検事霧島三郎

東大在学中に司法試験に合格し、エリート検事の道を邁進する霧島三郎。しかし、婚約者・恭子との結婚を間近に控え、彼女の父親が突然の失踪。のみならずヘロイン所持、殺人の嫌疑までかけられる…。瞬く間に危機的状況に追い込まれた三郎は、愛を貫くため、辞職覚悟で独自捜査に乗り出す!苦悩しながらも奮闘する若き検事の姿を、スリリングに描き出す傑作ミステリー!(「BOOK」データベースより)

 

若き検事霧島三郎が活躍する長編の推理小説です。

 

題名の通り検事が主人公の推理小説で、内容を殆ど覚えていないのだけれど、結構面白く読んだ記憶があります。たしか、主人公の霧島三郎はかなりの美男子で、奥さんも才能豊かな美人だった筈です。

先日破戒裁判を読み返すまで、霧島三郎の奥さんのことをペリと呼んでいたと思い違いしていたほどですから、奥さんについては定かではありません。

霧島三郎はシリーズ化されており、当時はかなりの人気でした。映画化もされ、勿論テレビでも人気を博しました。

ただ、私は本格派推理小説としてではなく、どちらかというと社会派に近い感覚で覚えていました。できれば再読したい作品の一つです。

破戒裁判 新装版

二件の殺人及び死体遺棄の罪に問われ、起訴された元俳優。弁護人・百谷泉一郎は、被告人の容疑を晴らすべく、検察と対峙する。そして、彼が取った驚くべき戦法とは!?全編公判シーンで描かれる、日本の法廷ミステリーの原点。百谷弁護士シリーズ、唯一の短編「遺言書」と、「丸正告発裁判」の特別弁護人に至るエッセイを収録。(「BOOK」データベースより)

 

全編が法廷での検察、弁護人のやり取りで成り立っている珍しい構成の本です。

 

法廷場面だけの構成なので、決して派手さはありません。検察と弁護人とのやり取りの中から被告人の真実の姿が浮かび上がってくるのです。そこには皆の思いもかけない本当の理由がありました。

一般の推理小説では、真犯人告発のための事実の発見が主眼になり、その事実発見の過程こそが物語の要帝になります。一方、本作品は法廷が舞台であり、法廷では提出された証拠に基づいた弁論で示された事実だけが裁判官の判断の基礎になるのです

つまり、一般に描かれる調査の過程の描写はありません。読者は、調査の結果が法廷に提出される場面及びその結果だけを知ることになります。

 

先般読み返してみたのですが、今でも小説としての面白さは色あせてはいませんでした。ただ、お金の価値の感覚が今とは相当異なるのが新鮮に感じてしまいました。

また、これは当時から思っていたことですが、文章が少々大時代的に感じる個所があります。でも、これは高木彬光という作家の特色と捉えるべきなのでしょう。

 

この探偵役となる弁護士百谷泉一郎は奥さんが相場師であり、資金には不自由しません。そこで十分な調査を尽くし、真実発見に努めることが出来るのです。

蛇足ですが、今回読み返すまで、高木彬光作品の中で奥さんのことをペリと呼んでいた主人公は「検事霧島三郎」だと思っていたのですが、本作品の弁護士百谷泉一郎のことでした。

この弁護士百谷泉一郎シリーズは本作品が最初です。女傑である奥さんも活躍するこのシリーズは他に「誘拐」、「人蟻」等があり、かなり面白く読んだ記憶があります。(「人蟻」はKindle版)

 

 

刺青殺人事件 新装版

野村絹枝の背中に蠢く大蛇の刺青。艶美な姿に魅了された元軍医・松下研三は、誘われるままに彼女の家に赴き、鍵の閉まった浴室で女の片腕を目にする。それは胴体のない密室殺人だった―。謎が謎を呼ぶ事件を解決するため、怜悧にして華麗なる名探偵・神津恭介が立ち上がる!江戸川乱歩が絶賛したデビュー作であると同時に、神津恭介の初登場作。満を持しての復刊!(「BOOK」データベースより)

 

作家高木彬光のデビュー作である、長編の推理小説です。

 

