黒後家蜘蛛の会

“黒後家蜘蛛の会”の会員―弁護士、暗号専門家、作家、化学者、画家、数学者の六人、それに給仕一名は、月一回“ミラノ・レストラン”で晩餐会を開いていた。食後の話題には毎回不思議な謎が提出され、会員が素人探偵ぶりを発揮する。ところが最後に真相を言い当てるのは、常に給仕のヘンリーだった!SF界の巨匠が著した、安楽椅子探偵の歴史に燦然と輝く連作推理短編集。(「BOOK」データベースより)

 

アシモフが描き出す上質のミステリーを収めた文庫本で全五巻の短編小説集です。

 

化学者、数学者、弁護士などのその道の専門家が月に一度集まり食事をし、語りあう集まりがありました。その話の中に「謎」が含まれるのが常であり、その謎について皆で語るのですがなかなか結論が出ません。その時、給仕をしながら話を聞いていたヘンリーが謎を解決するのです。

 

確か私が三十歳になる前の頃にこのシリーズを読んだと思うのですが、その頃でさえ少々古臭い感じがしたものです。でもそれは登場人物の造形であったり、集まる店の雰囲気であったりと、謎解きそのものではありませんでした。

もともと謎解き自体にはあまり興味を持てない私ですが、この作品はそうした古さを感じながらも殆どの作品を読み終えたものです。

 

SF臭は全くありません。ただ、今の推理小説の謎解きとは少々趣が異なります。どこかのレビューで「パズル」と書いてありましたが、まさにパズルの感覚だと思います。

殺人事件が起きるわけでも、何か異常な出来事が起きるわけでもありません。日常の生活の中でのちょっとした謎、その謎がまた面白いのです。

そうしたパズル的作品がお好みの方には是非おすすめの一冊です。

鋼鉄都市

警視総監に呼びだされた刑事ベイリが知らされたのは、宇宙人惨殺という前代未聞の事件だった。地球人の子孫でありながら今や支配者となった宇宙人に対する反感、人間から職を奪ったロボットへの憎悪が渦まく鋼鉄都市へ、ベイリは乗り出すが……〈ロボット工学の三原則〉の盲点に挑んだSFミステリの金字塔!(Amazon内容紹介より)

 

SFの古典的名作の一冊で、ミステリとしても超一級の長編小説です。

 

はるか未来、ニューヨーク市警の刑事イライジャ・ベイリは、スペーサーと呼ばれる異星への移民の子孫の居住区域での捜査を命じられ、相棒としてR・ダニール・オリヴォーという人間型のロボット(ヒューマンフォームロボット)が指定された。

スペーサーの科学者が殺された事件なのだが、問題は、ロボット三原則によりロボットには人は殺せず、人を殺しうる人間はスペーサーの居住区域への回廊を通った者はいないというのだ。

ただ、回廊を通らずに野外から居住区域へ入る道はあるが、ドームという閉鎖空間に慣れた人間にとって屋外は恐怖の場所でしか無く、まず不可能と考えられていた。捜査の結果次第では地球の未来に多大な影響を与えるというのだが、ベイリとオリヴォーは問題を解決できるのか。

 

SFミステリの傑作と呼ばれている作品です。『われはロボット』同様に「ロボット三原則」により論理の縛りを加え、その隙間をついてミステリー仕立てとして構成しています。

背景こそSFですが、この作品もSFを苦手とする人にも読みやすい物語ではないでしょうか。

 

続編、といいますかベイリとオリヴォーが活躍する物語として『はだかの太陽』『夜明けのロボット』があり、『ロボットと帝国』によって『ファウンデーションシリーズ』に組み込まれ、ロボットものも全体としてアシモフの未来史の一環を為すことになっています。

 

 

 

数年前にハリウッドで映画化の話もあったように思うけど、大友克洋のAKIRAのように立ち消えになったようですね。

アイ,ロボット [DVD]

ありがちなことですが、原作とはかなり異なります。

しかし、この映画自体を原作から離れて独立した作品として見ると、そこそこ見れるCGを駆使したアクション映画として面白い映画だと思いました。

われはロボット 〔決定版〕

ロボットは人間に危害を加えてはならない。人間の命令に服従しなければならない…これらロボット工学三原則には、すべてのロボットがかならず従うはずだった。この三原則の第一条を改変した事件にロボット心理学者キャルヴィンが挑む「迷子のロボット」をはじめ、少女グローリアの最愛の友である子守り用ロボットのロビイ、ひとの心を読むロボットのハービイなど、ロボット工学三原則を創案した巨匠が描くロボット開発史。(「BOOK」データベースより)

 

ロボットものの初期短編集で、ロボットSFの古典的名作と言われる作品です。

アシモフのロボットシリーズとしてまとめても良いかもしれません。それほどに「ファウンデーション」と「ロボット」の二つの作品群はアシモフの未来史の中で大きな存在です。

 

何と言ってもこの本でロボット工学三原則が示されていることが大きいです。このロボット三原則をもとにミステリ仕立てで物語が展開していきます。

いかにもこの原則に反しているかのような行動をとるロボットを、USロボット社のロボットである心理学者スーザン・キャルヴィンが回顧していきます。

 

