潜行捜査 一対一〇〇

大晦日に判明した一家惨殺事件。その捜査本部で重要な任についた幸本は、捜査方針の対立から、本部付を解任されてしまう。それから5年、膨大な物証に振りまわされ、事件は迷宮入りの様相を呈してきた。所轄署の生活安全課へと異動となった幸本は、捜査本部と異なる視点で、なおも事件を追っていた。そして偶然に手に入れたある証拠物。捜査員100人を相手に幸本執念の捜査は実を結ぶのか。(「BOOK」データベースより)

 

たった一人で捜査員100人に挑む姿を描く長編の警察小説です。

 

現実に起きた惨殺事件を思わせる捜査本部を意見の対立から解任されてしまった幸本。5年後、別件の関連して当該事件の指紋が見つかるのだが、幸本は上には知らせず自分で捜査しようと思い立つ。

幸本自身の家庭の事情や、警察内部の出世がらみの人間関係など、作品の舞台が通常の刑事ものとは若干色合いが異なります。ほんの少しだけですが今野敏の『隠蔽捜査シリーズ』を思わせたりもしますが、こちらの方がより淡白に感じました。

 

 

ストーリー自体は結構な面白さで物語は進みます。最終的な結論については様々な意見もあるようですが、まあ、個人差でしょう。私はそれなりに面白く読めました。

また、次も読みたいと思います。

撃てない警官

総監へのレクチャー中、部下の拳銃自殺を知った。柴崎令司は三十代ながら警部であり、警視庁総務部で係長を務めつつ、さらなる出世を望んでいた。だが不祥事の責任を負い、綾瀬署に左遷される。捜査経験のない彼の眼前に現れる様々な事件。泥にまみれながらも柴崎は本庁への復帰を虎視眈々と狙っていた。日本推理作家協会賞受賞作「随監」収録、あなたの胸を揺さぶる警察小説集。(「BOOK」データベースより)

 

本書は、連作短編の警察小説集です。

 


 

主人公はノンキャリアではあるがスピード出世で36歳にして警部となり、総務部企画課企画係の係長だった柴崎令司という男です。その男が部下の拳銃自殺の責めを負わされ所轄署に飛ばされます。ここまでが「撃てない警官」の物語。

その後、出世コースへの返り咲きを原動力として所轄署での日常の業務に精勤していきます。その日常の業務が個々の短編で描かれているのです。

その中の一作「随監」は傷害事件の被害届を隠蔽してしまった警察官に関する物語で、短編部門で第63回日本推理作家協会賞を受賞した作品です。

 

とにかく、「出世」が主人公のエネルギーなのでなかなかに共感しにくい人物像です。でも、読み進むうちに組織対個人などの作者の思惑も垣間見れるようになり、それなりに面白く読み終えることができました。

ただ、派手さが全く無いので好みははっきりと分かれるようです。

 

ちなみに、本作品は田辺誠一が主人公を演じ、2016年1月よりWOWOW連続ドラマW『撃てない警官』としてテレビドラマ化されています。