北アルプスに夏の間だけ開設される診療所がある。40年前、「山で亡くなる人を見たくない」とその開設に奔走した山荘の男と、その思いに応えようと山に入った医師の物語をはじめ、過酷な環境の中で「医療とは」「命とは」という問いを突きつけられて悩み、成長してゆく人々の姿を描く。(「BOOK」データベースより)
北アルプスに開設された診療所を舞台にした、ヒューマンドラマです。
『刑事・雪平夏見シリーズ』がそこそこ面白かったので同じ作者の作品を何冊か借りてみた中の一冊です。
結論から言うと、この本はまあそこそこ面白く読めました。でも他の本はそこまではなかったように思えます。
本書は山の診療所の物語。お医者さんたちの活躍がテーマなので、一応命を考えさせられることには間違いはなく、語弊はありますが物語としてそれなりに面白かったです。
山を舞台にした物語と言えば、笹本稜平の『春を背負って』という作品があります。
この作品は、山小屋を訪れる人々の人間ドラマを描いた、感動な物語であると共に清々しさも漂う、爽やかな読後感を持つ物語です。
また、コミックではありますが、ボランティアの山岳救助員三歩の姿を描いた、石塚真一が描く『岳』という作品もまた心に残る作品でした。
しかし、作者には申し訳ないけど、何となく物語が表面的に感じられてしまうのは何故でしょうか。
この作者の本は他にも借りたのですが、あと一冊を読んだところで他はざっと眺めて返してしまいました。
『刑事・雪平夏見シリーズ』では主人公のぶっきら棒と言うか、感動という感情をどこかに置き忘れてきたような性格にこの文体がうまくマッチしていたのでしょうが、舞台設定が変わるとそれが裏目に出るのでしょうか。文章の素人の私にはよく分かりませんが、残念です。
自信を持ってお勧めですとは言えませんが、まあ、読んでみても良いのではないでしょうか。