メイズ・ランナー 2 砂漠の迷宮

本書『メイズ・ランナー 2 砂漠の迷宮』は、「メイズ・ランナー三部作」の第二作で、文庫本で517頁という長さの長編の冒険SF小説です。

第一作目にくらべSF色は薄れていてより痛快冒険小説的ですが、個人的な関心は下がったとしか言えない作品でした。

 

『メイズ・ランナー』の簡単なあらすじ 

 

太陽フレアによって地上の大部分が破壊されてしまった現在。世界を救うため、WICKEDという機関を創設し、その鍵となるべく集められていたトーマスたち。巨大迷路を無事に脱出した次のステージは、灼熱の世界。白熱の太陽に照らされ、干からびた平地が延々と続いている中に放り出された彼らは、北に小さく見える街を目指す。はたして生き残ることはできるのか―。彼らの友情が、今試される!大人気、サバイバルアクション!(「BOOK」データベースより)

 

『メイズ・ランナー』の感想

 

本書『メイズ・ランナー 2 砂漠の迷宮』は、先にも述べた通り個人的には今一つでした。

というのも、太陽フレアに襲われた世界を救うべく設立されたWICKEDという機関が存在することなどの謎の一端は既に明らかになっていることが原因です。

加えて、一番の関心事であった「迷路」の存在が無くなっていることが大きな障害になっています。

 

もちろん、本巻『砂漠の迷宮』でもWICKEDという機関そのものの正体や、トーマスとテレパシーでの意思疎通が可能だったテレサの存在などがまだ明らかになっているわけではありません。

そして、新たな仲間たちとの灼熱の世界での冒険譚が待っています。

前巻ほどではないにしても、本巻『砂漠の迷宮』でも主人公たちが挑戦させられる「試験」の持つ意味や、トーマスがたまに見せる過去の記憶、そしてテレサとの関係など、解明されるべき残された謎への期待感はそれなりにあるのです。

その上で、待っている冒険譚はそれなの面白さは持っています。

ただ、どうしても既存のアンデッドものに近い印象はぬぐえず、決して物語としての個性が豊かとは言えないところはネックです。

 

結局、前巻ほどの期待感は持ちえないままに、前巻で構築された物語世界の魅力のままに引きずられて読んだ、というところです。

面白くないわけではないものの、前巻ほどではない、というのが正直な感想です。

メイズ・ランナー

本書『メイズ・ランナー』は、「メイズ・ランナー三部作」の第一作で、文庫本で539頁という長さの長編の冒険SF小説です。

SFというよりはサスペンスフルな痛快冒険小説とでもいうべき、気楽に読める物語です。

 

『メイズ・ランナー』の簡単なあらすじ 

 

トーマスがふと意識を取り戻すと、思い出せるのは自分の名前だけ。見渡す限り広がる草原の先には、大きな壁が見えた。その外に広がるのは巨大迷路。夜になると閉ざされてしまう巨大迷路は、二度と同じ道順にならないという。月に一度、“グレード”に送り込まれてくる少年たち。迷路に隠された秘密を解くためにコミュニティを形成し、それぞれの役割を与えられていた。全世界が虜になったベストセラー、ついに登場!(「BOOK」データベースより)

 

主人公は自分の名前がトーマスということ以外、自分のことを何も覚えていません。

目が覚めるとそこは巨大な壁に囲まれた土地であり、その壁にある巨大な扉の先には日々その道筋を変える迷路が存在するだけです。

この世界は何なのか、壁にある迷路はどこに続いているのかなど、謎は深まるばかりなのです。

 

『メイズ・ランナー』の感想

 

本書は、もともとはアメリカのヤングアダルト向けSFスリラー小説として書かれた作品ですが、ヤングアダルト向けという枠を超えて世界で人気が出、遂に映画化されることにもなりました。

小説が三部作で書かれていることから映画も三部作になるそうです。

一応この物語の舞台設定は謎に包まれており、この謎を解明することがこの物語の醍醐味になっています。

ただ、重厚に書きこまれた物語が好きな人には物足りない小説だとの危惧はあり、単純に物語の世界観を楽しみたい人向けの物語だと思われます。

しかし、私のような雑読派にはなかなかに面白い設定で、囚われの身である自分たちの解放に向けてひたすらに挑戦する少年たちがいて、謎は新しい謎を産む姿が描かれます。

 

自分らのいる世界についての謎を解明していく、と言えば近時に読んだ本の中で言えばベロニカ・ロスの『ダイバージェント』があります。

“性格”により「無欲」「高潔」「博学」「平和」「勇敢」の五派閥に分けられた世界。「人格の欠陥」こそが戦争の元凶であると考え、邪悪な性質の排除のために複数の派閥に分類し平和を守る、というのがこの世界のコンセプトだそうです。

同じくヤングアダルトに分類されるこの作品ですが、やはり舞台設定から甘さが見える点では本書よりも軽いかもしれません。

 

 

同じくヤングアダルト作品でのヒット作と言えば、『ハンガー・ゲーム』があります。

この作品も似た設定で、各地域から選抜された若者たちの中から勝ち残った一人だけ命を永らえることができる社会です。この理不尽な社会に対し戦いを挑むのです。

 

 

これらの作品に共通しているのは主人公が今いる状況から脱却し、自由を得ようと行う冒険が描かれていることです。

そういう点ではクラークの『都市と星』などもその範疇にはいるのかもしれませんが、小説としての完成度は全く異なります。

人によっては一緒にするなと叱られるかもしれません。クラークの作品はそのスケールにおいて壮大であり、ある種形而上学的なテーマをも持っているのに対し、上記の各作品はそうした物語ではなく、単に物語の流れを楽しむだけだと思えます。

 

 

本書『メイズ・ランナー』は、難しいことは考えずに単純に世界観を楽しむ、そういう読み方が好きな人には結構向いている作品だと思われます。