秦 建日子

元々脚本家として活躍されている方みたいですね。

脚本家出身と言えば「のぼうの城」の和田竜、「一夢庵風流記」の隆慶一郎といった人たちがおられます。

が、その方達の場合と異なり、残念ですが、私とはちょっと波長が異なるようで、今一つ小説世界に入れませんでした。でも、「刑事・雪平夏見シリーズ」は,、まあ、面白く読むことができました。

馳 星周

1965(昭和40)年、北海道生れ。1996(平成8)年、日本ミステリ界に衝撃を与えた『不夜城』でデビュー、吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞を受賞する。1998年、『鎮魂歌―不夜城II―』で日本推理作家協会賞を受賞。1999年、『漂流街』で大藪春彦賞を受賞する。主な作品に『ダーク・ムーン』『生誕祭』『長恨歌―不夜城 完結編―』『トーキョー・バビロン』『弥勒世』『エウスカディ』『淡雪記』『光あれ』などがある。( 馳星周 | 著者プロフィール | 新潮社 : 参照 )

 

かなり前に『不夜城』という作品を読んだのですが、先日久しぶりに『マンゴーレイン』という作品を読むまでこの人の作品は全く読みませんでした。

その他の作品を今まで読んでいないということは、波長が合わなかったのでしょう。この作家の作品は殆どの作品がノワール小説だということですが、そのこととは関係は無い筈です。

馳星周はジェイムズ・エルロイが好きだそうですが、私がジェイムズ・エルロイには今一つ入り込めなかったので、やはり波長が違うというしかないのだと思います。

 

それに、この人の作品自体は第15回日本冒険小説協会大賞日本部門大賞や第18回吉川英治文学新人賞を受賞しているし、ベストセラーにもなっているのですから、一般的には面白い作品を書く作家だと評価されているのです。

マンゴーレイン』は面白いと思ったので、正確には当時の私と合わなかったと言った方が良いのかもしれません。

と書いてはいるものの、現在(2020年1月)に至るまで他の作品に手が伸びていません。やはり私の波長と合っていないという方がよさそうです。

 

追記: 著者は『少年と犬』という作品で、2020年下期の直木賞を受賞されました。

 

 

いわゆる動物ものの連作の短編集で、岩手から九州までを旅した一匹の犬の、旅の中での人々との出会いを描いた、2020年下期の直木賞を受賞した連作の短編小説集です。

ノワール物とは異なる、馳星周の新たな魅力が発揮された、決して明るい作品ではないものの妙に暗くならない、感動的な作品でした。

ちなみに、直木賞受賞に伴いあらためて馳星周という作家を調べると、馳星周というペンネームは、監督であり俳優でもある周星馳(チャウ・シンチー)からとっているということ、大学時代は日本冒険小説協会の創設者である内藤陳の「深夜プラス1」でアルバイトをしていたなどの事実に驚かされました( ウィキペディア : 参照 )。

乃南 アサ

この作家の作品は何故か数作しか読んでいません。「凍える牙」など名作と言えると思うし、次いで読んだ「鎖」もかなり面白かったのですが、何故か他には「自白」くらいしか読んでいません。

読んだ作品はどれも重厚です。軽く読める作品というわけではありません。

しかし、その各作品の世界は魅力的です。構成がしっかりしていて、積み上げられた世界観がしっかりしており安心できます。一度読み始めると、ジェットコースター作品というわけではないのですが、なかなかに本を置きにくくなるのです。

とにかく、面白い作家です。お勧めです。

受賞歴は
「凍える牙」   第115回直木三十五賞受賞
「地のはてから」 第6回中央公論文芸賞受賞

西村 寿行

最初に読んだのが「瀬戸内殺人海流」でした。公害をテーマにした社会性の強いミステリで、この本以来殆どの作品を読んでいると思います。

この後次第に「君よ憤怒の河を渉れ」に代表される冒険小説へとシフトし、「鯱シリーズ」のようないわゆるハードロマンと称される作品群へと移っていきます。

西村寿行という人は自ら狩猟をし、それもかなりの腕前だったのですが、ある時殺生をすることの無意味さを悟り、狩猟禁止を唱えるようになったと、どの本かのあとがきに書いてありました。「黄金の犬」など、動物を主題にした作品も数多くあり、動物に対する愛情が透けて見えます。

ハードロマンと括られる作品はエロスとバイオレンスの描写がかなりのもので、そういえば初期作品を除けば大半の作品にその要素があると言えるかもしれません。

その一方で、「滅びの笛」や「癌病船」のようにバイオレンスタッチはありつつも社会性の強い作品も書かれています。

エロスやバイオレンスが嫌いな方は別として、面白い本、エンターテインメント性の強い本という意味では上位にランクされる作家ではないでしょうか。

ただ、今ではそのほとんどの作品が絶版であるらしく、残念ながら古書若しくは図書館から借りて読むしかないようです。ただ、角川文庫から電子書籍版で多数の作品が出版されるようです。

