メイズ・ランナー 2 砂漠の迷宮

太陽フレアによって地上の大部分が破壊されてしまった現在。世界を救うため、WICKEDという機関を創設し、その鍵となるべく集められていたトーマスたち。巨大迷路を無事に脱出した次のステージは、灼熱の世界。白熱の太陽に照らされ、干からびた平地が延々と続いている中に放り出された彼らは、北に小さく見える街を目指す。はたして生き残ることはできるのか―。彼らの友情が、今試される!大人気、サバイバルアクション!(「BOOK」データベースより)

メイズ・ランナー三部作の二作目です。一作目からすると、個人的な関心は下がったとしか言えない作品でした。

何より本巻では、太陽フレアに襲われた世界を救うべく設立されたWICKEDという機関の存在、などの謎の一端は既に明らかになっていること、それに一番の関心事であった「迷路」の存在が無くなっていることが大きな障害になっています。

もちろん、本巻でもWICKEDという機関そのものの正体や、トーマスとテレパシーでの意思疎通が可能だったテレサの存在がまだ明らかになっているわけではありません。更に、新たな仲間たちとの灼熱の世界での冒険譚が待っています。

前巻ほどではないにしても、主人公たちが挑戦させられる「試験」の持つ意味、トーマスがたまに見せる過去の記憶、そしてテレサとの関係と、解明されるべき残された謎への期待感はそれなりにあるのです。

その上でまっている冒険譚はそれなの面白さは持っています。ただ、どうしても既存のアンデッドものに近い印象はぬぐえず、決して物語としての個性が豊かとは言えないところはネックですが。

メイズ・ランナー

トーマスがふと意識を取り戻すと、思い出せるのは自分の名前だけ。見渡す限り広がる草原の先には、大きな壁が見えた。その外に広がるのは巨大迷路。夜になると閉ざされてしまう巨大迷路は、二度と同じ道順にならないという。月に一度、“グレード”に送り込まれてくる少年たち。迷路に隠された秘密を解くためにコミュニティを形成し、それぞれの役割を与えられていた。全世界が虜になったベストセラー、ついに登場!(「BOOK」データベースより)

もともとはアメリカのヤングアダルト向けSFスリラー小説として書かれた作品です。ところがヤングアダルト向けという枠を超えて世界で人気が出、遂に映画化されることにもなりました。小説が三部作で書かれていることから映画も三部作になるそうです。

SFというよりはサスペンスフルな痛快冒険小説というほうがいいかもしれません。一応この物語の舞台設定は謎に包まれており、この謎を解明することがこの物語の醍醐味になっています。ただ、重厚に書きこまれた物語が好きな人には物足りない小説だとの危惧はあり、単純に物語の世界観を楽しみたい人向けの物語だと思われます。

しかし、私のような雑読派にはなかなかに面白い設定で、囚われの身である自分たちの解放に向けてひたすらに挑戦する少年たちがいて、謎は新しい謎を産む姿が描かれます。

主人公は自分の名前がトーマスということ以外、自分のことを何も覚えていません。目が覚めるとそこは巨大な壁に囲まれた土地であり、その壁にある巨大な扉の先には日々その道筋を変える迷路が存在するだけです。この世界は何なのか、壁にある迷路はどこに続いているのかなど、謎は深まるばかりなのです。

自分らのいる世界についての謎を解明していく、と言えば近時に読んだ本の中で言えばベロニカ・ロスの『ダイバージェント』があります。“性格”により「無欲」「高潔」「博学」「平和」「勇敢」の五派閥に分けられた世界。「人格の欠陥」こそが戦争の元凶であると考え、邪悪な性質の排除のために複数の派閥に分類し平和を守る、というのがこの世界のコンセプトだそうです。同じくヤングアダルトに分類されるこの作品ですが、やはり舞台設定から甘さが見える点では本書よりも軽いかもしれません。

同じくヤングアダルト作品でのヒット作と言えば、『ハンガー・ゲーム』があります。この作品も似た設定で、各地域から選抜された若者たちの中から勝ち残った一人だけ命を永らえることができる社会です。この理不尽な社会に対し戦いを挑むのです。

これらの作品に共通しているのは主人公が今いる状況から脱却し、自由を得ようと行う冒険が描かれていることです。

そういう点ではクラークの『都市と星』などもその範疇にはいるのかもしれませんが、小説としての完成度は全く異なりますね。人によっては一緒にするなと叱られるかもしれません。クラークの作品はそのスケールにおいて壮大であり、ある種形而上学的なテーマをも持っているのに対し、上記の各作品はそうした物語ではなく、単に物語の流れを楽しむだけだと思えます。

本書『メイズ・ランナー』は、難しいことは考えずに単純に世界観を楽しむ、そういう読み方が好きな人には結構向いている作品だと思われます。