SFが好きな人でなくても入りやすい作品だと思います。短編毎にロボットの進化もみられ、ミステリーであったり、ペーソス漂う作品であったりと、超一級の短編集です。

ロボットを主人公として書かれている作品群ではあるのですが、結局は人間について想いを馳せることになる、そんな物語になっています。

 

下記にロボットものと思われる作品をまとめてみました。このほかにも例えば「サリーはわが恋人」という短編などもロボットものと言えなくも無さそうで、覚えていない作品が多数あり、全部は拾えていないと思います。

  1. われはロボット(短編集)
  2. ロボットの時代(短編集)
  3. 聖者の行進(短編集)
  4. 鋼鉄都市
  1. はだかの太陽
  2. 夜明けのロボット
  3. ロボットと帝国
  4. コンプリート・ロボット(短編集)

 

上記の最後に掲げてある「コンプリート・ロボット」は「われはロボット」や「ロボットの時代」他の作品を含んだアシモフのロボットものの短編全31編をまとめた本です。でも古本しかないようで、あとは図書館でしょう。
 

ファウンデーション

まだ読んでいませんが、是非読んでみたいですね。

ウィキペディアによると、この2巻でファウンデーションシリーズの第一巻目を漫画化してあるそうです。今のところ(2015年3月)、この2巻しか出版されていません。

ファウンデーションシリーズ

「ファウンデーション」とは、天才数学者ハリ・セルダンが「心理歴史学者」として現帝国の崩壊を見通した末に設立した、新しい宇宙帝国を建設するのための布石となるべき組織のことです。

「組織」とはいってもそれは「国家」と言い換えても良いもので、心理面を追求する「第二ファウンデーション」の存在も明らかになります。

 

基本的に中・短編で構成されている作品群です。ですから物語を通した固定の主人公というものはいません。強いて言えば「ファウンデーション」という社会自体が主人公ということになります。ハリ・セルダンがホログラムなどの形で随所に出てきますが、言わば預言者的存在ですので主人公とは言えないでしょう。

 

下掲の「6.ファウンデーションへの序曲」「7.ファウンデーションの誕生」は「1.ファウンデーション」の前日譚ですので、時系列としては「6」「7」「1」「2」・・・の順番になります。

出版順で読むか、時系列に合わせて読むかは好みでしょうが、作者の文章力や雰囲気の変化、全体的な構想の問題もありますので個人的には出版順の方がいいかとは思います。

アシモフの死後、現代SF界の大物と言っても良い三人によって、「新銀河帝国興亡史」としてシリーズが書き継がれています。

私はまだ読んでいませんが、この三人は夫々に重厚感のある読み応えの作品を書く作家なので、アシモフ以外の人の手による本シリーズはまた違った趣のある作品に仕上がっていることは間違いないでしょう。

 

ファウンデーションシリーズ

  1. ファウンデーション
  2. ファウンデーション対帝国
  3. 第二ファウンデーション
  4. ファウンデーションの彼方へ
  5. ファウンデーションと地球
  6. ファウンデーションへの序曲
  7. ファウンデーションの誕生

新銀河帝国興亡史(括弧内は作者)

  1. ファウンデーションの危機(グレゴリイ・ベンフォード)
  2. ファウンデーションと混沌(グレッグ・ベア)
  3. ファウンデーションの勝利(デイヴィッド・ブリン)

宇宙の小石

悠々自適の隠居生活をおくっていたシュヴァルツじいさんは、原子核研究所で行なわれた実験によるふとした偶然で、数万年後の銀河世界へタイム・スリップしてしまった。地球は核戦争のために表面のほぼ全域が放射能に汚染され、辺境星域に浮かぶちっぽけな小石にすぎなくなっていた。食糧難に瀕する地球の住民は、ナショナリズムにこりかたまった結社に支配されており、党の一味は銀河帝国を構成する諸世界を相手に、恐るべき陰謀をめぐらしていた。その渦中に巻き込まれた一人の老人の勇気ある行動は、全宇宙を救えるのか。( Amazon内容紹介 より)

 

アシモフの初期長編小説です。

 

主人公は1949年に近所の研究所の事故の余波で数千年の未来へ飛ばされてしまいます。未来の世界で、ある実験の実験台にされた彼は大変な知能と能力を獲得し、その結果、通じなかった言葉も理解できるようになり、現在の自分が置かれた状況も把握できるようになります。

その世界は巨大な宇宙帝国を形成していたのですが、地球は宇宙辺境の小石として忘れ去られていました。その地球の狂信的な一派は帝国に対しある陰謀をたくらんでいたのですが、主人公はその一派と帝国との戦いに巻き込まれていきます。

 

1950年の出版ですので内容は古さを感じるかもしれません。しかし、私も読んだのは40年近く前になりますので断言はできないのですが、レビューを見てもその古さを感じることは無いとあります。

この作品も後にはアシモフのファウンデーションシリーズに位置づけられる作品ですが、そもそも独立した作品として書かれた作品であり、単体として面白く読めます。

私の纏め方が下手で薄っぺらい物語に思えそうですが、アシモフの作品らしく読みやすく、スケールの大きい、SFらしい作品です。

 

本作品を含めて以下の三作品が「トランターもの」と言われ、ファウンデーションの前史にあたります。

  1. 宇宙の小石
  2. 暗黒星雲の彼方に
  3. 宇宙気流