我が家の埃をかぶった本棚から、昔買った西村寿行の一連の作品群を見つけてきました。また少しずつ再読してみようと思います。

夏川 草介

夏川 草介』のプロフィール

 

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同書で2010年本屋大賞第2位、映画化もされた。他の著著に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『本を守ろうとする猫の話』がある。
引用元:夏川草介 | プロフィール | Book Bang -ブックバン-

 

夏川 草介』について

 

この夏川草介作家には2021年05月現在、シリーズ作品としては『神様のカルテシリーズ』が0から3までの四冊と、『新章 神様のカルテシリーズ』と銘打たれた新シリーズが一冊出ています。

この『神様のカルテシリーズ』の一巻目は本屋大賞の二位を受賞していますし、各巻とも数十万部の発行数を誇っていますから、このシリーズの面白さは保証済みと言えるでしょう。

ほかに医療関係の作品として『神様のカルテシリーズ』で書くには重すぎるとして別に書かれた『勿忘草の咲く町で ~安曇野診療記~』という終末医療を扱った作品があり、さらに現在進行のコロナ診療の最前線の姿を描いた『臨床の砦』という作品があります。

医療関係以外の作品として、『本を守ろうとする猫の話』という作品は「本」の大切さを訴えた作品であり、またほかに民俗学を通して学ぶこと、生きることの意味を考える『始まりの木』という長編小説があります。

 

このように、医療関係以外の作品も書かれている夏川草介という作家さんですが、その根底に流れる“生きる”ということの大切さを様々なかたちで訴えておられるようです。

そしてそのためには読者が楽しく読める作品である必要があるとして、医療の重く、暗くなりがちな現場も、ユーモアを交えた希望の持てる作品として仕上げられているようです。

こうして、夏川草介という作家の特徴でもあるユーモラスな、そして美しい信州の風景も交えながらの小説は映画やテレビドラマ、コミックといったほかのメディアでも取り上げられるようになっています。

 

先にも述べたように夏川草介という作家は医療関係とは異なる『始まりの木』のような、民俗学をテーマにした作品も書かれています。

そこでは、学問をするということの意味、使命感を持ってしなければ堕落してしまう学問の大切さを、古谷准教授の口を借りた夏川草介という作者の叫びが示されています。

 

 

そして、コロナ禍の現在、『臨床の砦』という作品が、緊急出版されました。

報道で見聞きするコロナ診療の第一線の様子がリアルに描き出されています。

テレビのニュースで見聞きする以上の緊迫した医療現場の様子がそこにはありました。医療には素人の私にも文字通りに命を懸けて治療にあたっておられる関係者の努力が描かれています。

 

 

ところで、夏川草介というペンネームは、著者の大好きな作家の名前からできているそうです。

つまりそれぞれに夏目漱石、川端康成、漱石の「草枕」、芥川龍之介から一文字ずつ取っているとのことで、著者自身、こうしたウィットのあるお医者さんなのでしょう。

このように夏川草介という作家自身がかなりの本好きのようで、だからこそ『本を守ろうとする猫の話』のような、本を読むことの大切さを訴えようとする作品を書かれたのでしょう。

心地よい感動と、読後感をもたらしてくれるこの作者はお勧めです。

 

 

お医者さんでありながら小説をもかかれている人と言えば、森鴎外もいますがこの人は別とすると、まずは「北杜夫」の名前が挙がると思います。

次いで、「渡辺淳一」、そして今の一番は『チーム・バチスタの栄光』などのミステリーが人気の「海堂尊」でしょうか。

他にも久坂部羊中山祐次郎大鐘稔彦知念実希人などいった人たちの名が浮かびます。

このほかにちょっとネットを見ると「帚木蓬生」、「加賀乙彦」、「永井明」などの名前が挙がります。これらの他にもいらっしゃるでしょう。

 

 

ともあれ、そんな中でも夏川草介という作家の作品は私が一番好む作品を書かれているようです。

今後の作品を期待したい作家さんです。

鳥羽 亮

鳥羽亮という作家は自身剣道の有段者でそれもかなりのものだったと聞きました。だからこそ剣戟の場面では理詰めに描写し、緊迫感を出しているのだそうです。

確かにこの人のチャンバラシーンは迫真的で引き込まれます。

最初はいわゆる通俗的な剣豪ものを書く人だと思い読まず嫌いだったのですが、一旦読み始めたらそれは面白いのです。確かに、今をときめく佐伯泰英、鈴木栄治といった面々に比べると手軽くはないと思います。しかし、その分読みごたえは十分にあり、面白いです。

