蝦夷地別件

十八世紀末、蝦夷と呼ばれるアイヌ民族は和人の横暴に喘いでいた。商人による苛烈な搾取、謂れのない蔑みや暴力、女たちへの陵辱…。和人との戦いを決意した国後の脇長人ツキノエは、ロシア人船長に密かに鉄砲三〇〇挺を依頼する。しかし、そこにはポーランド貴族マホウスキの策略があった。祖国を狙うロシアの南下政策を阻止するべく、極東に関心を向けさせるための紛争の創出。一方で、蝦夷地を直轄地にしようと目論む幕府と、権益を死守しようとする松前藩の思惑も入り乱れていた。アイヌ民族最後の蜂起「国後・目梨の乱」を壮大なスケールで描きだす超大作。(上巻:「BOOK」データベースより)

 

1789年に実際に起きたアイヌの反乱を題材に書かれた、文庫本で全三巻になる長編小説です。

 

18世紀後半における江戸幕府及び豪商のアイヌの人たちに対する搾取の状況の描写はアイヌの反乱を予期させるものとして書かれたのでしょうが、その描写をも超える歴史的な現実を感じさせます。

「夜のオデッセイア」とは異なり、読み通すにはかなりの体力を要します。

勿論、作者が船戸与一なのですから面白いことは間違いないですが、ロシア革命まで見通す歴史描写と松平定信や松前藩、アイヌの人たちという多数の登場人物の描写が、1800枚という大長編の中で詳細に語られるので息つく間がなかなか無いのです。

しかし、この手の濃密な物語が好きな人にはたまらない作品でしょう。

ちなみに、この作品は第14回日本冒険小説協会大賞を受賞しています。

夜のオデッセイア

客の罵声を浴びながらリングに転がる。八百長ボクシングで金を稼ぐおれは、トレーナーの野倉と大型ワゴン“オデッセイア”でアメリカ大陸を漂泊中、ベトナム帰りの二人のプロレスラーと合流。イラン人への手紙をマイアミに届ける過程で、パーレビ国王の隠し財産を巡る闘いに巻き込まれていた。CIAやモサド、マフィアと闘う一匹狼達の群れ。(「BOOK」データベースより)

 

ボクサー崩れとそのトレーナーの二人とベトナム帰りの元プロレスラーの二人とが、頼まれものの手紙をCIAやモサド、マフィアに襲われつつ、「オデッセイア」と名付けられたワゴンに乗ってマイアミまで届ける、ロードムービー小説版です。

 

この作家の他の作品と比べると何となくの能天気さがつきまとっている点は異色かもしれませんが、如何にもこの作家らしい冒険活劇小説です。

登場人物夫々のキャラクターが十分に書き込まれ、テンポよいアクションに引き込まれること間違いなし、の物語です。

 

この作品『夜のオデッセイア』は、南米三部作に対抗して『炎流れる彼方』『蟹喰い猿フーガ』と共に北米三部作と読んでもいいかもしれません。(下掲の『炎流れる彼方』はKindl版です)

 

 

なお、本書は古書しか無いようで、更には文庫本の写真もありません。そこで、書籍写真は新刊書のものを借りていますので、写真のリンク先は新刊書になっています。

山猫の夏

舞台はブラジル東北部の町エクルウ。この町では、アンドラーデ家とビーステルフェルト家が、互いに反目し合い、抗争を繰り返している。ある日、アンドラーデ家の息子・フェルナンとビーステルフェルト家の娘・カロリーナが、駆け落ちする。その捜索を依頼された謎の日本人・山猫。ブラジル版ロミオとジュリエットに端を発した、山猫による血で血を洗う追跡劇が始まる。冷酷非道な山猫の正体と思惑、そして結末に明らかにされる衝撃の事実とは…?冒険小説の第一人者が描く、手に汗握る怒涛のストーリー。究極のエンタテイメント小説が復刊(「BOOK」データベースより)

 

名作といわれる長編の冒険小説です。

 

舞台はブラジルのエクルウという田舎町。エクルウでは抗争中の2つの家の息子と娘が駆け落ちをし、「山猫」と名乗る日本人が追跡者として雇われることとなる。

エクルウでバーテンダーをしていた日本人の「俺」は「山猫」の通訳兼助手となり、「山猫」の語り部として共に行動することになるのだった。

黒沢明の「用心棒」のような設定のアクション小説で、第3回日本冒険小説協会大賞と第6回吉川英治文学新人賞を受賞しています。

 

 

本作『山猫の夏』と『神話の果て』『伝説なき地』とで南米三部作と呼ばれています。(下掲の二冊はKindl版です)

 

 

本作『山猫の夏』はこの作家の初期作品のうちの一冊ですが、舞台設定や登場人物の書き込みは情報豊富で、なお且つ痛快さを持っています。

 

軽く読める本ではありませんが、いわゆるライトノベル好きな人にも読み易い本かもしれません。30年近くも前の作品ですが、古さは感じないと思います。