襷を、君に。

全国中学校駅伝大会―中学3年生の庄野瑞希は大会記録を更新する走りでチームを逆転優勝に導く。しかし、周囲の期待に押し潰され、走る意味を見失った瑞希は、陸上をやめるつもりでいた。一方、福岡・門司港で、倉本歩はテレビの中の瑞希の美しく力強い走りに魅せられる。「あの子のように走りたい」その一心で新進気鋭の港ケ丘高校陸上部に入部するが、部員は歩よりはるかに速い選手ばかりで―。二人の奇跡的な出会いが、新たな風を紡ぎだす!スポーツ小説を多く手掛けてきた著者が少女たちの葛藤と成長を描く、胸を熱くさせる青春小説! (「BOOK」データベースより)

 

駅伝をテーマに、一人の女子高校生の成長を描いた長編の青春小説です。

 

倉本歩はテレビで中継されていた全国中学校駅伝大会での姫路中学校の庄野瑞希という選手の走りに憧れを抱き、自分もあのように走るという夢を持って福岡の港ケ丘高校陸上部に入部します。

しかし、そこは各中学校の実力者が集められていたチームで、駅伝初心者の歩のいるところではありませんでした。何とか入部は認められますが、所詮は二軍若しくは三軍の選手でしかない主人公です。

ただ、主人公の歩は、自分があこがれたあの選手との邂逅を意外な形で果たし、互いに成長していくのです。


駅伝を描いた小説といえば、三浦しをん著の『風が強く吹いている』を始め、堂場瞬一の『チーム』など幾つかの作品があります。

共にに箱根駅伝を舞台にした作品ですが、前者は、主人公ハイジが一人の天才ランナーカケルを見つけたことで、ハイジが住む寮に暮らす面々と共に自身の夢であった箱根駅伝に挑戦しようする物語で、後者は、箱根駅伝本戦出場を逃した大学から、予選会で個人成績が上位に位置した選手が選ばれる学連選抜チームを主題とした作品です。

駅伝といえば箱根駅伝というほどに有名であり、駅伝の頂点にあると言っても過言ではない大会です。そこでの学生たちの汗と涙を見事に再現した小説でした。

 

ところが本書は、今ひとつランニングの息遣いを感じませんでした。勿論、練習などで歩らが走る場面はあります。また、本書終盤でのレースの描写はそれなりに風を感じるイメージはありました。しかし、本書全体として見ると何故か汗を感じなかったのです。

もしかしたら、青春小説としての面白さは感じたので、駅伝は主眼ではなく、歩や瑞希ら選手の生活や成長そのものを描くことが作者の主眼だったのかもしれません。そういいう点ではこの小説は成功しているというべきなのでしょうか。

女子高生のスポーツ小説といえば、誉田哲也の『武士道シリーズ』がありますが、その作品では剣道そのものの魅力もあり、更に剣道を通して見た女子高生らの姿も描かれています。本書では、そこらの印象が薄く、読後での登場人物たちの印象が『武士道シリーズ』ほどには残りませんでした。