本来、高木彬光といえば探偵神津恭介シリーズを最初にあげるべきなのかもしれません。

でも、正直なところ内容も良く覚えていないので胸を張って紹介できないのです。

ただ、高木彬光の処女作品であり、当然探偵神津恭介のデビューでもあるこの作品は、本格派の推理小説として当時かなりな人気を博しました。

主題が刺青であり作品全体を怪奇趣味で覆ってはいるけども、耽美的な風味は無いところが『 本陣殺人事件』等で有名な 横溝正史とは異なると思われます。

 

 

ちょっと調べると処女作であるがための文章の硬さや、トリックの未熟さ等は目立つけれども、古典として評価する文章が多いようです。

白昼の死角【DVD】

実際の事件を元にした高木彬光の小説を村川透監督が映画化。戦後の混乱期に、法の死角を突き完全犯罪を目論んだ男たちを描く。東大法学部の学生が設立した金融会社“太陽クラブ”は急成長を遂げたが、メンバーのひとりである隅田が焼身自殺を図り…。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

かなり前に見たので内容は殆ど覚えてはいないのです。

 

しかしながら、夏木勲は鶴岡七郎のイメージではないなどと思っていたものの、さすがは役者さんで、迫力のあるかっこいい鶴岡七郎になりきっていたことは覚えています。

松田優作の『蘇える金狼』や『野獣死すべし』でも有名な村川透が監督だったことも覚えてはいませんでした。ただ、原作の印象とは若干違うワルとしての鶴岡七郎の印象が全面に出ていると思った印象があります。

 

 

今回調べるまで忘れていたのですが、主題歌がダウンタウン・ヴギウギ・バンドの「欲望の街」だということをまで全く忘れていた、ということが一番の驚きと言っていいかもしれません。

 
ダウンタウン・ヴギウギ・バンドの「欲望の街」

白昼の死角

明晰な頭脳にものをいわせ、巧みに法の網の目をくぐる。ありとあらゆる手口で完全犯罪を繰り返す“天才的知能犯”鶴岡七郎。最後まで警察の追及をかわしきった“神の如き”犯罪者の視点から、その悪行の数々を冷徹に描く。日本の推理文壇において、ひと際、異彩を放つ悪党小説。主人公のモデルとなった人物を語った秘話を収録。(「BOOK」データベースより)

本書は1948年に実際に起きた東大生らによる「光クラブ」闇金融事件をモデルにした小説です。

鶴岡七郎は友人隅田光一と共に学生金融会社「太陽クラブ」を興しますが、じきにその会社も立ち行かなくなり隅田は自殺してしまいます。しかし、事実上の黒幕だった鶴岡はここからその本領を発揮し、自分の頭脳のみで勝負をし、天才詐欺師として名を馳せます。

経済事犯として血を流すこと無く大金を手にするその方法は、小説とはいえ見事です。特に、「光クラブ」消滅後、鶴岡七郎が実質的に活躍を始める後半以降は、高木彬光の創作したフィクションであり、そこで語られる手形の知識は少々法律をかじった程度の人では追いつかない域だといいます。ピカレスクロマンの頂点の一冊でしょう。

施行されている法律も変わった現在では通用しない話ではありますが、そんなことは関係ありません。物語として面白いのですから。

なお、同じく「光クラブ」をモデルにした小説として三島由紀夫の「青の時代」があります。この作品は三島由紀夫本人が、資料を十分に発酵させることもなく、ただ「集めるそばから小説に使つた軽率さは、・・・残念なことである」と三島由紀夫作品集のあとがきに書いているように、決して満足のいくものではなかったようですが、「今なほ作者は不可思議な愛着の念を禁ずることができない」とも述べています。(ウィキペディア 青の時代 (小説) : 参照)

 

 

また、本作品は夏木勲が鶴岡七郎を演じていました。監督が村川透だということもあってか、かなり迫力のある映像で、原作のイメージとは少々違うと思った印象があります。なによりも、主題歌がダウンタウン・ヴギウギ・バンドの「欲望の街」だということを、この文章を書くために調べるまで全く忘れていたことに驚きです。

 

 
ダウンタウン・ヴギウギ・バンドの「欲望の街」