コラプティオ

震災後の日本に現れたカリスマ総理・宮藤隼人は、“禁断の原発政策”に日本復興を託すが、その矢先、一人の日本人がアフリカで殺される。事件の背景に広がる政権の闇を追いかける新聞記者と、宮藤を支える若き側近は、暗闘の末、最後に何を見るのか。謀略渦巻く政治の世界を白熱の筆致で描く真山文学の真骨頂!(「BOOK」データベースより)

理想に燃えた政治家の理念とその行きつく先を、首相の側近ともいうべき政権内部の立場の白石と、在野の代表である批判勢力の新聞記者の両方の視点から描いています。

勿論小説だし、政治の構造がデフォルメされ、また単純化されてもいるのでしょう。本書のそうした流れの中で焦点を当てられることになる宮藤隼人首相は、東日本大震災以降においては原発事故を乗り越えつつある日本こそ原子力政策の真の舵取りが出来るとして、日本の原子力技術を世界に売りこもうとしていて、まるで現実を映しているかのようです。

政治の世界は本作品のような小説や映画、テレビドラマの中で覗き見るだけで、現実の政治の世界は一般庶民である私等には全く無縁なものです。事実、私達は政権担当政党の交代による大きな変動を経験したばかりですが、そうした政治の仕組みや実際の動きでの中で個々の政治家の政治活動がどのように為されているか何にも知らないことに気付かされます。

本作品がどこまで現実の政治の世界を喝破したものであるのか、私等には知る手段はありませんが、登場人物の一人が言うように「正義」を行動の軸として持って行動していると信じたいものです。私等の青春期は学生運動の終焉期で、そこでは私も含め単純な「正義」を振りかざした書生論花盛りでした。歳を重ねてみると、勿論「正義」の意味は異なるにしても、その青臭い書生論もそれなりに重要なものだったという気がします。

本書では終盤になると物語は一気に加速し、ドラマチックな展開が待っています。

色々と考えさせられる小説でもありますが、物語としてもかなり面白く読みました。

ちなみに、タイトルの「コラプティオ」とは、ラテン語で「疑獄」の意味だそうです。