れた。異端児であるその子はダイアスパーの外に出ることに成功し、別な都市リスに行きつく。意思の能力を発達させたその都市では、現在の人間と同じデータ化されていない人間が暮らしていた。

 

本書は主人公の少年アルヴィンの成長譚としての側面も持っているようです。しかし、それだけでなく、単なる享楽的なユートピアではないダイアスパーという施設、及びその中で暮らす人間社会の描写に素晴らしいものがあります。

加えて、リスという都市を対置し、ダイアスパーの存在を浮かび上がらせています。更に、リスから今度は宇宙へと冒険は広がり、単なる成長譚としての物語を越えた考察が示されるのです。

 

SFの古典と呼ばれている本です。そのスケールの壮大さは『幼年期の終わり』に勝るとも劣りませんし、同様にSFのセンス・オブ・ワンダーを実感させてくれた本です。

幼年期の終わり』や本書『都市と星』のように心を揺さぶられる程の衝撃を受ける作品はそうはありません。

 

元々は「銀河帝国の崩壊」という題名で出版されていた作品に本人が不満を覚え、書きなおした作品が本書だそうです。しかし、「銀河帝国の崩壊」の方が主人公がよく描けているとして「銀河帝国の崩壊」の方が面白いという方も少なからずおられるようです。

 

 

なお、本書『都市と星〔新訳版〕』のリンクイメージは酒井昭伸氏の新訳版へのものです。ハヤカワ文庫版(山高昭訳)もありますが、古書になりそうです。また、ハヤカワ文庫版(福島正実訳)もあります。

 

幼年期の終わり

宇宙進出を目前にした人類。だがある日、全世界の大都市上空に未知の大宇宙船団が降下してきた。“上主”と呼ばれる彼らは遠い星系から訪れた超知性体であり、人類とは比較にならない優れた科学技術を備えた全能者だった。彼らは国連事務総長のみを交渉相手として人類を全面的に管理し、ついに地球に理想社会がもたらされたが。人類進化の一大ヴィジョンを描くSF史上不朽の傑作!(「BOOK」データベースより)

 

SF小説の中でも名作中の名作と言われる長編のSF小説です。

 

ある日突然地球上の各都市の上空に宇宙人の宇宙船が現れた。宇宙人の代表はカレルレンと名乗り、地球は今後宇宙人の管理下に入る事を宣言する。

地球人としてただ一人国際連合事務総長ストルムグレンだけは宇宙船に乗りこむことを許されるが、宇宙人は決して人間の前に姿と見せようとはしなかった。

50年後、ニューヨーク上空の一隻だけを残し、宇宙船が消えてしまう。カレルレンは50年前の約束通り、人間の前に姿を現すがその姿は予想を超えたものだった。

 

40年位前に、今のハヤカワ文庫SF(旧 ハヤカワSF文庫)ではなく、当時四六判で刊行されていた「ハヤカワ・ノヴェルズ」版で読んだと思います。文庫ではなかったので間違いないでしょう。

この作品のスケールの大きさに圧倒された、という当時の感想を今でも覚えています。それだけ衝撃的でした。この後に読んだ同じクラークの小説「都市と星」でまもた圧倒されたものです。

 

 

「未来の記憶」というキーワードも直ぐに思い出しました。ラスト近くの地球の描写に至っては部分的に覚えているほどなので、自分でも驚いています。

宇宙人の来訪という設定自体は特別ではありませんが、その宇宙人の呼称としての「オーバーロード」という単語も含め、宇宙人の人類に対する地位が言わば「平和的支配者」としてあることが独特でした。そこから終盤に向けて、上位の存在である「オーバーロード」と人類との描写があるのですが、人間という存在を考えさせられた作品であったとも言えます。

「オーバーロード」という単語は多分福島正実だったのでしょうが、訳者がうまいというしかないと思います。今の翻訳は何と表現してあるものか、調べてみたいものです。

 

この作品はSF好きを自負する人は殆どの人は読んでいることでしょう。そして絶賛しています。SFの醍醐味を満喫させてくれる作品でありながら決して読みにくくは無いと思います。SFの入門書として相応しいとは言えないでしょうが、一度は読んだ方がいい、というより読むべき作品だと思っています。

なお、上記リンクは沼沢洽治氏訳の創元SF文庫版です。他に、光文社古典新訳文庫の池田真紀子氏訳の新訳版、福島正実氏訳のハヤカワ文庫版も出ています。