佐藤 多佳子

とにかく物語の作り方がうまいという印象です。そして、その物語の中に息づく登場人物たちの人物造形がよくできている上に、その登場人物たちが活躍すべき世界を良く調べて書いておられるので話が面白くないわけがない。

その上読みやすい文章だし、読後感が爽やかという、もう言うことなしの作家さんの一人だと思っています。文章のタッチも軽やかでさわやかな読後感のこの作者は是非お勧めです。

ただ、以上のことは佐藤多佳子作品の全部に当てはまるとは、個人的には言えないかもしれません。例えば、「神様がくれた指」などに関してはも今一つと思ってしまいました。
しかし、困るのはこの作品も一般的には評価は高いのです。ですから、これは読み手の好みの問題のようです。

佐竹 一彦

この作家の本は一冊しか読んでいません。あまり面白いと感じなかったのでそれ以降は読んでいないのです。

ただ、「ショカツ 」という作品はテレビドラマ化されてもいます。下掲「駐在巡査」もドラマ化されているところをみるとストーリーの面白さは認められていたのでしょう。

ただ、今回ネットで調べたら2003年に急性心筋梗塞で54歳という若さで亡くなられてました。全く知りませんでした。 これからの作家だったのでしょうに、残念です。

佐々木 譲

1950(昭和25)年、北海道生れ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。1990(平成2)年『エトロフ発緊急電』で、山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2010年、『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『ユニット』『天下城』『笑う警官』『駿女』『制服捜査』『警官の血』『暴雪圏』『警官の条件』『地層捜査』『回廊封鎖』『代官山コールドケース』『憂いなき街』『犬の掟』などがある。
佐々木譲 | 著者プロフィール | 新潮社 : 参照 )


最初にこの作家の作品を読んだのは「道警」シリーズの「うたう警官」でした。この作品は現実の北海道警裏金事件にヒントを得た作品です。主演が大森南朋、更に漫才コンビ雨上がり決死隊の宮迫博之も出演して角川映画で映画化もされ、その際に文庫化に伴い『笑う警官』と改題されました。

その後「警官の血」を読もうと思ったのですが、その前に江口洋介主演のドラマを先に見てしまい、結局本は未読です。映画は好きでもテレビドラマは殆ど見ない私ですが、日本冒険小説協会大賞受賞作品のドラマ化ということでついつい見てしまいました。ドラマは結構おもしろかったのですが、ドラマでイメージが固定されてしまい、本を読む気になれなかったのです。

図書館でこの作家の個所を見ると「鉄騎兵、跳んだ」という、妙に気になるタイトルの本があります。未読ですが、モトクロスをテーマにしている本らしいので、そのうちに読んでみたい本ですね。他に「武揚伝」なども目につきます。

どうも色々なジャンルの本を書かれている作家さんらしいのですが、私は警察ものしか読んでいません。

少なくとも私が読んだ警察小説を見る限り、スケールの大きな人間ドラマを書かれている方で、結構私には波長があう作家さんだと思っています。

今野 敏

この作家も多作です。作品数は150冊を軽く越えているようで、シリーズ数も30を越えようとしています。

またそのジャンルも格闘小説から警察小説、アクション小説、更にはSF小説と多岐にわたります。

確かに、初期の作品には少々雑かなと思われるものが無いわけではありませんが、「隠蔽捜査」の頃あたりから各作品が格段に面白くなったように思えます。

また、このころから今野敏作品が見直されてきたためか、出版社が変わったり、作品名が改題されたりして再出版されてもいますので少々分かりにくいです。

例によって、下記のお勧め作品は面白い作品群の中の一例です。単に私が面白いと思った作品を載せているだけで、他の作品もかなりいけます。面白いです。

小松 左京

言わずと知れた日本SF界の巨匠です。

その活動の分野は多岐にわたり、時間や空間を越えた壮大ななSFを書く一方で、「日本沈没」や「首都消失」のような日常生活の延長線上にある小説も著しています。また、日本万国博覧会にもかかわりをもったりもして、単にSF作家という肩書では括れない多才な人です。

この小松左京という人の作品は妙な癖も無く、SFの入門書としてもいいのではないでしょうか。「復活の日」などは、そのSF的な舞台設定を除けば冒険小説としても十分な面白さを持っています。

 そもそもSFというジャンル自体が特別なものではなく、単にその舞台設定が非日常というだけのことであり、それは作者の思惑、主張を表現するのに一番適した舞台設定として選ばれただけ、と言っても良いのではないでしょうか。

