沈まぬ太陽 [映画版]

魂が、震える。信念は決して消えない。激動の昭和を駆けぬけた男の生き様とは…。山崎豊子原作の国民的ベストセラーを、渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二といった豪華キャストで映画化!終戦から復興を遂げた日本が経済大国へと急成長した激動の時代。主人公・恩地が歩む波乱の人生は、未曾有の航空事故から、やがて政界を巻き込んだ波乱の展開を迎えていく…。(「Oricon」データベースより)

 

原作自体に感情移入できなかったからなのか、映画も不毛地帯ほどの感慨はありませんでした。

沈まぬ太陽

広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、猟銃を構える一人の男がいた。恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。エリートとして将来を嘱望されながら、中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に耐える日々は十年に及ぼうとしていた。人命をあずかる企業の非情、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命―。人間の真実を問う壮大なドラマが、いま幕を開ける。(「BOOK」データベースより)

 

航空業界を舞台にした物語で、文庫本で全五巻にもなる長編の社会派小説です。

 

主人公は組合活動を委員長として率いた恩地元という人物で、その先鋭的な態度から会社と対立します。

その結果左遷され、ケニアのナイロビ支店等の地を8年もの間転々とすることになり、この間がアフリカ編として描かれます。

次にやっと帰国した日本でも閑職に追いやられ、たまたま起こった御巣鷹山墜落事故の担当者として遺族らのために奔走する姿が御巣鷹山編として描かれます。

最後に、恩地が会長室部長に抜擢され会社の改革に尽力する姿が「会長室篇」とされています。

 

本書はこれまでの山崎豊子氏の作品とは異なり、かなりの読みにくさを感じました。

読了後、著者の言葉としての「あとがき」だったと思いますが、「初めての手法」をとった、という意味の言葉が書いてありました。

「限りなくノンフィクションに近いフィクション」ということですが、そのことは文章もドキュメンタリータッチということなのでしょうか、その手法のために読みにくいと感じたのでしょうか。結局はっきりとした理由は分かりませんでした。

本書については「限りなくノンフィクションに近い・・・」という文言のためか、事実と異なるという批判がかなりあったそうです。実際、ちょっとネットで見ても様々の意見が書かれています。

 

やはりあくまで小説なのだと、フィクションとして楽しんだ方が良さそうです。

白い巨塔

国立大学の医学部第一外科助教授・財前五郎。食道噴門癌の手術を得意とし、マスコミでも脚光を浴びている彼は、当然、次期教授に納まるものと自他ともに認めていた。しかし、現教授の東は、財前の傲慢な性格を嫌い、他大学からの移入を画策。産婦人科医院を営み医師会の役員でもある岳父の財力とOB会の後押しを受けた財前は、あらゆる術策をもって熾烈な教授選に勝ち抜こうとする。(「BOOK」データベースより)

 

医学界の腐敗をあからさまに描き出した社会派の長編小説です。

 

昔、テレビで放映されていたのを見た記憶があります。田宮二郎演じる主人公の財前五郎は勿論、山本學の里見脩二が田宮二郎を上回る印象を残していました。

このテレビを見たのが先で、その後原作を読んだのかもしれません。そこらの記憶はあいまいです。

本作品は繰り返し映像化されています。田宮版「白い巨塔」には映画版とテレビドラマ版とがありますが、テレビドラマ版が最も評価が高いと記憶しています。近年では、2003年の唐沢寿明版があり、評判になりました。

 

 

しかし、本作品が閉鎖的であった大学病院の医局の内実を明らかにし、1960年代の各方面に大変な影響を与えたのだと後に聞きました。

私が見た田宮版のテレビ放映が1978年ということですから、原作を読んだのもこの頃です。多分「白い巨塔」を読んで山崎豊子作品にはまったと思うのです。「不毛地帯」(新潮文庫 全五巻)も「華麗なる一族」(新潮文庫 全三巻)もこの当時一気に読んだ筈です。

 

 

特に「白い巨塔」は、大学病院の医局という全く未知の社会が描かれていて、そこで繰り広げられる人間模様が尋常ではない緊迫感をもって描写されています。

何より自分の野心の実現のためには手段を選ばない主人公財前五郎が実に生き生きと描写されており、その財前に対する良心とも言うべき里見脩二やその他のキャラクターが非常に良く描けていることなど、物語としての面白さの要素が満ち溢れているのです。

