金城 一紀

一番最初に読んだのは「レヴォリューションNo.3」でその面白さに魅かれてゾンビーズ・シリーズ四冊を読みました。そのストーリーの痛快さは勿論のこと、文章もテンポがよくとても気持ちよく読むことができました。

そう言えば、日本のアクション映画としてはめずらしく話自体に破綻が無くて、アクションシーンもよく作りこまれていると思って見た「SP 野望篇/革命篇 」の脚本が金城一紀でした。

割とテンポがよく読めて心に残る作家としてお勧めです。

風野 真知雄

この作者の作品は紹介した三シリーズ以外は殆ど読んでいません。特に読まない理由はないのですが、タイミングを逃しています。

ただ『耳袋秘帖』シリーズにしても「大江戸定年組」にしてもそうですが、少々ではありますが変わった設定の謎解きがメインになっているようで、悪く言えばちょっと癖がある作家だと思います。

しかし、そのことこそがこの作家の個性であり、面白さではないでしょうか。そのせりふ回しは滑稽な側面も持っていて読みやすく、まずは一冊読んでみればその面白さが分かると思います。

他にも『妻は、くノ一』などテレビドラマ化されている面白そうなシリーズもありますし、また、『陳平』や『馬超』、『荀いく』などの三国志に絡む銘銘伝のような歴史小説も書かれており、更には『歴史探偵・月村弘平の事件簿シリーズ』では現代ミステリーも書かれていて、これから読むべき本が増えて楽しみな作家さんです。

ついでに書けば、風野真知雄氏は1951年生まれで私と同じ歳なのです。浅田次郎氏や笹本稜平氏も同じ年の生まれであり、この人たちの才能の見事さに愕然とさせられます。

梶 よう子

東京都足立区出身。フリーライターとして活躍する傍ら、小説の執筆を開始する。2005年、時代小説『い草の花』で第12回九州さが大衆文学賞の大賞を受賞する。2008年、『槿花、一朝の夢』で第15回松本清張賞を受賞し(応募時の名義は蘇芳よう子)、『一朝の夢』と改題し刊行、小説家デビュー。
(出典:Facebook)
2016年、『ヨイ豊』で第154回直木三十五賞候補となる。

この作家の作品を調べてみると、「あさがお」がテーマだったり「植木職人」「ことり」だったりと動・植物に関連した物語が多いように見受けられます。

特に、どの作品でもとても読み易い文章を書かれ、作者の視点が優しく感じられます。

2005年に「い草の花」で九州さが大衆文学賞大賞を受賞し、2008年には「一朝の夢」で松本清張賞を受賞しておられます。ここにも「い草」が出てきました。

ただ、2016年に第154回直木三十五賞候補になった『ヨイ豊』を読んでみると、上記のようなこれまでの梶よう子という作家に対する印象が、少なからず変わったのも事実です。

それまでの、作品自体の持つ暖かさとでも言うべきものが、『ヨイ豊』では印象が異なったのです。と言っても、それは主人公ら絵師の、絵を描くことそのものに対しての視線の厳しさであって、絵師らに対するそれとは異なります。

師匠の名跡を継ぐことに対して煩悶する主人公や、失われいく江戸を哀しむ絵師たちを見つめる作者の目線は、やはり優しさに満ちていると思います。

海堂 尊

少し調べてみると、この人の著作は「田口・白鳥シリーズ」や「バブル三部作」などのシリーズに分けてあります。しかし、殆どの著作は同じ「桜宮市」を舞台としていて、時系列も共有しているようです。そこで、この作家の作品群は「桜宮サーガ」と呼ばれています。

登場人物も各作品で共通していたりして、わざわざシリーズとして分ける必要もないようにも思えますが、各々に主人公、舞台、括られる作品の雰囲気は異なりますので、シリーズとして見た方が良いのでしょう。

著者は千葉大学医学部を卒業し、博士号も取得している現役のお医者さんで、作品の中でAi(死亡時画像病理診断)の必要性を訴えておられる個所が少なからず見られます。

「チーム・バチスタの栄光」で第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、この作品からブレイクされました。勿論お医者さんですから医学会の内情が描かれるのは分かるのですが、現実にお役所とのやり取りを伺わせる官僚とのやり取りも描写されていたりと、医療関係に絡む様々の問題提起をされつつも、なかなかにエンターテインメント性に富んだ作品として仕上げてあります。たまに、作者の主張が走り過ぎて小説としてはどうなのかと思わせられることもありますが、概して面白い作品に満ちていると言えるのではないでしょうか。

恩田 陸

この作家は一言では語ることが出来ない作家だと思います。

最初に読んだ「夜のピクニック」は青春小説の傑作で、次に読んだ「ネクロポリス」は負のダークファンタジーと言ってもよさそうだし、デビュー作の「六番目の小夜子」はホラーチックなミステリー要素を含んだ青春小説なのでしょう。このジャンル分けも微妙なんですけどね。

ただ、文章は読みやすいですが、そのファンタジックな想像力に振り回されないようにする努力はいるかもしれません。

私はまだ紹介作品の他に「ブラザー・サン シスター・ムーン」や「黒と茶の幻想」など全部で八冊しか読んでいないのですが、結構多作な作家なので未読の作品で面白いものが眠っているはずだと思っています。「麦の海に沈む果実」などが人気が高そうです。

2017年本屋大賞が決まりました!