この作家も作品数は100点を越え、その一割位に接しただけです。その中での紹介になります。

津本 陽

剣豪ものの分野では第一人者ではないでしょうか。最初に読んだ本が「明治撃剣会」という短編集でしたが、その剣戟の場面の描写の迫力は群を抜いていると感じたものです。

文章は読み易く、テンポよく読み進むことが出来ます。

作品数はかなり多く、歴史の分野では織田信長や坂本竜馬、勝海舟を始めとし、主な人物は書く尽くしているのではないかと思うほどです。近年は「秦の始皇帝」など、中国ものにも手を着けておられるようです。

ただ、私自身はこの作家の作品は数冊しか読んでいないので、未読のままでお勧めとは言えないのが残念です。「龍馬」は途中で読むのを止めてしまいましたが、これは司馬遼太郎の「坂本竜馬」があまりに大きく、司馬竜馬を超えているとは思えなかったので、長編ということもあり止めてしまったのです。決して面白く無かったからというのではありません。

剣豪ものに関しては絶対のお勧めと言えると思います。特に「柳生兵庫助」はお勧めです。

辻堂 魁

辻堂魁』のプロフィール

 

1948年、高知県生まれ 。京都工芸繊維大学中退。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務を経て執筆業に入る。2010年に『風の市兵衛』が発表されるや、主人公で渡り用人の唐木市兵衛が、算盤を片手に生計を立てる飄々とした姿と、〈風の剣〉でか弱き者たちのために一途に戦う姿が、圧倒的支持を得てシリーズ化される。2017年には作家生活10周年を迎え、「風の市兵衛」も20作を超える大ヒットシリーズとなる。翌2018年には、唐木市兵衛の新たな魅力と今まで明かされてなかった秘話を解き明かすために、新展開「風の市兵衛 弐」が新シリーズとしてスタートするなど、ますます精力的に執筆活動を続けている。主な作品に「日暮し同心始末帖」シリーズ、「夜叉萬同心」シリーズ、「仕舞屋侍」シリーズほか。

引用元:祥伝社 著者プロフィール

 

辻堂魁』について

 

この作家さんについては殆ど情報がありません。高知県に生まれ、早稲田大学文学部卒業後、出版社に勤務。その後退社して本格的に執筆業に入えい、『風の市兵衛シリーズ』で第5回(2016年)歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞、とはウィキペディアにあった情報です。

でも、2015年4月当時にこの作家の『風の市兵衛シリーズ』を読み始め、次第にはまっていったと覚えています。

ただ、このシリーズの面白さを認識したのはシリーズ四作目の『月夜行 風の市兵衛』あたりからであり、辻堂魁という作家に深くはまるまでに二~三年かかっていると思います。

それ以降、『日暮し同心始末帖シリーズ』『夜叉萬同心シリーズ』などと手を広げ、結局図書館にある辻堂魁の作品は全部を読んでしまうことになりました。

 

それほどに私の好みに合致した作家でした。

というのも、辻堂魁という作家の作品は、活劇小説ではありながらも、深く人情を絡めた作品として仕上がっているからだと思っています。

私の好きな時代小説作家としては山本周五郎藤沢周平司馬 遼太郎、海音寺潮五郎、子母澤寛などといった大御所クラスの作家とは別に、青山文平砂原浩太朗などの現代の作家たちがいます。

そしてこれらの作家たちを見ると、やはりその文章は情感豊かで、人情味豊かな作品が多いのです。

 

結局、辻堂魁という作家は、新しい時代小説の書き手として、それも面白い痛快時代小説の書き手として今後が期待される作家の一人だと思います。

かなりの期待を持って他の作品も読んでみたいと思っています。

月村 了衛

1963年3月生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、予備校講師をしながら、後にアニメ作品の脚本家として活躍する。

2010年に『機龍警察』でデビュー。

2011年刊行の『機龍警察 自爆条項』で「このミステリーがすごい!」で第9位、第33回日本SF大賞を受賞。

2012年刊行の『機龍警察 暗黒市場』が「このミステリーがすごい!」で第3位となり、更に第34回吉川英治文学新人賞を受賞している。

2014に出された『土漠の花』は、自衛隊を主題にした作品で話題を呼んでいます。

緻密に書き込まれた文章は物語の世界をリアリティーに満ちた世界として構築し、重厚感豊かな読み応えのある作品だ仕上がっています。

田牧 大和

1966年東京都の出身で、明星大学人文学部を卒業後、市場調査会社に勤務しながらウェブ上に時代小説を発表していたらしく、2007年に『色には出でじ 風に牛蒡』(『色合せ』講談社)で第2回小説現代長編新人賞を受賞されたそうです。

読んだ作品数は多くはありませんが、コミカルなタッチの中にも詩情を交えているこの作家の文章は読みやすく、ストレスなく読み進めることが出来ます。

『濱次』シリーズ、『三悪人』シリーズ、『とんずら屋』シリーズなどのシリーズものや単発の作品があります。爆発的に人気があるという訳ではないようですが、そこそこ評判もいいようです