むかしむかしあるところに、死体がありました

鬼退治。桃太郎って…えっ、そうなの?大きくなあれ。一寸法師が…ヤバすぎる!ここ掘れワンワン埋まっているのは…ええ!?昔ばなし×ミステリ。読めば必ず誰かに話したくなる、驚き連続の作品集!(「BOOK」データベースより)

 

誰もが知っているお伽話に題をとりミステリとして再構築した本格派のミステリー小説集で、2020年の本屋大賞にノミネートされた作品集です。

 


 

一寸法師の不在証明」 タイトルにみられるとおりに、一寸法師の不在証明(アリバイ)を崩していく様子を描いてあります。

花咲か死者伝言」 花咲かじいさんが殺された。その手にはペンペン草が握りしめられていた。花咲かじいさんのダイイングメッセージに込められた意味は。

つるの倒叙返し」 弥兵衛は、親が借りた借金を取り立てに来た庄屋を殺してしまう。そこに、つうと名乗る一人の女性が訪ねてきて、弥兵衛に恩返しをしたいと言ってきた。

密室竜宮城」 浦島太郎が連れられた行った竜宮城を舞台にした、文字通りの密室殺人劇です。

絶海の鬼ヶ島」 桃太郎に退治された鬼たちのその後を描いた連続殺人が描かれます。いわゆるクローズドサークルものです。

 

本書で舞台となっているお伽話の世界には、それなりのルールがあり、そのルールの中での本格派ミステリーが展開されていきます。

つまりは、例えば第一話目の「一寸法師の不在証明」では、身長が一寸しかない一寸法師のような人物の存在や打ち出の小槌といった小道具の働きを前提に、その打ち出の小槌は自分自身にはかけられない、などの決まりごとがあります。

そんな決まりごとの中で、犯人と目される一寸法師のアリバイをいかにして崩していくか、といういわゆる「アリバイ崩し」などと呼ばれる本格推理小説の論理が展開されるのです。

 

つまり、「原典における特有の設定、小道具、場所をそのまま生かしつつ、大胆な発想、奇抜なトリックを導入することで、新たな民話ミステリーへと再生している」のです(好書好日 : 参照)。

確かに、お伽話の語り口はそのままに、物語の筋を微妙に変えながら、打ち出の小槌のようなお伽話の小道具を利用しつつ、本格ミステリーとしての状況を作り上げ、問題解決の論理を展開させています。

中でも、各種レビューでも評価の高い「つるの倒叙返し」のような考え込まれた作品や、最後の「絶海の鬼ヶ島」のような作品もあります。

この「つるの倒叙返し」は、鶴の恩返しをベースに、庄屋を殺してしまった弥兵衛の物語ですが、タイトルにあるようにいわゆる「倒叙」ものであり、かつちょっとした仕掛けが用意してあります。

また「絶海の鬼ヶ島」は、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせるクローズドサークルものであり、その意外性には感心するしかありません。

 

 

残る「花咲か死者伝言」は犬の次郎目線で語られる哀しみが残る話であり、「密室竜宮城」はいわゆる密室殺人事件ものであって、犯行のロジックだけが追及される、個人的には最も受け入れがたい作品でした。

 

ただ、一番の問題点は私が本格推理小説自体をあまり好まないということです。

事実、本書の中でも評価の高い「つるの倒叙返し」も呼んでいる途中ではその論理の凄さを読み取ることはできませんでした。

いや、そもそも本書自体が高く評価されていることがよく分からないのです。

例えば下掲のように、

  • 紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめする キノベス!2020 2位
  • 読書メーター OF THE YEAR 5位
  • 本の雑誌ミステリーベスト 6位
  • 週刊文春ミステリーベスト10 第7位 (文藝春秋)
  • ミステリが読みたい!2020年版 第8位 (早川書房)
  • 2020本格ミステリ・ベスト10 第9位 (原書房)

各種賞でベスト10には言いているのですから、どう考えても私の評価の低さが問題ありとしか言えません。