本陣殺人事件

江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた……。アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場の作品となる表題作ほか、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」二編を収録。( 内容紹介より )

 

今では知らない人はいないと言っていいほどの名作である「金田一耕助シリーズ」の第一作で、第一回探偵作家クラブ賞を受賞した長編の推理小説です。

 

それまでは不可能とされていた日本家屋を舞台にした密室殺人が展開されています。

 

岡山県の片田舎で結婚式が執り行われたその夜、夫婦の寝室となっていた離れで殺人事件が起きた。前夜の雪のために離れの周囲には犯人の足跡の痕跡は全く無く、密室状態となっていたのである。

 

初期の中短編集におけるような耽美的色彩はあまり見られず、しかし、どことなくホラーテイスト漂う作品です。

実際には幽霊も怨霊も出てこず、かえって金田一探偵の論理的推理力が見せ場を作ります。ただ、舞台設定として、地方の旧本陣という雰囲気を利用しているだけといえます。

本格推理小説が好きな方には絶好の一冊ではないでしょうか。

とはいえ、本格推理小説があまり好きではない私も、このシリーズはかなりのめり込んで読んだものです。謎解きそのものよりも、金田一耕助を主人公とするこの物語自体に面白さを感じ、立て続けに読みこんだものと思われます。