西暦一九九七年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。城岩中学三年B組の七原秋也ら四十二人は、修学旅行バスごと無人の島へと拉致され、政府主催の殺人実験を強制される。生還できるのはたった一人。そのためにはただクラスメイト全員を殺害するのみ―。現代日本を震撼させたジェットコースターデスゲーム・ノヴェル、ついに文庫化。( 上巻 : 「BOOK」データベースより )
“死のゲーム”の開始後十八時間、混乱のうちに既にクラスメイトの半数が死亡していた。秋也は中川典子、転校生の川田章吾とともに政府への逆襲を誓うが、その前に殺人マシンと化した桐山和雄が立ちはだかる。生死の狭間で彼らそれぞれが守ったのは、意志か、誇りか、約束か。中高生を中心に熱狂的な支持を得た新世代青春小説の金字塔。( 下巻 : 「BOOK」データベースより )
中学生同士の殺し合いというセンセーショナルな内容で話題になった、長編の新世代の青春小説(?)です。
極東に存在する「大東亜共和国」という全体主義国家が舞台です。
七原秋也ら本書の登場人物たちは修学旅行のバスの中で眠らされ、とある島で目覚めます。そこで、最後の一人になり生き残るべくクラスメイトを殺さなければならず、生徒の数だけの人間ドラマが展開されます。
中学生同士の殺し合いという内容が内容である上に、深作欣二監督による映画化で話題になった小説です。
設定された国家制度そのものは少々現実感が無く、感情移入がしにくいとは感じました。この世界の状況設定をもう少し書き込んでくれていたらとも思ったものですが、背景説明が冗長になっても物語本体のゲーム性が失われそうだし、難しいところなのでしょう。
物語の内容自体は少々長いきらいはあり、登場人物が中学生であるために筋立てが少々無理と感じるところもあったりと、小説としての完成度は決して評価できません。しかし、結構面白く読みました。最後のオチもその荒さに目をつむればまあ許せる範囲内ではないでしょうか。
でも、何といっても中学生のクラスメイト同士の殺し合いという設定そのものを受け入れられない人が少なからず居るのと思われますし、そう感じるのが当たり前でしょう。
私は虚構は虚構として、映像でもスプラッターでさえ(あまりグロくさえなければ)受け入れる人間なので、物語自体が面白いかどうか、だけが問題なのです。この設定そのものを面白いと感じる感情こそが問題なのかも知れませんが。
本書での救い、と言っていのかどうかは分かりませんが、性描写がないことでしょうか。大人向けの漫画版ではこのエロの要素が増えているそうです。