この人は長編だけではなく短編も大量の作品を残していて、どれ、と選ぶのはこれまた非常に難しい作家の一人です。加えて、何しろ読んだのが殆ど40年以上も前の私が高校生の頃のことで、その印象や内容を覚えていないこともあります。ですから、下記の作品は今でも題名と内容をある程度覚えている作品に限られてしまいます。

小島 英記

945年に福岡県八女市生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本経済新聞に勤めた後、作家となった。

まだ一冊しか読んでいないので色々書けません。そして、その限りでは私の期待とは一致しませんでした。

ただ、この人には『小説横井小楠』という作品があります。我が郷土の生んだ偉人である横井小楠を描いた作品であるのなら読まずばならないでしょう。

貴志 祐介

この人はホラー作家だと思っていました。しかし、「クリムゾンの迷宮」や「新世界より」を読む限りでは確かにホラーテイストはあるものの、「恐怖」を売りにするのではなくて、その強烈なイマジネーションで構築される世界で展開される物語こそが本来の魅力だと思うようになりました。

「黒い家」の恐怖でさえも作者の想像力の強さがあってこその物語であると思うのです。

とにかく簡単に読める作家ではないのですが、一度その世界にひたるとその魅力に捉われてしまう気がします。

菊地 秀行

初期の作品しか読んでいないのですが、当時の伝奇的なエロスとバイオレンス小説の旗手的な位置付けと言っていいでしょう。夢枕獏の初期作品と同じく、単純に楽しめばよく、理屈は要りません。

ただ、私はこの作家を途中から読まなくなりました。というのも、どうもこの作家の美文調と言って良いのかすら分かりませんが、独りよがりの文章に思えてきて、それが気になりだしたら読めなくなったのです。

相変わらず、物語世界は面白そうなのですが、そう思い始めて以降は、2~3年に1冊位を読むか読まないか、と言った程です。その点が気にならない人は、気楽な娯楽作品としてかなり面白く読めるのではないでしょうか。

個人的には、夢枕獏作品は単なるエロ、グロの作品から、より面白いエンターテインメント作品へ成長していったと思うのですが、この作家は当時で止まっている感じがします。

以上の次第で、ここで紹介する作品は初期作品に限られますので、ご了承ください。

木内 昇

出版社勤務の後、フリーの編集者となり、その後1997年からは自ら「spotting」というインタビュー誌を主宰されているそうです。

2008年に発表された『茗荷谷の猫』が各方面で絶賛され、 2009年には早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞を受賞し、2011年に『漂砂のうたう』で第144回直木賞を受賞されています。

この『漂砂のうたう』では「閉塞感を感じさせる物語」を書きたかったとインタビューに答えておられますが、『地虫鳴く』は新選組の中でもこれまで名前も知らなかった隊士を描き、『櫛挽道守』では名も知らぬ職人の生きざまを描いていて、表舞台ではない光のあたらない人間を描くことが得意な作家さんなのかもしれません。

地の文ではなく、「仕草とか言葉遣い、動きの癖」で人物の内面を表したいと語っておられるように、説明的な文章ではなく陰影のある情景描写が特徴的ではないでしょうか。またリズム感があり、とても読みやすい文章です。しかし、少なくとも私の既読の範囲では決して明るい物語ではなく、ストーリーの変化に富んだエンターテインメント性の強い作品を求める人には向かないかもしれません。

ただ、未読の『笑い三年、泣き三月。』は「戦後すぐのストリップ小屋を舞台にした面白おかしい物語」らしいので、少々タッチが異なるかもしれません。

木内 一裕

木内一裕といえば1980年代に一世を風靡した「BE-BOP-HIGHSCHOOL」(ビー・バップ・ハイスクール)の作者「きうちかずひろ」その人です。

あの漫画は高校生ヤンキー達の日常をコミカルに描いてあり、面白い作品でした。

で、その漫画家さんが小説を書いたということなのですが、この小説がなかなかに達者です。小説のデビュー作品は映画化もされた「藁の楯」でした。

漫画もヤンキーの青春物語という暴力ものの流れでしたが、小説も同様です。いや更に輪をかけています。

文章は簡潔で少々乱暴ではありますが、読み易く、スピード感にあふれています。ただ、どの作品も暴力的ではあるもののどこか哀しみを漂わせており、作品によってはその哀しみが前面に出てきすぎていると感じさせる作品もあります。ノワール作品と捉えた方が良いかもしれません。

全体的に暗い話が多いですが、面白いです。