高木 彬光

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明晰な頭脳にものをいわせ、巧みに法の網の目をくぐる。ありとあらゆる手口で完全犯罪を繰り返す“天才的知能犯”鶴岡七郎。最後まで警察の追及をかわしきった“神の如き”犯罪者の視点から、その悪行の数々を冷徹に描く。日本の推理文壇において、ひと際、異彩を放つ悪党小説。主人公のモデルとなった人物を語った秘話を収録。(「BOOK」データベースより)

本書は1948年に実際に起きた東大生らによる「光クラブ」闇金融事件をモデルにした小説です。

鶴岡七郎は友人隅田光一と共に学生金融会社「太陽クラブ」を興しますが、じきにその会社も立ち行かなくなり隅田は自殺してしまいます。しかし、事実上の黒幕だった鶴岡はここからその本領を発揮し、自分の頭脳のみで勝負をし、天才詐欺師として名を馳せます。

経済事犯として血を流すこと無く大金を手にするその方法は、小説とはいえ見事です。特に、「光クラブ」消滅後、鶴岡七郎が実質的に活躍を始める後半以降は、高木彬光の創作したフィクションであり、そこで語られる手形の知識は少々法律をかじった程度の人では追いつかない域だといいます。ピカレスクロマンの頂点の一冊でしょう。

施行されている法律も変わった現在では通用しない話ではありますが、そんなことは関係ありません。物語として面白いのですから。

なお、同じく「光クラブ」をモデルにした小説として三島由紀夫の「青の時代」があります。この作品は三島由紀夫本人が、資料を十分に発酵させることもなく、ただ「集めるそばから小説に使つた軽率さは、・・・残念なことである」と三島由紀夫作品集のあとがきに書いているように、決して満足のいくものではなかったようですが、「今なほ作者は不可思議な愛着の念を禁ずることができない」とも述べています。(ウィキペディア 青の時代 (小説) : 参照)

 

 

また、本作品は夏木勲が鶴岡七郎を演じていました。監督が村川透だということもあってか、かなり迫力のある映像で、原作のイメージとは少々違うと思った印象があります。なによりも、主題歌がダウンタウン・ヴギウギ・バンドの「欲望の街」だということを、この文章を書くために調べるまで全く忘れていたことに驚きです。

 

 
ダウンタウン・ヴギウギ・バンドの「欲望の街」

[投稿日]2015年04月13日  [最終更新日]2018年12月24日
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