ジョーカー・ゲーム

結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく…。吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイ・ミステリー。(「BOOK」データベースより)

日本陸軍内に結成されたスパイ養成学校「D機関」の活躍を描いた五編からなる連作のミステリ短編小説集で、吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞しています。

「ジョーカー・ゲーム」
佐久間陸軍中尉 親日家のアメリカ人ジョン・ゴードンのスパイ疑惑調査
「幽霊(ゴースト)」
D機関訓練生の蒲生次郎 英国総領事アーネスト・グラハムの爆弾テロ計画への参画疑惑
「ロビンソン」
D機関員伊沢和男 英国諜報機関からの脱出
「魔都」
元特高刑事 本間英司軍曹 内通者捜索
「ⅩⅩ(ダブルクロス)」
D機関訓練生の飛崎弘行 二重スパイのカール・シュナイダーの調査

この物語の中心となるのは、「D機関」という、日本陸軍内に結成されたスパイ養成学校です。つまり、「建物に入ってから試験会場までの歩数、及び階段の数」などの質問を採用試験とするような学校であり、実在した中野学校をモデルとするそうです。

私らの年代であれば私らの年代が「陸軍中野学校」と言って理解できる最後の世代でしょうか。文字通り東京都中野区に実在したスパイ養成機関であり、市川雷蔵主演で映画化もされました。

この本の解説を書かれている元外務省主任分析官であった佐藤優氏によりますと、こうした質問は、モサド(イスラエル諜報特務庁)やSVR(ロシア対外諜報庁)の訓練部局の幹部から聞いた話とも符合するそうです。また、本書で描写されているインテリジェンスの各種手法も決して絵空事ではなく、現実の諜報活動での実態に即しているとも書かれています。



このD機関の設立者でもある結城中佐を中心として、D機関の訓練生や、見どころのある現役の軍人を育て、現場に送り出します。その上で、いかなる事態にも対処できる諜報員を育て上げるのです。その際、伝説的なスパイである結城中佐の実力を垣間見せ、本書の魅力となっています。

佐藤氏の言葉にもあったように、結城中佐を中心とする訓練生らの諜報活動はリアリティーに富んでいます。そうしたリアリティーのある活動を下地として、ミステリーとしても面白く組み立てられています。

この作品は、ジャニーズの亀梨和也主演で映画化もされています。短編をつなげて一つのストーリーを作り上げてあるようですが、レビューを見る限りは今ひとつの出来と評する方のほうが多いようです。目立つこと自体許されないスパイという存在を、目立つことが使命のジャニーズアイドルに演じさせた方が悪いのかもしれません。

この作品はまた、アニメ化もされていて、DVDが四巻出ています。また、舞台化もされています。