777 トリプルセブン

777 トリプルセブン』とは

 

本書『777 トリプルセブン』は『殺し屋シリーズ』の第四弾で、2023年9月に296頁のハードカバーでKADOKAWAから刊行された長編のサスペンス小説です。

テンポのいい会話、回収されていく伏線の心地よさなど、この作者の特徴がはっきりと表れたとても面白く読んだ作品でした。

 

777 トリプルセブン』の簡単なあらすじ

 

そのホテルを訪れたのは、逃走中の不幸な彼女と、不運な殺し屋。そしてー。やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだったー。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる…。『マリアビートル』から数年後、物騒な奴らは何度でも!(「BOOK」データベースより)

 

777 トリプルセブン』の感想

 

本書『777 トリプルセブン』は、エンターテイメントに徹したサスペンス感満載の作品で、本『殺し屋シリーズ』第二作の『マリアビートル』の続編的な立場の作品です。

というのも、本書には『マリアビートル』に登場していた「天道虫」という異名を持つ殺し屋の七尾が登場していて、ある列車の中で話が展開していた『マリアビートル』と同様に基本的に「ウィントンパレスホテル」というホテルの中が舞台であり、緊迫感に満ちた展開を見せてくれます。

また、七尾や殺し屋たちから追われる身である紙野結花という女性ほかの一人称多視点で物語が進む点も同じです。

 

本書冒頭から、モウフマクラという殺し屋たちの仕事の場面に続いて、『マリアビートル』で派手なアクションを繰り広げた七尾が、これまた同様に七尾に仕事を持ってきてくれる真莉亜から、「部屋に行って荷物を渡す」簡単な仕事だと言われ荷物を届けるところから始まります。

そして、忘れるということができない驚異的な記憶力の持ち主である紙野結花という女性をターゲットにした殺し屋たちとの闘争に巻き込まれていくのです。

その能力に眼をつけ彼女を雇ったのが解剖マニアだという噂されているという男だったのであり、彼女を殺そうとしているのもその男だったのです。

その乾から命を狙われている紙野結花が依頼したのがココという名の凄腕のハッカーでもある逃がし屋であり、乾の依頼により紙野結花を殺そうとやってきたのが、エドという男をリーダーとするセンゴクアスカナラカマクラヘイアンという六人組でした。

その他に、高良奏田コーラソーダ)という二人組、それに政治家の蓬実篤、その秘書の佐藤池尾という記者などが登場します。

 

本書『777 トリプルセブン』の魅力は、第一には何と言っても登場人物の会話のテンポの良さ、その会話の魅力にあると思います。

基本的に、本書での会話の中に金言めいたものがあるとか、心に沁みる文言があるとかいうものではではありません。

ただ、登場人物の交わす雑談の中に何となくの共感を感じ、感情移入してしまうというものであり、例えば本書冒頭からモウフとマクラとの間で交わされる会話から惹き込まれてしまうのです。

 

次いで、この物語では殺し屋たちの複雑に絡みあう行動を追ってサスペンス感に満ちた展開を見せてくれていて読者の関心を引き付けて離しませんが、この点も魅力の一つでしょう。

また、強烈な個性を持った殺し屋たちの存在がそれぞれに光っていますが、このような登場人物たちの存在もまた本書の魅力に一役買っています。

さらに言えば、作品全体を包む雰囲気がスマートでスタイリッシュでありつつ、張られた伏線を丁寧に回収していくその見事さ、そして最終的にもたらされる意外性なども読者を惹き付ける要素です。

 

実を言えば本書『777 トリプルセブン』を読み進める中で、物語の展開が都合が良すぎるように感じたこともあります。

しかし、そうした思いはいつの間にか霧消しており、ケチのつけようがないエンターテイメント小説として心に残っているのです。

作者の伊坂幸太郎の作品の中でも、特にこの『殺し屋シリーズ』は私の感性にもピタリとはまったようで、早くも続巻を期待しているのです。