明日夜24時、日本の主要都市にミサイルを撃ち込む―。官邸に送りつけられた犯行予告動画。猶予は30時間。緊迫が高まるなか、航空自衛隊岐阜基地から、XASM‐3ミサイル4発を搭載した戦闘機F‐2が盗まれた。府中基地、ミサイル防衛に携わる航空自衛官・安濃将文は戦慄した。かつての上司が一連のテロに関わっているのか?日本を、家族を、自分たちの手で守れるか?決死の攻防に、一人の自衛官が立ち向かう!(「BOOK」データベースより)
航空自衛隊を舞台としたミリタリーサスペンスです。
航空自衛隊岐阜基地からミサイル4発を搭載した戦闘機が盗まれ、そのうちの一発が富士の樹海に打ち込まれた。テロリストからあらかじめ予告されていた攻撃だと思われた。
ミサイル防衛統合任務部隊に所属する安将文一等空尉は、自分の恩師で、かつての上官でもある、加賀山一郎元一等空佐の犯行への加担を疑い、加賀山を探し始めるのだった。
いかにもこの作家の作品らしいスケール感のある謀略小説でした。しかしながら、私が福田和代氏著作に対し、少ない読書数ながらも感じる舞台設定の粗さの見られる作品だとも感じました。
例えば、ミサイルを装備した現役の戦闘機があまりにも簡単に盗み出せてしまうこともそうです。
この戦闘機の奪取行為そのものはこの小説の主眼からすると枝葉なことかもしれませんが、この奪取行為がテロリストの今後の作戦の大前提になっていることでもあり、もう少し丁寧に、読み手を納得させるだけの描写をしてほしく思いました。
更に言えば、加賀山らの犯行動機も今一つ説得力に欠けます。加賀山自身も愛している日本という国にミサイルを撃ち込もうとするのですから、読者を十分に納得くさせるだけの理由を明示してくれないと、この物語に感情移入できないのです。
残念ながら、以上のような疑問点は他にも少なからず見受けられます。ましてや、この手の、北の国のテロリストという設定や、自衛隊員の愛国心から起こすクーデターもどきの話は一つのパターンとして有るのですし、読み手も、それなりのものを期待して読みますから、ハードルはかなり高くなると思います。
結局、本書では中心となるのはどの人物なのかも明確でないまま、作者の最も言いたいことがあいまいになって終わってしまった印象です。
残念ながら、『特殊警備隊ブラックホーク』『ハイ・アラート』そして本書と、これまで読んだ三冊が皆、似たような印象であるということは、私の好みとは一致しない作家さんだと思えてしまいます。
勿論、冒険小説としての面白さもそれなりに備えた小説ですので、読み手次第ではかなりはまる作品であることは間違いのないところでしょう。ただ、私の好みはもう少し構成を詰めてほしいと感じるのです。