 

小説とはかくあるべきというお手本のような作品です。是非読むべきです。

不毛地帯 [ DVD-BOX フジテレビ開局50周年記念ドラマ ]

山崎豊子の不朽の名作を唐沢寿明主演でドラマ化したシリーズのBOX。終戦後、ソ連軍に拘束され強制労働に11年間耐え抜き、昭和31年に帰国した壹岐正。その後、彼は部下たちの就職の世話に専念する。第1話から第10話を収録。(「キネマ旬報社」データベース -第1集- より)

 

唐沢寿明主演のテレビドラマ版です。

不毛地帯 [ DVD 1979年 毎日放送版 ]

79年にTBS系で放映された、山崎豊子原作の社会派ドラマ第1集。11年間のシベリア抑留から帰還した壹岐正は、近畿商事に入社し熾烈な競争を繰り広げるビジネスの世界へ足を踏み入れていく。第1話から第11話を収録。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

平幹二朗が主演を務めた、1979年の毎日放送版です(DVD全9巻)。

不毛地帯 [ DVD 映画版 ]

戦闘機売り込みの疑惑事件を背景に、商社と政財界の黒い断面を描いた、山崎豊子原作を映像化した社会派問題作。(「Oricon」データベースより)

 

演者も粒ぞろいであり、監督が山本薩夫というだけあって重厚で見ごたえのある映画でした。

不毛地帯

拷問、飢餓、強制労働――地獄のシベリアから生還した男。商社マンの孤独な戦いを通じて戦後史を活写する記念碑的長編。
大本営参謀・壹岐正は、終戦工作に赴いた満州でソ連軍に抑留される。酷寒のシベリアで、想像を絶する飢餓と強制労働に11年にわたって耐え抜き、ついに昭和31年、帰還を果たした。その経歴に目を付けた近畿商事の社長大門の熱心な誘いに応え、第二の人生を商社マンとして歩むことを決意。地獄の抑留生活の傷も癒えぬまま、再び「商戦」という名の新たな戦いに身を投じる。(「内容紹介」より)

 

一人の元大本営参謀をモデルに、とある商社での仕事に打ち込むことで生きる意味を見出していく男の姿を描いた、文庫本で全五巻という長さの長編小説です。

 

私の本棚に「沈黙のファイル」という本があります。共同通信社社会部が瀬島龍三元大本営参謀に焦点を当てたルポルタージュです。

ここに描かれている瀬島龍三元大本営参謀が本書「不毛地帯」の主人公壱岐正のモデルだと言われています。

 

 

本書の前半ではシベリア抑留のことが書かれていますが、私たち戦争を知らない世代にとっては想像すらできない過酷な状況です。

このシベリア抑留については様々な場面で書かれ、映像化されているのを目にしますが、この「不毛地帯」の描写ほど詳細に語られている小説は、私は読んだことはありません。

 

その抑留時代を経て、壱岐は参謀としての経験を買われ商社に勤めます。そして、自衛隊の戦闘機選定に関わりロッキード事件を思わせる仕事を成し遂げるのです。

その後、自動車、石油と重要品目に関わり世界を駆け巡ることになります。

 

会社ひいては国に対する奉公と、死んでいった仲間に対する思いとの間で煩悶する主人公がいるのですが、そうした思いは日常の経済活動の中で押しつぶされていきます。

途中、かつての軍人仲間の一人が戦没者の母体を弔うために比叡山延暦寺での千日回峰行を行う場面がありますが、ここでの会話と千日回峰行の描写は特に印象的でした。

 

30年以上も前に読んだ本なのですが映画の記憶とも合わせ、未だに鮮烈な印象を残している本です。是非読むべき本です。

ちなみに、本書は仲代達矢主演で映画化されています。この映画もいい映画でした。

 

 

また、テレビドラマ化もされており、最初は1979年に平幹二朗主演で毎日放送で放映されています。また、2009年にはフジテレビで唐沢寿明主演で放映されています。