走れ!T校バスケット部

中学時代バスケットで好成績を残した主人公の田所陽一は、名門のH校に入ったがいじめにあい都立T高校に転入する。一度はバスケットを止めようと思った陽一だったが、あまりにT高バスケット部が下手なため、再度ボールを手にするようになるのだった。二年に進級した陽一はチームを率い新入部員と共に春の大会を経て秋の大会に出場し、いじめにあったH校と対戦する。

 

以上が第一巻のおおまかなあらすじで、一言でいえば、軽く読めるジュブナイル小説です。教訓めいたエピソードでつないだ物語と言ってもいいかもしれません。筋立ても少々ご都合主義的な個所も散見され、キャラも漫画チックです。

それでも、いじめ問題に真面目に、正面から取り組んでいる真摯な姿勢は好感が持てます。青春小説として人気があるのも良く分かるシリーズです。

この後、登場人物らは高校三年になり、そして卒業して社会人になりT高バスケット部の後進を指導する陽一や、社会に出て苦労する仲間である俊介、チビ、メガネ、のぞき魔達のその後が描かれます。

 

三年生の二巻目、三巻目辺りまではまだジュブナイルではあってもそれなりに熱い青春小説として結構面白く読み進めました。

しかし、高校を出て夫々の道を歩き始める四巻目辺りから少しづつ説教じみた台詞が目立つようになってきます。それまでもいじめ問題などに正面から立ち向かう姿勢が見えて、それはそれなりに好感をもって読めていたのですが、説教臭が前に出過ぎると途端に小説としての面白さは後退してしまいます。

せっかく、バスケットボールという舞台を得て、いじめ問題にも多様な意見はあるものの、それなりの評価を得ている物語が出来上がってきていたのにとても残念に思います。当初の新鮮な意気込みでの展開をもう一度期待したいと思います。

現時点(2018年06月)では全10巻が完結しています。

 

このシリーズは、作者の松崎洋の息子である松崎準氏をモデルに書かれているとありました。そして、残念なことに松崎洋氏は2014年2月にかねてから闘病中のところを間質性肺炎のため死去されたそうです。

その後、モデルであったご子息の松崎準氏があとを継ぎ、このシリーズの十巻目を仕上げられました。そのため、十巻目は松崎洋氏と松崎準氏との共著として出版されています。

 

 

また、このシリーズは幻冬舎から近藤こうじの画でコミック化(全三巻)されていますし、更には映画化も決まっています。
 
『走れ!T校バスケット部』特報_ – YouTube : 参照