サマーレスキュー ~天空の診療所~

北アルプスに夏の間だけ開設される診療所がある。40年前、「山で亡くなる人を見たくない」とその開設に奔走した山荘の男と、その思いに応えようと山に入った医師の物語をはじめ、過酷な環境の中で「医療とは」「命とは」という問いを突きつけられて悩み、成長してゆく人々の姿を描く。(「BOOK」データベースより)

 

北アルプスに開設された診療所を舞台にした、ヒューマンドラマです。

 

刑事・雪平夏見シリーズ』がそこそこ面白かったので同じ作者の作品を何冊か借りてみた中の一冊です。

結論から言うと、この本はまあそこそこ面白く読めました。でも他の本はそこまではなかったように思えます。

 

 

本書は山の診療所の物語。お医者さんたちの活躍がテーマなので、一応命を考えさせられることには間違いはなく、語弊はありますが物語としてそれなりに面白かったです。

 

山を舞台にした物語と言えば、笹本稜平の『春を背負って』という作品があります。

この作品は、山小屋を訪れる人々の人間ドラマを描いた、感動な物語であると共に清々しさも漂う、爽やかな読後感を持つ物語です。

また、コミックではありますが、ボランティアの山岳救助員三歩の姿を描いた、石塚真一が描く『岳』という作品もまた心に残る作品でした。

 

 

しかし、作者には申し訳ないけど、何となく物語が表面的に感じられてしまうのは何故でしょうか。

この作者の本は他にも借りたのですが、あと一冊を読んだところで他はざっと眺めて返してしまいました。

刑事・雪平夏見シリーズ』では主人公のぶっきら棒と言うか、感動という感情をどこかに置き忘れてきたような性格にこの文体がうまくマッチしていたのでしょうが、舞台設定が変わるとそれが裏目に出るのでしょうか。文章の素人の私にはよく分かりませんが、残念です。

自信を持ってお勧めですとは言えませんが、まあ、読んでみても良いのではないでしょうか。

アンフェア the movie

篠原涼子が孤高の女刑事を演じる人気TVドラマシリーズの劇場版第1弾。警視庁公安部の警部補・雪平夏見は警察内部の不正が書かれた機密文書を追跡。そんな中、娘が事件に巻き込まれて怪我を負い、さらに搬送先の病院がテロリストに占拠されてしまう。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

悪いけど、ひどいです。こんな設定の映画がよくできたと思いました。

もう少し物語の前提となる舞台をきちんと組み立ててくれなければ役者さんがどれほど頑張ろうと生きません。

 

国家の最高機密を扱う機関の最高のセキュリティーが施されている筈の病院に、一刑事がそれも地下道から侵入できるなんて設定はありえません。

また、テロリストが待ち構えている建物にSATが単純にそれもひと固まりで突入するし・・・。こんなのは序の口で、言いたいことは山ほどあります。

だから日本のアクション物はレベルが低いということになるのではないのでしょうか。

 

この映画を面白いという人もいるからヒットとしたのでしょうし、あまり批判は書きたくないのですが、この映画に関しては少々ひどすぎたので、ごめんなさい。

刑事・雪平夏見シリーズ

刑事・雪平夏見シリーズ(2020年03月22日現在)

  1. 推理小説
  2. アンフェアな月
  3. 殺してもいい命
  1. 愛娘にさよならを
  2. アンフェアな国

 

テレビドラマは大河くらいしか見ない私ですが、テレビドラマ「アンフェア」の結構良い評判に魅かれ、ケーブルテレビで映画「アンフェア the movie」があった時に見てみる気になりました。

しかし、その出来があまりにひどく、当然、原作など勿論読む気にはなりませんでした。

 

 

ところが、ある日たまたま図書館で「アンフェアの原作」という謳い文句に魅かれて『殺してもいい命』を借りてみたところ、これが構面白いのです。

無駄に美しいと評される雪平夏見の活躍が、誉田哲也が描く『姫川玲子シリーズ』の主人公である姫川玲子にも似ていながら、また独自のカラーを持って活躍しているではないですか。すぐにこの作家の作品を多数予約しました。

 

 

すると、原作である『刑事・雪平夏見シリーズ』は映画版とは異なりシリーズそのものが面白かったのです。雪平夏見の破天荒ぶりは突き抜けていて、それが作品世界をうまく構築していました。

こういう物語は嫌いじゃありません。正直なところ、『姫川玲子シリーズ』と比べれば作者には申し訳ないけど魅力は落ちますが、この物語はそれとして面白く、お勧めです。

 

 

ただ、TVドラマは未見ですが、映画はいただけない。