2017年4月11日に、本屋大賞が発表されました。(「本屋大賞」 : 参照 )

受賞作は恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』であり、156回直木三十五賞との同時受賞ということになりました。2005年の本屋大賞を受賞した『夜のピクニック』に次いで二回目ということになります。

受賞作の『蜜蜂と遠雷』ですが、この作品は著者本人の言葉によると「青春音楽群像小説」だそうです。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」というジンクスがある、芳ヶ江国際ピアノコンクールを舞台に繰り広げられる青春群像劇ということです。

私はまだ読んでいませんが、出来るだけ早く読み合いものです。

乙川 優三郎

1953年に生まれ、ホテル・観光業の専門学校を卒業後国内外のホテルに勤務の後、種々の職を経て作家になった、とありました。

この作家は『逍遥の季節』という作品と『武家用心集』という短編集を読んでいるだけです。ですからあまりこの作家のことについて書けないのですが、最初に『武家用心集』を読んだときは藤沢周平に似た雰囲気を持っている、と思ったものです。

荻原 浩

1956(昭和31)年、埼玉県生れ。成城大学経済学部卒。広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。1997(平成9)年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞を、2014年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞受賞を、2016年『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞。著作に『ハードボイルド・エッグ』『神様からひと言』『僕たちの戦争』『さよならバースディ』『あの日にドライブ』『押入れのちよ』『四度目の氷河期』『愛しの座敷わらし』『ちょいな人々』『オイアウエ漂流記』『砂の王国』『月の上の観覧車』『誰にも書ける一冊の本』『幸せになる百通りの方法』『家族写真』『冷蔵庫を抱きしめて』『金魚姫』『ギブ・ミー・ア・チャンス』など多数。( 荻原浩 | 著者プロフィール | 新潮社 : 参照 )

 

2004年に発表された『明日の記憶』が第2回本屋大賞の第2位となっています。

更にこの『明日の記憶』という作品はあの渡辺謙の手で映画化されています。

私は荻原浩という作家の存在は全く知らずに、渡辺謙初主演の映画映画ということでこの映画を見たのですが、テーマがテーマだけに、渡辺謙の演技や映画の出来よりも、その若年性のアルツハイマーという病気の存在に衝撃を受けていました。

他に『愛しの座敷わらし』が水谷豊の主演で映画化されています。

 

 

その後、何かの折にネットで「ユーモア小説」を検索すると必ずと言っていいほどに荻原浩という名前が出て来ます。

その際に上記二本の映画の原作者が荻原浩という作家だと知り、荻原浩という名前が頭の隅に残るようになりました。

 

なお、2016年7月に『海の見える理髪店』で第155回直木三十五賞を受賞されています。

 

小川 洋子

小川洋子』のプロフィール

 

1962(昭和37)年、岡山県生れ。早稲田大学第一文学部卒。1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。1991(平成3)年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞を受賞。『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、2013年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。『薬指の標本』『琥珀のまたたき」など多数の小説、エッセイがある。フランスなど海外での評価も高い。引用元:小川洋子 | 著者プロフィール | 新潮社

 

小川洋子』について

 

小川洋子という作家の作品は、第1回本屋大賞、読売文学賞を受賞した作品ということで読んでみた『博士の愛した数式』の一冊しか読んでいません。

 

本屋大賞受賞作品は、まず外れはないですね。

ということで、この作家について語るほどの知識も感想もまだないのです。ただ、調べてみると芥川賞、泉鏡花文学賞、谷崎潤一郎賞等々いろんな賞を受賞されている方でした。

受賞数が多いからこの作家の作品はお勧めだというのではありません。一冊しか読んでないこの本が心温まる良い作品であるからお勧めしたいのです。

大藪 春彦

日本のハードボイルドの草分けと言っても良い存在でしょう。

とにかく銃と車の書き込みは偏執的で、そのの書き込みは実に緻密になされています。大藪作品は「銃と車をとったら何も残らない」と言われたのももっともだと思わされます。

私が大藪作品を読みあさった頃から30年近くも経ちます。それでも、その作品のバイオレンス性が強烈であり、また車の運転もまったく知らないのに作品に描かれた車の運転シーンに引き込まれた記憶があるのです。

特に、「野獣死すべし」で、昼間は平凡な青年が夜は鍛え上げられた肉体を持つ非情な男に変身する様は小気味よいものでした。

そのうちに松田勇作や草刈正夫主演で「野獣死すべし」などの作品が映画化され、役者は良いけど全体のイメージはちょっと違うなどと勝手に思っていたものです。

人間をその内面まで書き込む、といったタイプが好きな方には向かないでしょう。特に、私のように雑読派の方は別として、志水辰夫のような叙情性豊かな文体が好みの方には大藪春彦の文体は乾いており、好みには合わないかもしれません。

逢坂 剛

1943年、東京都生まれ。中央大学法学部を卒業後、博報堂に勤務しつつ小説を書いていたそうです。

趣味としてギターを弾き、後にフラメンコギターにはまってスペインに関心が生まれたといいます。

父親は池波正太郎の『鬼平犯科帳』の挿し絵などで有名な中一弥(なかかずや)氏で、『重蔵始末』の挿絵もそうだということです。

作風は本人も語っているようにチャンドラーやハメットの影響を受けているらしく、インタビュー記事の中に「直木賞を受賞した『カディスの赤い星』などはチャンドラーへのオマージュです。」との言葉もありました。

また、「読者をいかに楽しませるかという気持ちが、逢坂作品の根底にあ」って、読み手に「虚構」と感じさせないように、「そこをいかに上手に描くか、細部のリアリティをしっかり構築するかが肝心」だとも言っておられます。

この姿勢は私が小説に対して常々思っていることなので、このような大御所が同様のことを言っておられると嬉しくなってしまいます。

重厚な冒険小説やハードボイルド小説の書き手として貴重な存在でしょう。